甘い物は甘味だけではない高杉と買い出しに来た。
「買うもんは全部買ったよな」
「そうだな」
「んじゃ、けーるか……あ、」
帰ろうと顔を上げた瞬間、流行りのカフェの看板が目についた。
「……行くのか?」
「えっ、でもそんな余裕ねぇし……」
語尾が小さくなってくのが情けない。
今時の若い女子だって惜しみなく甘味に金使うってのに。
「行くぞ」
そう言いながら俺の袖を引っ張って歩き出す高杉。
「ちょ、高杉くん?」
「まだ日暮れまで時間あるだろ」
「何、お前もお洒落な飲み物飲みたいの?」
そう問うと、前を向いていた顔が振り返って俺を見る。
「そういう事にしといてやらァ」
あー……俺が行きたいから付き合ってくれるって事ね。
こいつは昔からそういうところあるし……まあ、とにかく、優しさに甘える事にしよう。
カフェで俺は呪文のような飲み物を注文し、高杉は珈琲を注文した後、休憩がてら外の椅子に座った。
「んっま!」
「幸せそうな面してやがんな」
「ここのは久々に飲んだし、糖分が入る時はいつだって幸せなんだよ」
高杉君の奢りだし、とまでは言わないでおいた。
「昔から変わらねぇなァ」
「俺が激辛しか食わなくなったら気持ち悪ィだろ?」
「そうだな」
飲みながら高杉の方を見る。
「珈琲、好きなの?」
「普通だ。メニュー見てもどれがいいのかわからなかった」
「あー、じゃあ今度は俺のオススメ教えてやる」
「テメェのオススメだと甘ェのだろ?」
「和っぽいのもあるし、さっきみたいに言えば甘さも抑えられるぜ」
そう言いながら珈琲を飲む高杉の表情は穏やかだった。
「じゃあ、次来た時はよろしく頼まァ」
+++
その日の夕飯。
神楽は早々に食い終えて風呂に行った。
それを見計らって俺は冷蔵庫へ行き、こっそり作っていた物を持ってくる。
「高杉、カフェのお返し」
高杉の前に置いたのは煮物 。
「お前、これ好きだろ」
少し驚いた顔をして煮物と俺を交互に見ている。
「……そんな見つめられるだけだと照れるから何か言ってくんない?」
ほら、顔が熱くなってきちまったよ。早く何か言えよコノヤロー。あ、何か言う前に食ったよこいつ。礼とかないわけ?
ったく、これだからボンボンはよー
「銀時」
不意に呼ばれて驚く。
「え、何?」
「やっぱりテメェの煮物は美味ェな」
う、う……ストレートに言われると返事に困るんだけど。
でもここはまあ、これしかないよな。
「……どういたしまして」
そう言うと気を良くした高杉は笑いながら煮物を平らげた。
「こんな褒美があるなら甘味奢るのも悪かねェな」
「じゃ、次は高級苺パフェ頼むわ」
「なら俺は高級魚の煮魚が食いてェ」
「テメ、調子に乗んな」
「先に乗ったのはテメェだろ?」
喧嘩のようなやり取りをしながら、こいつの好きな高級魚って何だっけなーなんて考える俺もこいつに甘いよな。
ま、今度一緒に買い出しに行った時に聞けばいいか。
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高杉は銀時に甘味を買って与え、銀時は高杉に好きなおかずを作ってあげる話。
というネタでした。
互いにいっぱい甘やかして欲しい。
出てきたカフェのモデルは⭐︎バです。
呪文のような注文は検索したらたくさんあったので、銀さんにはとびきり甘々にしたものを注文して欲しいですね。