クリスマスプレゼント「よォ、ようやくお目覚めかい、銀時ィ」
朝起きたら、目の前に高杉がいた。
周りの景色は昨日寝る前に見たのと同じ家の景色まから、高杉がうちに来たって事だ。
「え……お前、何しに来たの?」
幻かもしれないと強めに目を擦りながらそう言うも、視界に映るものは変わらなかった。
「今日はクリスマスなんだろ。だから来てやった」
「来てやったって何? テロリストな低杉君なんて呼んでないけど」
そう言われて高杉は一瞬ムッとした表情をする。
「だからクリスマスだつってんだろが」
「だから呼んでねーっての! 起きたら枕元にいるとか何、俺のクリスマスプレゼントにでもなったつもり?」
「そうだ」
「あ?」
俺が首を傾げていると、今度はイラついた表情のまま口を開く高杉。
「今日は俺がテメェの欲しいものになってやるから何でも言いやがれ」
「それは好きにしていいって事? じゃ、警察にでも突き出そうかなー」
「そしたらテメェも道連れにしてやらァ」
あー……まあ、こいつならできそうだね、それ。
そいつは勘弁だから仕方ねぇ、好きにさせてやるか。
「……変なプレゼントだけど受け取るわ」
そう言うと高杉の表情は穏やかになった。
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「今日はささやかだけどここでパーティーすっから、これから買い出しに行く」
万事屋から出るとやや後ろに着いてくる高杉にそう言った。
「プレゼント君は荷物持ちね」
「わかった」
そう返事をした高杉を連れてスーパーへ向かう。
メモした紙を見ながら買い物カゴに入れていく。こいつがいてあんま長居するのもアレだし、テキパキと買い物を終えた。
「テロリストなのに意外と堂々としてんのな、お前」
「むしろそっちの方が怪しまれねェよ。ヅラも同じだろ」
「あー、そうだね」
買ったものを袋につめながらそんな会話をし、高杉に重い方の荷物を任せて万事屋に帰った。
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これからクリスマスの料理を作る。
新八と神楽は依頼だから、テロリストな野郎でもアシスタントがいるのは正直すげー助かる。
「なあプレゼント君、料理のアシスタントも仕事の内?」
「あ?」
「さっきの食材使って夜までにクリスマスの食事作るんだけど、手伝ってくれたら超助かるなー」
「構わねェ」
「マジで! よし、じゃあ早速だけど……」
そんなこんなで奇妙であるが、高杉と共に料理をする事になった。
サラダにローストチキンにシチューにパン、そして俺にとってはメインのクリスマスケーキ。とにかく手間のかかる物がたくさんあって忙しい。
「今日は何でガキどもはいねェんだ?」
シチューをかき混ぜながら高杉が尋ねてきた。
「んー、あいつらは依頼。てか、いねぇの知ってるから来たんじゃねぇのかよ」
ケーキのスポンジに生クリームを広げながら返事をする。
「知ってるが、こんなに料理作るならガキどもがいた方が効率いいだろうが」
「あいつらに、今日は私達が働くから銀ちゃんはクリスマス料理作ってろって言われてんだよ。うち金ないからさ、作った方が安上がりなんだよね」
苦笑しながらそう言うと、高杉の真剣な眼差しが刺さる。
「奴らはお前の料理が食いたいんだろ」
「え?」
「市販のより、お前の料理の方がいいんだろうよ。だからそっちに集中しろって事だ」
あー……なるほどね。
「じゃあ、銀さん頑張っちゃおうかな。プレゼント君ももうちょいよろしくね」
「あァ」
そうやって高杉に手伝ってもらえたおかげで夕方過ぎには何とか料理を完成させる事ができた。
そして高杉は子供達が帰る前に去って行った。
+++
その夜。
神楽が寝静まった頃、少しの荷物を抱えて万事屋を出る。教えられていた目的の場所に着くと、窓の外を眺めている高杉が座っていた。
「よう、パーティーは終わったのかィ?」
「あぁ、プレゼント君のおかげで助かった。ありがとな」
上質そうな畳の床に座りながら持ってきた物を広げる。広げられた物を見た高杉が穏やかに笑った。
「さっきの料理か」
「あんなに手伝ってくれたのに一口も食えないなんて可哀想だなーと思って。銀さんってばやっさしー」
棒読みでそう言うと、高杉は無言で料理を見つめている。
「あ、もしかしてもう腹一杯?」
そう尋ねると同時に高杉の手がチキンに伸び、そのままかぶりつく。無言で食い進めてるから美味いって事だろうなって思いながらシチューを手にする。
「ちなみにこの部屋電子レンジとかないの?」
「あるぜ」
あんのかよ!と心の中で突っ込みを入れた後、指差された方を見るとうちにあるものよりはるかに新しい電子レンジが置かれていた。
「何これ、すげーハイテクなんだけど」
そう言いながらシチューの皿を入れて温めボタンを押す。
「お前、こんなの必要ねぇだろ。うちのと交換しろよ」
「交換するくらいならくれてやらァ」
そんな会話をしている内に温め完了した音が聞こえる。うちのより温める時間も早ぇ。流石最新式。
「はい、ほぼお前が混ぜてくれたシチュー。サラダとパンもあるし……あっ、ケーキは絶対食えよ」
一番の自信作だからな、と言いながらビシッと音がしそうなくらいに人差し指を高杉に向けた。
+++
持ってきた料理を高杉が全て平らげた後、部屋にあった小洒落たシャンパンを二人で酌み交わす。
あれ、今って何かいい雰囲気じゃね?
料理置いてすぐ帰る予定だったからそんなつもり全くなかったんだけど……
「銀時」
そんな事を考えていたらいつの間にか目の前に来ていた高杉に名前を呼ばれた。
「俺にもプレゼントを寄越せ」
「さっきあげたじゃん、料理」
ちょっと遊んでみようとしらばっくれるも、首筋に噛み付かれる。
「いっ! てめ、突然ミミックになりやがって……」
「ククッ……ミミックか、ピッタリな状況じゃねェか」
ミミックってのは某RPGで出てくる宝箱の形に擬態しているモンスターで、通常のザコ敵とは比較にならないほど強い……
「……はは、本当だ」
「観念しな」
そう言われて体の力を抜くと、高杉に担ぎ上げられる。そのまま布団が敷いてある部屋に移動した。
ちなみにミミックに勝ったらレア物がドロップするんだけど……今のこの状況が既にレアだよな。それか貰える予定のあの電子レンジの事?
なんてふかふかの布団に押し倒されながら考えていると、イラついた表情の高杉が映る。
「おい、何考えてんだ」
これから寝るってのに他の事考えてたら怒るわな。こいつの事だから尚更だ。
「何でもねぇよ。んな事より早くしろプレゼント君改めミミック野郎」
そう言いながら高杉の首に腕を回した。
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書いた後になって「敵対してるのにこんな事しないよな…」って思ったけど、勢いで書き上げたので勢いで上げました。