春宵一刻(赤黒3/25) 東京駅、丸の内口から歩いて十分ほどの場所にその店はあった。既にオープンしているせいか、店外に並ぶ客の列を見て黒子は目を丸くした。
「ここに並ぶんですか?」
「そうだよ。ちなみに、この店の前に並ぶ列じゃなくてあちらに並んでいるのが最後尾だ」
「嘘でしょう」
「本当だよ。ほら、早く並ばないとどんどん列ができてしまう」
赤司はそう言ってさっさと店とは反対にある行列に行ってしまい、黒子も慌てて後を追った。
『美味い豆腐を食べに行かないか』
恋人の赤司から突然連絡がきたのは、家での仕事を終え一息ついたタイミングだった。まるでカメラでも付いて監視でもされていたんじゃないかというタイミングだったせいか、黒子は一瞬部屋を見回してから返事をした。
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