誰か宛のプレゼント。十二月。街が浮足立つようにきらめき始めた頃――。
ここ最近、バッキーは妙な違和感を覚えていた。
それはスティーブの態度が「冷たくなった」とか、そういう分かりやすいものではない。むしろ逆だった。
「バック、また手袋忘れた?」
授業終わり、ロッカー前で声をかけられたと思ったら、スティーブは新品の手袋を手にしていた。
「これ、予備にって買っといた。前に貸してくれたし、返すつもりで」
――そんなこと、あったっけ?
その日だけじゃない。
バッキーの好物のスナック菓子を購買部帰りに差し出したり、風邪をひかないようにとポケットティッシュを放り投げてきたり、カバンの中にこっそりカイロが入っていた日もあった。
(なんなんだ、最近のスティーブ……やけに気が利くっていうか)
けれどバッキーは深く考えなかった。
「たぶん、日頃の感謝ってやつだろ」
心の中でそう片付けてしまう。――いや、片付けたかった。
それでも――。
ある日、スティーブの部屋の机の上にあった雑誌の表紙が、ふと視界に入った。
《気になる人の心を掴むためには――冬に効く!あったかアプローチ特集》
「……は?」
思わず声が漏れた。
スティーブは背を向けたまま着替えていて気づいていない。
バッキーは目を細め、その表紙をもう一度見た。
(……スティーブ、好きなやつでもいるのか?)
胸の奥が、不意にざわついた。けれど、その理由はわからない。理解しようともしなかった。
それでもその夜、いつになく気になる自分がいて、
バッキーは一人、カーテン越しににじむ月を見上げていた。
(なんか、俺も……何かお返し、しないとな)
スティーブの気持ちを知らないまま。
けれど、たしかに少しずつ、心は動きはじめていた。
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