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    ちまき

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    ちまき

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    ステバキ。学パロ。15話。
    片思いスティーブ×無自覚バッキー
    (途中からでも読めます。)

    【映画デートするはなし】

    #stucky
    #ステバキ
    stevaki

    心地の良い存在。館内の明かりが落ち、スクリーンに映画のタイトルが映し出される。
    隣に座るスティーブの気配が、いつもよりも近くに感じられて、バッキーは思わず背筋を正した。


    (くそ、さっきの“デート”って言葉が……)

    冗談だとわかってる。あの場の流れでの軽口だった。
    けれど、頭の中にはその一言がこびりついて離れない。
    別に、深い意味なんかない。スティーブにとってはただの言葉遊びのつもりだったはずだ。


    ――なのに、なんで変に意識してんだ、俺。


    映画が進むにつれ、スクリーンの中では登場人物たちの関係や物語が動いているというのに、バッキーの集中は一向に定まらなかった。
    時折、ポップコーンの袋がカサリと鳴る。スティーブが何気なく飲み物を口に運ぶ仕草にも、妙に神経が向いてしまう。

    (やばい、ちゃんと観ないと……)

    視線をスクリーンに戻して映画に集中する。
    途中、頭の奥がぼんやりと霞む。
    冬休み明けの課題ラッシュ、慣れない生活リズム。
    その疲れが、じわじわと意識を引きずっていく。

    気づけば、まぶたが重くなっていた。
    映像がにじんでいく中、バッキーは小さくあくびを噛み殺し――そのまま、静かに眠りに落ちた。

    隣で、スティーブはふとバッキーの動きに気づいた。


    (……ん?)

    横から、ふと何かがもたれかかってくる。
    視線を向ければ、バッキーが静かに目を閉じたまま、がっつりと自分の肩に寄りかかっていた。

    思わず息を呑むスティーブ。
    突然の距離の近さに心臓が跳ねたけれど、バッキーの寝顔を見て、ふっと肩の力が抜けた。

    少し寝癖のついた髪、長い睫毛、無防備な横顔。
    こんなに近くで、こんなに穏やかな顔を見れるのは嬉しくてたまらない。


    (ふふ……疲れてたんだな)

    スティーブはそっと体勢を整え、自分の肩をバッキーがもう少し楽に預けられるように微調整する。
    そして、隣のあたたかな重みを感じながら再びスクリーンに目を戻した。





    ━━━━━━━━━━━━━━━


    スクリーンにエンドロールが流れはじめ、劇場内の照明が少しずつ明るくなっていく。
    そのタイミングで、スティーブはそっと自分の肩に寄りかかっているバッキーに視線を落とした。


    (……寝ちゃったな)

    バッキーの髪が額にかかっていて、呼吸はゆっくりと穏やか。こんなにも無防備な顔を、自分に預けてくれるなんて――
    スティーブは心の中で何度か深呼吸をして、それから小さな声で呼びかけた。


    「バッキー、終わったよ。起きて」

    「……ん、ぇ、あ……」

    ぼんやりと目を開けたバッキーが、ようやく自分の体勢に気づき、はっとして身を起こした。

    「まじか……寝てた? ってか、お前の肩、借りてた?」

    「うん。遠慮なく、ぐっすり。」

    「……わ、悪い、マジで。ちょっと疲れてたんだ、最近…」

    「知ってるよ。夢でも見てた?」

    「……わかんね。見てたような、見てなかったような……」

    スティーブがふっと笑うと、バッキーは頬をかきながら視線をそらした。


    「……なんか、悪ぃな。せっかくの映画だったのに」

    ぼそりとこぼした言葉に、スティーブは肩をすくめてみせる。

    「全然。俺の肩、枕にするくらいにはリラックスしてたし」

    「うるせぇよ」

    反射的に睨み返すが、からかい半分の声に本気で怒る気にはなれなかった。

    肩を借りて心地よく寝ていた自分を思うと、
    なんとも気恥ずかしくなる。


    「よし! 埋め合わせにピザでも奢ろう!」

    バッキーが言うと、スティーブはぱっと目を輝かせる。

    「じゃあ遠慮なく。チーズ増しで頼むな?」

    「おい、調子乗んなよ。」

    呆れたように言いながら、バッキーの口元にも自然と笑みが浮かんだ。


    夜風にコートの裾が揺れる。ふたりの歩幅は、静かに、しかし確かに並んでいた。



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