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    ヴェンタビというよりタビヴェン?
    ヴェントルーがタビコのレッグホルスターを選んであげる話です。

    #ヴェンタビ
    ventabie.
    #タビヴェン
    taviven.

    高等吸血鬼が小娘にからかわれるだけ。 フライパンから豚肉を取り出してしめじと小松菜の茎を入れる。
     軽く火が通ったタイミングで葉の部分を加えて炒めていくと、鍋いっぱいの嵩がみるみるうちに減っていき、半分にも満たなくなったところで豚肉と合わせ調味料を入れてフライパンを軽く振る。
     香ばしいにおいがしたところで火を止めて完成だ。

     主菜にも副菜にもなるおかずは素晴らしい。少し多めに作っておけば明日明後日の献立が楽になる。
     1人前でも2人前でも手間は変わらないうえに1人前だと材料が余ることが多い。
     そんな中毎日冷蔵庫と相談をしていた身としては作り置きという考えは本当に革命的なものだった。
     偶然手に取った料理本の作者に感謝しつつ、隣のコンロに火をつけて小鍋の蓋を開けて味噌をとく。
     キャベツと玉ねぎというどちらかと言えば洋食の具材だが、まあ問題ないだろう。

    「なあヴェントルー、ちょっといいか?」
    「なんだ?飯はもう少しでできるぞ。」
    「いや、ちょっとこれ見てほしいんだけどさ」

     後ろを振り返ると自室にいたはずの小娘がスマホ片手に声をかけてきた。
     スポーツブラにボクサーパンツ。
     梅雨に入り蒸し暑くなってきたとはいえこれを部屋着だと主張されたら、これから訪れる猛暑を考えると頭を抱えるしかない。
     あっちに行けと片手で追い払うと、まあまあとにやけながらスマホの画面を見せつけてきたので、仕方なく画面を覗き見る。
     画面には複数の写真とそのタイトルが記載されており、その横に値段が記載されている。
     どうやらこれは写真のものを販売している通販サイトというものらしい。
     画面を上から下になぞると、表示されていた写真が上に流れていき、また別の写真が表示される。
     そして、写真に写っている物はというと、複数のベルトから構成された装飾品、通称レッグホルスターと呼ばれるもので、その中でも普段タビコが着用しているものと同じ腰回りにつけるベルトと合体したタイプのものである。
    「何のつもりだ?」
    「この前吸血鬼の攻撃でダメになっちゃったからさ、もう1つあるんだけど今回みたいなことがあるから予備で買っておこうかなって思って。」
    「確かにそれはよい考えだ。それで、どうしてその画面を吾輩に見せようと思ったのだ?」
    「お前に選んでもらおうと思って…」
    「はぁ?」
     思わず大きな声を出してしまうが、小娘は気にせずに話を続ける。
    「ダメにしたやつと同じやつ買おうと思っていたんだけど、ちょっと冒険してみようかなってなって。一応他のも見て絞ったんだけど選べなくて…」
    「それでなんで吾輩に選ばせるんだ?」
    「お前ガーターベルトとか好きなんだろ?」
     聞こえてきた単語に思わず耳を疑う。
     目の前の女は吾輩の顔を見てにやりと笑った。
    「貴様あの時聞いていたのか!」
    「聞きたくなくてもあんな大きい声出したら聞こえるだろう。」
    「聞こえたとしても聞こえないふりをするものだろう!」
    「聞こえた性癖はネタにするものだろう!」
    「この外道!小娘!」

     わなわなと体が震えるのを必死に抑えていると、反応に満足したのか吾輩の肩に腕を回してきた。
     靴下さえ取り戻せば!こんなことには!!
    「で?どれがいい?サイズやポーチの大きさはどれもクリアしているから後はお前に任せる。」
     画面を押し付けてきたので、諦めてスマホを手に取る。
    「ここにあるやつは全部お前が確認済みのやつだよな。」
    「うん。この中ならどれでもいい。」
    「…この写真だけだとわかりにくいな。着用している写真はないのか?」
    「写真を選択するとページが変わってその商品の他の写真が見られるよ。ただ、つけている写真がないやつもある。」
    「そうか。」
     試しに気になる写真を1つ選ぶと画面が変わり、写真が大きくなった。
     下には料金と商品の説明が記載されており、他の写真は見当たらない。
    「写真を横にスクロールすると他の写真が見れるぞ。」
    「すくろーる?」
    「あーなぞるって言ったらわかるか?」
    「横になぞるんだな。」
     タビコに言われた通り画面を横になぞると、商品の色違いが出てきた。
     確か壊れたのは茶色だったと思い出し、何回か写真を切り替えたが、以前のものと違い明るい茶色しかなかったので画面を戻した。
    「そういえば色の希望はあるのか?とりあえず前と同じような色で探すつもりだが。」
    「なんでもいい…あー今あるのがベージュだからそれ以外がいいな。」
    「レッグホルスターと一緒にダメになったズボンとブーツはもう買い替えたのか?」
    「それはもう決まっている。ベージュのズボンと黒いブーツだ。」
    「もう1つのブーツは暗い茶色だったよな。」
    「うん。」
    「それなら前と同じ暗い茶色でいいと思うが…色を付けたいのなら赤茶色か?普段来ている色を見るとカーキー色という選択肢もある。」
    「じゃあ赤茶だな。カーキーはあんまり好きじゃない。」
    「そうか。では決まりだな。」

     先程の商品を選択して画面をなぞる。
     着用時の写真の中に赤茶色のものがあったので一応確認し、スマホをタビコに返す。
     視線をコンロに戻すと、小鍋の蓋が少しずつ動いていた。
     急いで蓋を開けると沸騰する直前だったので慌てて火を消す。危ないところだった。

    「ん?お前この商品しか見てなかったよな。他のは見なくていいのか?多分赤茶あったと思うけど。」
    「あぁ、それでいいんじゃないか。色もブーツと合わせてもおかしくなさそうだしな。バックルもシンプルだから他のものとケンカしないだろう。」
    「ふーん。結構真剣に考えてくれてたんだな。」
    「当然だろう。身に着けるものはその本人の価値を示すからな。タクシー替わりにされている身として一緒にいて恥ずかしい恰好をさせるわけにはいかない。」
    「…で、本音は?ほかのやつと違うなって思ったんだろ?色だけじゃなくデザインで。」
    「…特になんにもないわ!さ、飯の時間だぞ。」
     一瞬浮かんだ邪念を薙ぎ払い、飯だと伝えるとにやけながらけだるそうな返事が返ってきた。
     そのまま流しに向かったと思ったら、珍しく食器かごから皿を取り出しこちらに渡してくる。
     一応感謝の気持ちがあるのかと鼻を鳴らすと、コップを持ったまま冷蔵庫に向かっていった。
    「冷蔵庫にサラダと漬物があるからついでに持っていけ。」
    「はーい。」
     面倒くさそうな返事を聞きながら炊飯器を開けると、閉じ込められていた湯気が襲い掛かって来る。
     人間にはこの匂いが美味しそうだと感じるらしい。
     吾輩にはわからない。
     濡らしたしゃもじでご飯を掬い茶碗に盛る。
     少な目の中盛、足りなければ勝手に入れるだろう。
     続いて鍋の半分の味噌汁を汁椀に入れていく。
     夜と朝の2回分、だし汁に入れる前にキャベツも玉ねぎを炒めると甘みが増して美味しいのだという。
     料理本に書いてあったのでこの前試したら、タビコが甘いと言っていたので、きっと正解なのだろう。
     続いてフライパン持とうとしたところで小娘が来ないことに気付く。
     後ろを振り返るとテーブルについてスマホをいじっていた。
     どうやら茶が飲みたかっただけらしいが、サラダと漬物のタッパーを持って行ったので良しとしよう。
     おとなしくトレーを取り出して汁椀と茶碗、漬物皿とお箸を置く。
     フライパンの中身を皿とタッパーに入れて、皿をトレーにのせた。
     そういえば炒め物に卵を入れ忘れていたなと思いつつトレーをテーブルまで運び、タビコの前に並べた。



    ◇◆◇

     そういえばそんなことがあったなと先週のことを振り返る。
     あのときと同様、料理中に声をかけられて振り返るといつも通りスポーツブラにボクサーパンツ姿の小娘がいた。
     ボクサーパンツの上に赤茶色のレッグホルスターというちぐはぐな格好の彼女は楽しそうな顔でこう言った。

    「お前がこれを選んだ理由がわかったよ。太ももにポーチを支えるベルトとは別に飾り用の細いベルトがあるからだったんだな!ほら!見てみろよ!ちょっとだけ食い込ませてやったぞ!」

     思わずその食い込みを凝視し、先週の自分への恨みを込めて叫んだ。

    「せめてズボンを履け!」
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    SPUR MEこちらは2023/8/6開催『床下クッキーパーティ』展示作品です。

    ヒナイチの生まれ変わりが事故で吸血鬼になったと同時に前世の記憶を取り戻してかつての伴侶だったドラルクに会いに行く話です。(未完成)

    製作途中のため途中を飛ばしたり読みにくいところがあります。
    私が読みたいので尻叩きにご協力いただけますようお願いいたします。
    転生・転化ドラヒナ(タイトル未定) 噛みつかれた痛みとともに覚えのない記憶が一気に脳に流れ出した。
     大好きなクッキーの味、優しく私の頬を優しく撫でる血色の悪い細い指、少し細めて優しく微笑む貴方の顔。
     どうして忘れていたのだろうと涙を流しながら目の前で崩れて塵と化す吸血鬼を呆然と見つめる。あの人はしょうもないことですぐ死ぬ吸血鬼だった。
     視界が霞んでいく。遠くで誰かが叫んでいる。それらの意味を理解できる余裕が私にはなかった。
    「…っああああああああああああああああああああ!!!」
     次の瞬間体中に激痛が走り地面に膝をつく。鼓動がいつもよりもずっと大きくてはち切れそうだ。これが前の私が感じるはずの感覚だったんだと頭が勝手に判断する。あいつが与えてくれるはずだった感覚なのだとナイフで傷口をなぞるようにひしひしと刻み付けられる。
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    きって

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    それじゃあといつも通りにタビコは仕事に向かって私と卵2人だけが家に残った。温めろと言われても吸血鬼の体温では具合が悪い。かと言っても湯で煮立たせる訳にもいかず、途方に暮れた私は野外の椋鳥に助けを求めると丁度産卵期だとかでついでに温めてくれるという。見返りとしてベランダの一角に巣作りと当面の餌やりを保証してやる。巣に置こうとするとそこには同じ様相の卵が4つ並んでいて自分の手元の卵と見比べるとこのまま置いてはどれがどれだかわからなくなるだろうと思いあたる。部屋にあったサインペンを片手に少し考え靴下のイラストを描いて、椋鳥の番には台所にあったイリコを分け与える。そうやって始まった抱卵は椋鳥の雛が孵化した後も終わることはなく、椋鳥の番と雛達はとっくに巣立って行ってしまった。仕方が無いので羽を入れた巾着袋にそっと卵を入れ、素肌に触れないよう首から下げる。最早手遅れなんじゃないかとタビコに聞いてみても彼女は慌てるんじゃないという。
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