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    芦緖(あしお)

    @futa2ai

    20↑shipper。 ふたあい(二藍)はイーベン小説中心に活動中。M:I(イーベン)、 TGM(ハンボブ、ルスマヴェ)、忍たま(こへ長)の話題多め。字書きですが、絵を描くのも好き。
    通販(基本イベント開催前後のみ公開)→https://2taai.booth.pm/

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    POIPOI 24

    芦緖(あしお)

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    前回書いたハングマンとボブの話(マヴェ達帰還直後の話)の続き。
    今回はハン側の視点で。ハンボブの民ですが、まだまだそこに至るまでの道が長い。
    ※ポイピクの話をもとに書いた「それは雫のように」はオンイベなどで頒布してます!

    #TGM
    #ハンボブ
    humbob

    それは雫のように ほっとした瞬間、ハングマンの視界がぐらついた。周囲の音が聞こえなくなって、代わりに自分の鼓動だけが耳に大きく響いて、今いるこの場が現実なのか分からなくなった。
     本当に自分は二人を救えたのか? もう手遅れで、何もできず自分も撃墜されて死ぬ間際に都合のいい夢を見ているんじゃないか? そんな疑問がハングマンの思考を支配する。
     そのうち歓喜に湧くデッキにいるのが耐えられなくなり、悟られないように人混みを抜けた。一人になると少し冷静になって、現実と悪夢の区別がつくようになってくる。それでも身体の震えが止まらなかった。
     ハングマンにとってこんなことは初めてだった。危険な任務はこれまでもあったしパイロットとして命の危機に瀕したこともあった。きっと今までのハングマンであればこんな状態にはならなかっただろう。しかしマーヴェリックに教えられる中で知ってしまった。パイロットとしての生き様だけでなく、チームが、仲間がどういうものなのか。そしてそれを失う恐怖も。
    「ハングマン」
     後ろから唐突に声を掛けられて、ハングマンは驚きつつ何とか表情を整えて振り返った。震えの目立つ手は後ろに隠して、声の主……ボブと対峙する。
     ハングマンとしては完璧にやり過ごせるはずだった。ボブが戻ったらもう少し気持ちを落ちつかせてから自分も戻るつもりでいた。しかしボブはそんなハングマンを抱き締め、礼をいい、隠していた恐怖に寄り添い、慰めた。
     語りかけるボブの声の優しさに、触れ合っている身体の温かさに目頭が熱くなって、けれど涙なんて流したくなくてボブの肩に顔を埋める。
    「大丈夫だよ、君はやり遂げたんだ。ハングマンのおかげで僕達はこうして笑っていられる。……ありがとう、みんなの心も救ってくれて」
     ボブの言葉に、ハングマンはやっと自分がちゃんと二人を救えたのだと実感できた。いつの間にか手の震えも止まって、気がついたらボブの身体をそっと抱き締め返していた。



    「……僕は戻るね。君も少ししたら戻っておいでよ。みんなも待ってるよ」
     どちらともなく自然に身体が離れると、ボブは手の震えのことも涙の跡にも触れずに笑顔で声を掛けて去っていった。手に残る温もりに感じたことのない気持ちが湧き上がってくる。
     ハングマンは空を駆けることができるなら周りはどうでも良かった。だから言いたいことは言い、有利と判断すれば僚機を見捨てることだってあった。気に入られようと入られまいと関係なく選ばれる自信があり、それに見合うだけの力量もあった。そんな態度だから人付き合いは狭く、友人と呼べるのは珍しく気があったコヨーテだけ。そのコヨーテにすらこんな風に心のうちを悟られたり気遣われるなんてことは滅多になかった。
     だからボブが自分に見せた優しさが理解できなかった。年下の、軍人とは思えないあどけない顔のベイビー。見た目に反して口は意外と悪いが、WSOとしては優秀で、からかうか他愛無い言葉をいくつか交わすだけのチームメイト。
    『ありがとう、ハングマン』
     その単なるチームメイトの声と笑顔が頭から離れない。
     ハングマンはしばらくボブが去っていた方向を見つめて佇んでいた。
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    related works

    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/お題「いい子」「悪い子」
    たまらんくらい最高のお題だったのでどちらも使いました
    帰り支度 思えばブラッドリーは、僕の知る限りずっといい子だった。
     大人の助けが必要なほど幼い頃から、ブラッドリーは他者を助けることに躊躇いがなかった。家の中では着替えを手伝ってもらっていた子が、外では道端でひっくり返った虫を草木がある場所まで戻してやり、公園では転んだ子に駆け寄り、大丈夫かと声をかけた。小さい頃は家族や僕以外には少し内気だった坊やは、転んで落ち込んだその子を控えめな態度で誘い、一緒に遊んで回った。そのうちその子は坊やの友達になり、名前と住所を教え合った。
     学校に通い始めてからも、ブラッドリーは何も変わらなかった。忙しいキャロルに代わって保護者面談に出席すると、先生からは驚くほどよく坊やを褒められた。「クラスメイト同士の喧嘩を止めて、仲直りまでさせたんですよ」また、意地悪されている子がいれば常に一緒に行動し、いじめっ子にも怯むことはなかったという。優しくて強い心を持ち、それを家族や僕以外にも分け与えられる子。先生の話を聞きながら、僕は誇らしさで胸がいっぱいだった。僕が坊やを育てたわけでもないのに、すぐにでも彼をハグしたくてたまらなかった。帰宅してキャロルに報告する間、僕の隣で話を聞いていたブラッドリーは嬉しそうに小さな鼻を膨らませていた。褒められるためにしているわけではなかっただろうが、それでも大人2人に口々に讃えられることは、彼にとっても大きな喜びだったろうと思う。
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    カリフラワー

    DONEマ右ワンライ/ルスマヴェ/お題「歌声」
    わかりづらいですが、段落ごとに時間が進んでます。本当にわかりづらいです。反省してます。
    Sing for me 幸せだと感じる時、聞こえてくるのはいつも彼の歌声だった。
     ブラッドリーは歌が上手い。ピアノも弾ける。彼の父親もそうだった。二人揃って音楽の才能があった。だけどそれをブラッドリーに伝えると、彼はこう答えた。「俺が親父と違うのは、俺はマーヴを惹きつけるために歌ってるってこと。俺の歌声はマーヴのためにあるの」だから同じにしないで、と彼は笑った。

     繋ぎっぱなしのビデオ通話で、かつて僕たちは会話もせず黙って時間を過ごした。ブラッドリーは料理をして、僕は洗濯物を片付けて。お互い画面なんてあまり見ていなかったと思う。自分が映っているかどうかも気にしていなかった。ただ画面上で繋がってさえいれば、二人の時差も距離も忘れてしまった。時々思い出したように画面を見ると、ブラッドリーはナイフや缶切りを持ったまま、同じタイミングで僕の様子を確認しに来る。そして安心したように微笑み、また画面の前から消える。それを何度か繰り返していると、そのうち彼の歌声が聞こえてくる。
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