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    totoro_iru

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    totoro_iru

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    3Zアニメ化発表後の話。
    銀さんは新八くんと付き合ってますが、銀八先生は志村くんと付き合ってません。

    アニメ化おめでとうございます! バケツ2つを両手に持ちながら、銀時は廊下に立たされていた。その頭の中はたくさんのハテナマークが飛び交っている。アニメ化ってなに?そもそもあの白衣を着た野郎は誰だ?顔が自分にそっくりということは、また源外が金時のようなからくりを作ったのだろうか?ふざけんなよ、そう何度もタイトルを変えられてたまるか!
    銀時は慌ててバケツを置くと、教室のドアに手を掛けた。その時、後ろから声を掛けられた。

    「あれ?何してるんですか、先生」

    その声は銀時のよく知る少年の声だった。

    「いいとこに来た、新八。今からこの漫画の主人公の座を乗っ取ろうとしてる野郎を潰しに行くからお前も手伝え」
    「何訳分からない事言ってるんですか。たしかに原作の『銀魂』は漫画ですけど『3年Z組銀八先生』は小説でしょ」
    「は?」

    銀時が振り返ると新八が立っていた。しかし、その風貌はいつもの青い袴姿ではなかった。詰め襟をきっちりと閉めた学ラン姿の新八だった。銀時はポカンと口を開けた。

    「お前最終回迎えて色んな所とコラボしようする心意気は良いけどよぉ。学生服ってのは普通過ぎるだろ」
    「いや、その言葉そっくりそのままお返ししますけど。何で今ごろ原作のコスプレななんてしてるんですか」

    新八の言葉に、銀時はうーんと腕を組んだ。どうにも話が噛み合わない。銀時は改めて新八に視線を向けた。やはり学ラン姿のコスプレ感は否めなかった。そこまで考えて、銀時はニヤリと笑った。

    「なぁ、新八。もう一回『先生』って呼んでくんね?」
    「えっ?いつも呼んでるじゃないですか」
    「いいから、いいから」

    新八は少し疑問符を浮かべながらも、素直に銀時に従った。

    「先生」

    新八に呼ばれ、銀時はますます深い笑みを浮かべた。

    「いやぁ、なんか……いいわ」
    「は?」

    銀時はニヤニヤと笑いながら新八の肩に手を置いた。

    「なんつーか、お前に学生服のコスプレさせてイケナイ事してる気分」
    「何言ってるんですか!?ていうか、そもそもこれコスプレじゃないですから!」
    「まぁまぁ新八くん」

    銀時はこの状況を夢だと結論付けた。自分にとって都合の良い夢なら、思う存分堪能してもバチは当たらないだろう。

    「今から先生とイケナイ事しよっか?」

    銀時は新八の唇に触れようと顔を近づけた。その瞬間、頭から勢いよく水を掛けられた。

    「冷てぇぇぇ!」
    「なにしようとしてんだ、てめぇは」

    銀時が勢いよく振り返ると、先ほどの白衣の男が立っていた。その手には、先ほど銀時が持っていたバケツがあった。

    「あれ?先生が2人いる」

    新八は銀時と白衣の男を交互に見つめた。

    「志村ぁ、不審者は即通報しろってこの前防犯教室で教わっただろうが」
    「あっ、やっぱり不審者でしたか」
    「誰が不審者だ!つーか、てめぇこそ俺とそっくりなツラしやがって何モンだよ!」

    銀時は男を睨み付けたが、男は素知らぬ顔で銀時の横を通りすぎ新八の隣に立った。

    「さっきの話聞いてなかったのかよ。『3年Z組銀八先生』のアニメ化の話」
    「聞いてたけど!じゃあ何!?本当に俺が主人公じゃないの!?銀魂は!?」
    「そんなん知るか」
    「おいおい!どうなってんだよ、サンライズ!」
    「まぁ何か用意してんじゃねぇの」
    「なにそのフワフワしたアドバイス!全くフォローになってねぇんだけど!」
    「まぁまぁ。えっと、じゃあ不審者さんは原作の主人公の坂田銀時さんってことですか?」
    「だからぁ、俺は不審者じゃねぇって言ってんだろうが」

    銀時は不機嫌そうに新八に視線を向けた。

    「じゃあ坂田さん?」

    新八は律儀に尋ねた。その隣で白衣の男が微かに眉間に皺を寄せたのを銀時は見逃さなかった。

    「銀さん」

    新八は少し驚いた顔で銀時に尋ねた。

    「それ僕が呼んでもいいんですか?」
    「いいに決まってんだろ。むしろお前に『坂田さん』なんて呼ばれたらケツの穴がムズムズすらぁ」
    「じゃあ、『銀さん』」

    一見白衣の男の表情に変化はないように見えた。しかし、目は銀時を睨むように細まり、口に咥えられた煙草は強く噛みしめられている。
    銀時は内心愉快で仕方がなかった。何せこの男には廊下に立たされ、水を掛けられた挙げ句、不審者呼ばわりまでされたのだ。これぐらいの反撃は許されていいだろう。

    「おい、不審者」
    「あ?」

    白衣の男は銀時に近付くと、新八に聞こえないような低い声で呟いた。

    「俺のに手ぇ出すんじゃねぇぞ」

    それは大事な生徒だからという意味なのか。それとも他の意味なのか。判断の付かない言い方だったが、男の射殺すような視線を受けて銀時は大袈裟に溜め息を吐いた。

    「俺って凄む時こんな怖ぇ顔してんの?」

    あぁ、やだやだ。嫉妬と執着にまみれた自分の顔なんて見たくもない。銀時は男の左肩をポンと叩いた。

    「別に取りゃしねぇよ。それにうるせぇメガネなんざ1人で十分だ」

    白衣の男は銀時をジロリと睨むと、窓の外を親指で指差した。

    「校舎から出れば元の世界に戻れる。さっさと帰れ」
    「勝手に呼んどいて扱いが雑過ぎね?」

    しかし、戻れる方法が分かって助かった。それではさっさとお暇するとしよう。銀時は白衣の男を通り越すと、新八の目の前で止まった。頭の後ろに針のような視線を感じたが、無視を決め込む。

    「お前も苦労しそうだな」

    新八は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐにニコリと笑った。

    「大変ですけど苦労なんて思った事ないですよ。きっと、そっちの僕もそう思ってるんじゃないですか」

    銀時は眩しそうに目を細めて、新八の頭を乱雑に撫でた。針だった視線がビームに変わったのを感じ、すぐに手を離す。今度は振り返って白衣の男に声を掛けた。

    「すぐにそこの座奪いに来てやるから。それまではせいぜい踏ん張れよ、先生」

    ※※※

    銀時がいなくなった後、新八と白衣の男、坂田銀八は水浸しになった床を片付けていた。

    「何で俺も掃除しなきゃいけねぇんだよ」
    「先生がバケツの水を銀さんに掛けたからでしょ」
    「あれは不審者から大事な生徒を助けようっていう教師の鑑のような行動だろうが」

    嘘ではないが本音でもない。あいにく銀八は本音を新八に伝えるつもりなど毛頭なかった。100%の確信を得るまでは隠し通すつもりでいた。しかし、銀時にはしっかりバレていたようだ。どうやら顔だけでなく考え方や性格まで似通っているらしい。もう会うことは無いと分かっていても、もう少しきちんと釘を刺しておけばよかったと、銀八は後悔の念に駆られた。

    「先生」

    新八は銀八の隣に立って、嬉しそうに笑った。

    「アニメ頑張りましょうね」

    銀八は眩しそうに目を細めると、何も言わずに新八の髪を優しくかき混ぜた。
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