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    totoro_iru

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    totoro_iru

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    銀→新
    男の子らしい新八くんが好きです。

    #銀新
    silverNew

    扇風機で涼めるあの夏に戻りたい 新八は真夏の日差しを存分に浴びながら歩いていた。右手に日用品、左手に食材の入った買い物袋を持っているため、頬を伝う汗を拭う事もできない。
    「暑い」
     思わず独り言が漏れてしまう。それぐらい暑さにやられていた。何故自分だけがこんな苦行に耐えなければならないのかと、新八は歯ぎしりしたい気持ちに駆られた。神楽はよっちゃんたちとの約束があると事前に言われていたから問題ない。腹立たしいのは、昼飯が終わるとともに出掛けて行った銀時である。新八が買い物の手伝いをお願いする前に万事屋からいなくなっていた。今日の夕飯の餃子は絶対に1つ、いや3つ減らしてやると心に決め、新八は勢いよく玄関を開けた。
    「うわ」
     家の中に入っても日差しを浴びなくなっただけで暑さはほぼ変わらなかった。新八は足早に台所へ向かうと冷蔵庫を開けた。
    「はぁ」
     途端に冷気が新八をふわりと包み込み、思わず気の抜けた息が漏れた。このままでいたい気持ちを何とか抑え、新八は食材を冷蔵庫に入れた。冷蔵庫を閉めてしまえば、再び蒸し風呂のような部屋に逆戻りだ。日用品をしまっている間も少しずつ暑さが増して行っているような気がする。まずい、このままでは確実に熱中症まっしぐらだ。どうすればマシになるだろうかと考えたところで、あるモノが新八の目に止まった。
     それは、扇風機であった。いつもは銀時か神楽が前に陣取ってしまうため、新八が独り占めする機会は全く訪れなかった。しかし、今は新八の他に万事屋にいる者はいない。存分に扇風機の風を浴びる事が許されている状況だ。
     新八は全速力で扇風機へと突っ込んで行った。そして、扇風機の前に座ってスイッチを押した。ブィィンと羽根が回りだし、風が新八の顔に当たった。
    「きもちー」
     冷蔵庫のような冷気はないが、汗のかいた肌を冷ますには丁度良い。最初は風の心地良さに満足していた新八だったが、次第に物足りなさを感じてきた。
     新八はキョロキョロと辺りを見回した。よし、誰もいない。神楽もまだ帰ってこないだろうし、銀時は帰ってきたところで特に問題ない。新八は袴の帯を緩めると着物の衿に手を掛けた。
     汗を吸って重くなった白のタンクトップを脱ぎ捨て、上半身裸になった新八は再び扇風機の前に腰を下ろした。
     途中でさすがに裸はまずいかと思い直して袖に腕は通したものの、肩を出して前を肌蹴させた。風が汗に濡れた肌を優しく撫でていく。
    「あ~きもち〜」
     風のせいで声が震えようが、ハシタない格好になっていようが気にしない。なんたって今は新八しかいないのだ。どうせ2人が帰ってくれば、この風を享受する機会は失われる。今だけ、今だけは存分にこの風を堪能していたかった。
     すると、玄関の方から『ただいまぁ』という声が聞こえた。どうやら銀時が帰ってきたらしい。新八はそのままの姿勢で『おかえりなさい』と言った。
     廊下を歩いてくる銀時の足音を聞きながら、新八は溜め息を吐いた。嗚呼、きっともうすぐ扇風機の前から追い出されるに違いない。どうせパチンコか競馬で出掛けていたくせに。新八は心の中で銀時への悪態を散々吐いていたが、ふと部屋が静かな事に気付いた。おやと思い、新八が振り返ると銀時が呆然とした顔で立っていた。その鼻の穴から赤い液体がタラリと流れ、床にポタポタと落ちた。
    「うわっ!銀さん鼻血鼻血!」
    「…あっヤベ」
     銀時が動くより早く、新八は立ち上がるとティッシュの箱を持って銀時に駆け寄った。白い着流しへ鼻血が垂れる前に、銀時の顔へとティッシュを押さえ付けた。
    「いででっ!おい、そこ鼻じゃねぇよ」
    「うるさい!その着流し汚されたら洗うの誰だと思ってるんですか」
     鼻血が治まったのを確認してからティッシュを取る。
    「まったく。長谷川さんと如何わしいお店にでも行ってたんですか?」
    「行ってねぇわ。何ならここ最近とんとご無沙汰だわ」
    そう言って、銀時は不機嫌丸出しの声で新八を指差した。
    「つーかさぁ、お前何その格好」
     新八は何の事か分からずコテンと首を傾げた。そして、『あぁ』と納得すると腕を広げた。
    「暑かったんで」
    「お前ダメだろ。それは」
    「ダメですか?」
    「……風邪引くだろ」
    「年がら年中胸元を肌蹴させてる人に言われたくないんですけど」
     だからアンタは風邪を引きやすいんだよと、新八は思った。新八が着崩した着物を着直している間、銀時は手で口元を押さえ何やらブツブツと呟いていたが内容までは聞き取れなかった。
    「銀さん麦茶飲みますか?」
    「あ?…あぁ。頼む」
     銀時から明らかに心ここにあらずの返答が返ってきた。まだ何か気になる事があるのだろうか。まぁ、また後で聞けばいいか。そう心の中で結論づけた新八は、一旦麦茶を取りに台所へ向かった。


    「はーもうアイツ何なのマジで」
     銀時は扇風機の前にしゃがみ込むと両手で頭を抱え、乱雑に髪を掻き回した。本当に勘弁してほしい。心臓に悪過ぎる。鼻血だけで済んだだけでも感謝してほしい。
     ちょっとパチンコに行って帰って来たら、肩まで着物を下ろして前を肌蹴た新八がいた。これが他の野郎だったら気にも止めなかったのに。
     中途半端に脱げていたのがイケない。いつもきっちりと着物を着ているからか、着崩している姿が妙に艶っぽく見えてしまった。風に靡く髪と、気持ちよさそうに目を細める顔に堪らなく唆られた。その着物の中を暴きたくなる。あの肩に歯を突き立てたらアイツはどんな顔をするのだろう。首筋から鎖骨にかけて指を這わせ、筋肉で少し膨らんだ胸に触れて、吸って、それから……。
    「あーーーーー」
     どうにかして煩悩を振り払おうと、銀時は扇風機に向かってひたすら声を出した。風の中で震える声は『そんなんじゃ、いつかバレるぞ』と、銀時を嘲笑っているように聞こえた。
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    totoro_iru

    DOODLE2年後銀→←新です。久しぶりに長谷川さんを書いたので口調が不安定かもしれません!
    タイトルはタイトル作りが苦手な私に代わって友人が考えてくださいましたヽ(^o^)丿
    オレンジジュースとウーロンハイ 居酒屋の引き戸を開けると酒に飲まれた人たちの威勢のよい熱気が立ち込めていた。ガチャガチャと食器が音を立て、ガハハと大きな笑い声があちこちで響いている。そんな喧騒の真ん中に新八の探し人、坂田銀時はいた。自分の腕を枕にしてカウンター席の机に顔を伏せている。その横で長谷川が『おっとっと』と頼りない手付きで酒を注いでいた。よくこんな場所で眠れるなと呆れと感心の混ざった溜め息を吐いて、新八は2人に近付いた。長谷川は新八に気が付くとヒラヒラと手を振った。

    「あっ、しんぱちくん。来てくれてありがとう」
    「たまたま帰るタイミングだったんで良かったです。それにしても珍しいですね、迎えを頼むなんて」

     いつもなら朝まで飲んでも1人でちゃんと万事屋まで帰って来られるはずだ。江戸からいなくなって2年という歳月が経っても、その習性は変わっていなかった。銀時が万事屋を帰る場所と本能で認識してくれている。その事に、新八は人知れず温かな喜びを感じていた。
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    「あっ、しんぱちくん。来てくれてありがとう」
    「たまたま帰るタイミングだったんで良かったです。それにしても珍しいですね、迎えを頼むなんて」

     いつもなら朝まで飲んでも1人でちゃんと万事屋まで帰って来られるはずだ。江戸からいなくなって2年という歳月が経っても、その習性は変わっていなかった。銀時が万事屋を帰る場所と本能で認識してくれている。その事に、新八は人知れず温かな喜びを感じていた。
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