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    totoro_iru

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    totoro_iru

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    4月8日は新八くんの日!
    銀+新寄りの銀新。

    #銀新
    silverNew

    自分の物なのに他人の方がよく使う物 寒の戻りがようやく落ち着き、春らしくなってきたある昼下がり。新八は久しぶりに自宅の縁側に座って休みを満喫していた。
     通年閑古鳥が鳴いている万事屋に珍しく依頼が続き、奇跡の5連勤が昨日まであった。大抵の人間が5日以上働いてるにもかかわらず、万事屋のまるでダメな大人、略してマダオは『これ以上働いてられっか』と言って、強制的に次の日を休みにしてしまった。
     突然の休みだったが、新八はこれ幸いと午前中は道場の掃除や部屋の片付けに精を出し、お昼ご飯を食べた後は干していた洗濯物と布団を片付けた。一通りの用事を済ませ、意気揚々とポータブルCDプレーヤーを再生させると先月発売されたお通のアルバムの曲が流れ始めた。新八は音に合わせて頭を横に小さく揺らした。
     4曲目のサビに入りそうになった時、ふいに新八の左耳に付いていたイヤホンが外れた。
    「えらくご機嫌じゃねぇか」
     驚いた新八が声のした方を向くと、そこには銀時が立っていた。
    「今日休みって言ってましたよね?」
    「ああ」
     銀時は短く返事をすると新八の隣に座った。一体何しに来たのだろうかと、新八は思った。滅多なことがなければ銀時が志村邸を訪れる事はない。大抵新八の様子がおかしいとお妙に言われて召集されるか、病気か怪我で療養のために滞在するくらいだ。それではお妙に用事だろうか。しかし、あいにくお妙は九兵衛と買い物に出掛けてしまっている。九兵衛の春服をコーディネートするのだと意気込んでいたため、帰ってくるのはまだ先になる気がした。
    「銀さん、すみません。姉上いま出掛けてて」
    「へぇ、そう。つーか何でお妙?」
    「えっ?姉上に用があったんじゃないんですか?」
    「いや、ねぇけど」
     銀時の答えに、新八はますます意味が分からなくなった。じゃあ何でうちに来たんだ?小首を傾げる新八の目の前に、団子屋のロゴマークの付いたビニール袋がガサリと揺れた。
    「団子食わね?」
    「銀さんが買ったんですか?」
    「他に誰がいんだよ」
     新八は信じられない気持ちで団子の入った袋を見つめた。どうしよう、明日は槍が降るのかもしれない。あの甘い物好きの銀時が何でもない日に他人へ甘味を分け与えるだなんて。罠か、それとも遅めのエイプリルフールか。
    「おーい、新八くーん。食うの?食わねぇの?」
    「……本当に食べてもいいんですか?」
    「いいに決まってんだろ、ほら」
     そう言って、銀時は餡子がたっぷりと乗った団子を1本取り出した。
    「あーん」
    「いや、自分で食べれるんで」
    「いいからさっさと開けろよ」
    「えぇ…」
     男が男に『あーん』をして一体何が楽しいのか。釈然としないまま新八は大きく口を開けた。一瞬喉まで思い切り突っ込まれたらどうしようという考えが頭を過ったが、銀時はふざける事なく新八の口の中に団子をそっと差し入れた。新八は歯を使って団子を1つ引き抜いた。
    「美味ぇだろ」
    「ふぁい」
     もぐもぐと弾力のある餅を咀嚼しながら、新八は頷いた。たしかに美味しい。餡子は甘過ぎず程よい塩梅だし、餅は噛む度に炭で焼かれた香ばしさが鼻を抜ける。ゴクンと飲み込んだところで、もう1つ食べたくなって銀時の方を見れば新八の食べた団子を食べきろうとしていた。
    「ちょとォォォ!!それ僕の団子じゃないんですか⁉」
    「貰った団子全部食えるほど世の中そんなに甘くねぇよ」
    「いや、甘くないのは糖分が絡んだアンタだろ!」
    「新八ぃ、茶ぁ淹れて」
    「人の話聞けよ!」
     新八はゼェハァと肩で息をした。こんなの万事屋にいる時とほとんど同じじゃないか。せっかくの休みなのに何でこんなに疲れなきゃいけないんだと、新八は思った。
    「ホントにアンタ何しに来たんですか?」
     新八はジトリとした目で銀時を見ながら尋ねた。銀時は団子の串を使って新八の方を指差した。
    「今日何日か知ってるか?」
    「今日?ええと」
     新八は空を見上げた後、『あぁ』と小さく呟いた。
    「たしか4月8日ですよね」
    「そうそう」
     誰かの誕生日だったりイベントがあったりしただろうか。新八は色々考えてみたが、何も思い当たらなかった。
    「何かありましたっけ?」
    「俺らの周りじゃ何もねぇな」
    「そう…ですよね」
     新八はうーんと首を捻った。日にちを尋ねられたという事は4月8日が関係しているに違いない。しかし、その日が特別な日というわけではないらしい。一体今日は何の日なんだ?新八が一生懸命考えている横で、銀時はもう1本団子を取り出した。
    「まぁ、お前より俺たちの方が気付きやすいってのはあるかもな」
     どうやら自分と関係がある事らしい。色々ヒントを出してくれてはいるが、新八は未だに正解までたどり着く事ができずにいた。銀時は得意げに笑いながら団子の先を新八の方に向けた。
    「しょうがねぇからもう1個だけ恵んでやるよ。なんたって今日は4月8日だからな」
    「そのニヤニヤ顔すごい腹立つんですけど。ていうか、知ってるならそろそろ教えてくださいよ。結局今日は何の日なんですか?」
     新八の問いに銀時は答えなかった。その代わりに新八の口元へ団子を近付けた。またかと呆れながら新八が口を開けると、餡子の味が口の中に広がった。銀時は満足そうに新八を見つめながら『さぁな』と言った。

    (蛇足)
     テレビで今日が4月8日だと知り、語呂合わせで新八になるなとぼんやり思っていたら会いたくなっちゃって団子片手に会いに行ったけど、シャイなアンチキショウなので何故来たのか聞かれても素直に理由を言えない銀さん
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    totoro_iru

    DOODLE2年後銀→←新です。久しぶりに長谷川さんを書いたので口調が不安定かもしれません!
    タイトルはタイトル作りが苦手な私に代わって友人が考えてくださいましたヽ(^o^)丿
    オレンジジュースとウーロンハイ 居酒屋の引き戸を開けると酒に飲まれた人たちの威勢のよい熱気が立ち込めていた。ガチャガチャと食器が音を立て、ガハハと大きな笑い声があちこちで響いている。そんな喧騒の真ん中に新八の探し人、坂田銀時はいた。自分の腕を枕にしてカウンター席の机に顔を伏せている。その横で長谷川が『おっとっと』と頼りない手付きで酒を注いでいた。よくこんな場所で眠れるなと呆れと感心の混ざった溜め息を吐いて、新八は2人に近付いた。長谷川は新八に気が付くとヒラヒラと手を振った。

    「あっ、しんぱちくん。来てくれてありがとう」
    「たまたま帰るタイミングだったんで良かったです。それにしても珍しいですね、迎えを頼むなんて」

     いつもなら朝まで飲んでも1人でちゃんと万事屋まで帰って来られるはずだ。江戸からいなくなって2年という歳月が経っても、その習性は変わっていなかった。銀時が万事屋を帰る場所と本能で認識してくれている。その事に、新八は人知れず温かな喜びを感じていた。
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    「あっ、しんぱちくん。来てくれてありがとう」
    「たまたま帰るタイミングだったんで良かったです。それにしても珍しいですね、迎えを頼むなんて」

     いつもなら朝まで飲んでも1人でちゃんと万事屋まで帰って来られるはずだ。江戸からいなくなって2年という歳月が経っても、その習性は変わっていなかった。銀時が万事屋を帰る場所と本能で認識してくれている。その事に、新八は人知れず温かな喜びを感じていた。
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