【ブラネロ】刻みつけるほどに溶かして 部屋に戻ってきた男が俺を見て軽く驚いたように目を見開いた。
まぁ、無断で入ることはほぼねえからな、一応。
「どうだった」
存外、穏やかな声が出た。
ネロはベッドに寝転がる俺のすぐ傍に腰掛けながら素直に答えた。
「なんつうか、…結果的によかったよ」
「…そうかよ」
まだ消化しきれていないような、それでいてスッキリしたような表情に少しばかりまず感じるのは安堵だ。
こんなに過保護だった覚えはねえんだが。
「実はさ、問題の場所っつうのが……」
穏やかに、苦笑混じりで話すのは俺から逃げたネロが最初に開いた店の話。
行かなくてよかった、という思いと同時に、俺の知らない場所にフィガロの野郎やミスラ達が踏み込んだ、というあたりがモヤモヤと腹に凝る。
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