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    すたうさ

    @stusMZKZの主に作文倉庫。
    3Lと女体化が好きな雑食カプ厨です。

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    すたうさ

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    ※再掲文字版
    現パロ槍盾(初期槍×マイルド盾)
    コンビニに行って買い食いする2人のお話。

    ##たてゆ

    これもください!「アメリカドッグとーからあげとーフライドポテトとー……――」
     コンビニエンスストアのレジ前で、ホットスナックコーナーを熱心に見つめながらアレやコレやと片っ端に全制覇していく勢いで注文を続けていく金髪ポニーテールの男が一人と。
    「まーたいっぱい頼んでる……すみません、いつもお手間かけさせてしまって」
     それを申し訳なさそうに謝る客の言い分。良いのよーと店員は手際よく横からホットスナック置き場からレジ打ちに移動を済ます。そんな店員と他愛のない言葉を交わす癖毛で黒髪の男が一人。今日も近くのコンビニエンスストアに寄っていた。
     
     
     
     まだ白んでいる澄んだ空気がなんとも心地が良い早朝の買い物に、二人は店員に頭を下げつつ満足気に店を出る。
     もうすっかり顔を覚えられた馴染みの店ということもあって、この時間は出勤前や朝食の買い出しに来る客がまだ少ないというのに来店する度に充実しているホットスナックコーナーを思い出して、黒髪の男は恥ずかしいやら嬉しいやらと、跳ねる癖毛を揺らして頬を掻いてしまう。対照的に金髪ポニーテールの男は、買い物の行きから今の今まで終始るんるんでそのしっぽを揺らしてご機嫌だ。
    「いやー今日もあそこの店はホットスナックたんまりあったなー! 全部美味そうで端から端まで頼んじゃった。実際美味しくてリピしてるんだけど」
    「回転率が元々早いお店なのかもね。最近はポテトの種類も増えてきたよねー。フライドポテトもベイクドポテトも美味しいしな」
     近頃のコンビニ惣菜は侮れないな……と、黒髪の男が歩きながらうんうんと頷いていると、金髪の男は待ってましたとばかりにバッとレジ袋を開き中身を漁り出した。突然ガサゴソと音を立てる金髪の男に、黒髪の男はびくりと肩を跳ねる。
    「えっ元康くん、歩きながら食べる気?!」
    「だって部屋に着く頃にはちょっと冷めちゃうじゃんか。大丈夫だって、こんな朝早くで通行人もろくに居ないし、俺らが食べてたって誰も見やしないって」
    「俺らって、俺も入ってるの?」
    「当たり前だろー。一人で食べるのは寂しいもん」
    「もんって……女子か……」
     呆れたため息もなんのその。元康と呼ばれた金髪の男が目尻を嬉しそうに垂らしてレジ袋を漁る様を、黒髪の男はややげんなりとした目つきでそれを見る。
    「んー何にしようかなー? おっこれにしよう! フライドポテト! 尚文は?」
    「えっああ、俺は……アメリカンドッグにしようかな。買ってるんでしょ?」
    「もちろん! へへっ尚文は本当によく見てるよな」
     じりじり昇り始めた太陽にも負けない、これでもかというほどの満面の笑顔で元康は黒髪の男、尚文が欲しいと言ったアメリカンドッグをレジ袋から取り出して歩みを緩め手渡した。もちろんケチャップとマスタードの調味料も忘れずに。
    「ありがとう。ん~……この生地の甘い感じと油の匂いがまた良いんだよね。いただきまーす」
     尚文はケチャップとマスタードが入った小さな容器をパキッと半分に折り、自分が食べようとしている範囲に少しずつかけてアメリカンドッグを頬張る。出来たてでまだ時間が経っていないそれはサクリと音を立てた後、生地の甘さと中にあるソーセージの美味さを最大限にして、最後にケチャップとマスタードが飽きがこないよう調和する。
    「あーやっぱりこれだなあ。美味しい……」
    「尚文は食べたい所へ器用にケチャップかけるよなー。俺は一気にかけるタイプだから新鮮に見えるよ」
    「それでも良いんだけど、最後の方って調味料がかかりにくかったりするからね。というか元康くんも早くフライドポテト食べなよ」
    「尚文に見惚れちゃってつい」
    「つい?!」
    「へへっ! ここの皮付きで芋感強くて美味いんだよな~いただきまーす!」
     ほれほれと急かした仕返しなのか何なのか。冗談なのか本気なのか。隣に並び自然な流れで口説いてくる元康に軽く突っ込んでも、返ってくるのは眩しい笑顔だけ。
     悔しい。言うだけ言ってはぐらかすのは狡くないか? と何だかモヤモヤが口から溢れてしまう寸前で、尚文は思い切りガブリとアメリカンドッグにかじりつく。このモヤモヤも一緒に飲み込んでしまえるだろうか。ちらっと横目に見た元康はフライドポテトによってよりご機嫌になってそれを頬張っていた。尚文のもごもごとした動きとは正反対に、元康の目いっぱいになった頬が弾み良く上下する。
    「うんめー! このほくほくとした食感と塩加減が本当にたまらん……手が止まらない……美味い……ッ!」
    「ふふ、君が幸せそうでなによりだよ」
    「やっぱ尚文とする買い食いは止められないな♪尚文もう飲み込んだか? ほら、フライドポテトあげる」
    「ん、あーん……んむ……うん、美味しいね」
    「だろー? ……あ、尚文。このままこっち向いてて」
    「なに――」
     ゆっくりと口に運ばれたフライドポテトを味わって咀嚼しているふとした時に呼ばれた尚文は、はてなを頭に浮かべて無防備な顔を視線ごと元康へ向かい合う。すると元康の節くれだっているが程よく細く長い指が尚文の柔い頬を伝い、口元にたどり着くとむにむにと柔く触れて撫で上げたと思えば、惜しむように指を引いた。無防備だった尚文の顔が、段々と朱に染まっていく。
    「え……あ……ん?? んん?! いっ今何したのッ」
    「尚文の口にアメリカンドッグの食べかす付いてたから、とっちゃった。ごちそうさま♡」
     ぺろり。形の良い指で掴んだ食べかすは、元康の口の中へと消える。
     驚きのあまり歩みを止め、顔が赤くなりっぱなしの尚文に合わせて元康もまた歩みを止めた。少し屈んでから覗き見る尚文の顔は困惑と気恥ずかしさでぐるぐると実に忙しく落ち着きがない。普段は少し自分を隠したがる彼がこうやって素直に反応してくれるのは、心を少しでも許してくれている証拠だろうかと元康は内心喜びを隠せず緩く口角が上がる。含みのある表情の裏側など露知らず、尚文は焦りだす。
    「そう、だったのか。ありがとう……ありがとう? いやありがとうか……あっ元康くん、もうフライドポテト食べ終わってるんだね。こっこれも食べなよ、はい串焼きっ」
     もうどうすればいいのかわからないと、この何とも言えず照れくさい雰囲気にいたたまれなくなった尚文は場を仕切りなおそうと自身が持っていたレジ袋から取り出して、元康に次のホットスナックを促す。あまりにも必死な様子に元康は吹き出しそうになったが、ここで彼の機嫌を損ねても仕方がないと串焼きを受け取る。
    「こっちこそサンキューな! 串焼きも食べたかったから丁度良かった」
    「っ元康くん、串焼きも好きだもんね」
    「うんうん! 尚文は本当に俺の事よく見てくれてるよなあ」
     染まりあがった頬はまだ濃く色づいたままだが、それでも話題がそれたと安心した表情を浮かべる尚文に元康はそれとなく含みがある台詞をいって、串焼きを食べ始めると同時にゆっくりと歩み出す。
    (掴みはOKかな? こんだけモーションかけたら、流石の尚文も考えてくれるかなあ)
     香ばしくもタレのまろやかさが絶妙な串焼きをもぐもぐと頬張って元康は隣にいる尚文を横目で見る。今とばかりに明るくなった空が朝日を連れて、アメリカンドッグの残りにかじりつく翡翠の瞳をきらりと光らせた。
     
     
     再度歩み始めた二人を、ようやっと太陽が照らし出す。
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