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    小月 輝

    @ODUKI547

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    POIPOI 11

    小月 輝

    DONEインク屋小話④ジャミル
    モブランド4開催中に間に合ったー!
    ジャミル、インクを買い行く。
    柘榴の涙ジャミルのインク瓶は特別製だ。
    画一的な四角いガラス瓶とは違う、ころんと丸い形もさることながら、陽光に様々に煌めく色ガラスの鮮やかさが一際目を惹く。
    特に鮮やかな赤色の模様が気に入っているが、何よりも素晴らしいと思うのはその機能性だった。一見そうとは見えないように刻まされた魔法陣はジャミルのマジカルペンと呼応し、自動的にマジカルペン内にインクを補充してくれる。
    マジカルペンを介して魔法を使うため、マジカルペンへのインク補充は必然的に手作業になりがちな魔法士には嬉しい機能だった。ジャミルはカリムの元で、いくらでも美しく貴重なガラス細工を見た事があったけれど、この自分のインク瓶が一等美しいと思っていた。賢者の島内部であれば、どこにいてもインクを補充出来る売り文句に誤りはなく、おかげでジャミルはインク壺を持ち歩く事から解放された。自室のランプ下に置いてあるインク瓶の輝きが強い事に気づいて、ジャミルは予習の手を止めた。買って以来机の上から動かしていないガラス瓶は、インクの残量によって光の反射率が変わる。キュポッと蓋を外せば、思った通り底に僅かにインクが残るのみだった。
    9054

    小月 輝

    DONE嘆きの島産モブの帰省話
    モブランド2展示
    嘆きの島に雨は降らない。海の中にあるくせに、遠い先祖の土地と同じく水資源に乏しい島は、無機質な潔癖さに満ちている。住んでいた時には何も思わなかったのに、久しぶりに足を踏み入れた故郷は、知らない人のようだった。まだ来ない迎えにぶつけるように靴底で地面を強く踏む。カンーッと鳴るこの地面の音も、外にはない物だ。一見石畳に見えるのに遥かに滑らかで歩き易い塗装された地面。円形に敷き詰められた模様の外には、迎えが来ないと出れない。
    小さい頃は格好良いと憧れたカローンが囲む中でジュナはもどかしく首輪を引っ張った。魔法力の乏しい両親から生まれたジュナはなぜか豊富な魔力を持っていた。ヒューマン種の保持魔力は年齢と共に増加する傾向がある。両親がせめてプライマリーまでは、と偉い人に掛け合ってくて、ジュナは小学校に上がるまでは両親のもとで暮らす事が出来た。だが、この海底の島は、魔法力を持つ人は住めないのだ。ジュナは泣き喚きながら全寮制の名門プライマリーに送り込まれ、こうして偶にしか帰郷できない。里帰りの度に付けられる魔力制御装置の首輪を窮屈に感じたのも、島の外に出たからだ。
    1956

    小月 輝

    DONEガーデンバース忘羨のタグで花の日のお祭りに参加した時のお話
    花を編む起きた時に感じるのは満たされた幸福感だった。
    ぬるま湯に浸るような心地よい寝床で目を覚まして、一番に目に入るのが美しい夫の寝顔である事にも慣れてしまう程の時間が過ぎた。ゆっくりと藍忘機に体重をかけないように起き上がり、くわりと大きく欠伸をする。半蔀から差し込む光はまだぼやけていて、明朝というにも早い時間に魏無羨が毎日起きているだなんて、この世でただ一人を除いて誰も信じないだろう。藍家の家規で定められている卯の刻起床よりも早い、まだ草木も鳥も寝静まっている時間だ。もちろん時間に正確な魏無羨の美人な夫もまだ寝ている。
    毎晩あんなに激しく魏無羨を苛んでいるとは思えない静謐な寝顔に、思わず頬が緩むのをおっといけないと押さえて、だらしなく寝崩した衣を更に肌蹴る。魏無羨は美しい夫の顔を何刻でも見ていられたが、今はそれよりもすべき事があるのだ。腕や胸、内腿まで、体のあちこちに咲いている花を摘んでいく。紅梅、蝋梅、山茶花、寒椿に芍薬、色とりどりに咲き乱れる花々は魏無羨が花生みである証であると同時に、昨晩藍忘機にたっぷりと水やりをされた証でもある。栄養過多になると、魏無羨の体は花を咲かせる事で消費するのだ。だから、毎朝、一つずつ丁寧に摘んでいく。
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