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    小月 輝

    @ODUKI547

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    POIPOI 12

    小月 輝

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    ガーデンバース忘羨のタグで花の日のお祭りに参加した時のお話

    #忘羨
    WangXian
    #ガーデンバース
    gardenBerth

    花を編む起きた時に感じるのは満たされた幸福感だった。
    ぬるま湯に浸るような心地よい寝床で目を覚まして、一番に目に入るのが美しい夫の寝顔である事にも慣れてしまう程の時間が過ぎた。ゆっくりと藍忘機に体重をかけないように起き上がり、くわりと大きく欠伸をする。半蔀から差し込む光はまだぼやけていて、明朝というにも早い時間に魏無羨が毎日起きているだなんて、この世でただ一人を除いて誰も信じないだろう。藍家の家規で定められている卯の刻起床よりも早い、まだ草木も鳥も寝静まっている時間だ。もちろん時間に正確な魏無羨の美人な夫もまだ寝ている。
    毎晩あんなに激しく魏無羨を苛んでいるとは思えない静謐な寝顔に、思わず頬が緩むのをおっといけないと押さえて、だらしなく寝崩した衣を更に肌蹴る。魏無羨は美しい夫の顔を何刻でも見ていられたが、今はそれよりもすべき事があるのだ。腕や胸、内腿まで、体のあちこちに咲いている花を摘んでいく。紅梅、蝋梅、山茶花、寒椿に芍薬、色とりどりに咲き乱れる花々は魏無羨が花生みである証であると同時に、昨晩藍忘機にたっぷりと水やりをされた証でもある。栄養過多になると、魏無羨の体は花を咲かせる事で消費するのだ。だから、毎朝、一つずつ丁寧に摘んでいく。
    ふんわりと鼻をくすぐる香気は、花生みである魏無羨にはただの良い香りだけれど、花食みである藍忘機にはとんでもなく芳しく飢餓感を覚えさせる香りなのだという。欠伸を一つこぼし、乱れた髪を肩に流して、魏無羨は花を編んでいく。せっせと身体で咲き乱れる花を引き抜いて、茎を編み合わせ、蔓をしならせ、色とりどりに編み込んで行く。
    片膝を立てて、未だに涙が滲む目を細めて、それでも手つきに淀みはない。
    あっという間に出来上がっていく花冠に、最後の花を編み込む。徐々に明るくなっていく半蔀からの光が、滑らかな頬の輪郭を浮かび上がらせた。
    遠くでゴーンと鐘が鳴る。卯の刻だ。
    時間ぴったりにパチリと目を開けた藍湛の上に、出来上がった花冠を落とす。
    「魏嬰……」
    「おはよう、藍湛。夫の朝食を用意するなんて、何て俺は出来た夫だろう!」
    片肘ついて、太ももの付け根まで肌蹴た内衣もそのままに、太陽の眩しさを纏った笑顔で覗き込む魏無羨を藍忘機は見開いた目で数拍見つめて、花も恥じらう笑みを浮かべた。
    「おはよう、魏嬰」
    重力を感じさせない動作で上半身を起こした藍忘機は、胸に落ちて来た花冠を片手で拾い、もう片袖で魏無羨を囲い込む。
    「身体が冷えている」
    氷雪の様な見た目に反して藍湛の身体は体温が高く、布団から出たばかりで暖かい空気をまとっている。
    「ん、温めてくれる?」
    「うん」
    魏無羨を囲む暖かな空気にブルリと身体を震わせて、魏無羨は世界で一番安心できる腕の中で力を抜いた。全力で脱力しきって凭れかかってくる魏無羨に、藍忘機は嬉しそうに瞳を揺らす。
    はふっと吐く息まで色づいているような空気の中、うっすら頬を染めた魏無羨は本来の目的を忘れてはいなかった。
    「さぁ、俺の可愛い老公(旦那様)。早く俺の用意した朝ごはんを食べてくれ!」
    「……」
    いつもなら嗯と、魏無羨が渡す花よりも麗しい顔に笑みを浮かべてその小さな口で花冠を丁寧に食べるのに、今日の藍忘機は何かをためらうように口を開かない。こういう時、彼には何か言い淀むような願望があるのだ。それも、恥知らずな部類の。
    「ん? なんだ、なんだ? 俺の可愛い白菜ちゃんは何をして欲しいんだ? ほら、藍湛、藍忘機、藍兄ちゃん? 俺に言えよ」
    ぐりぐりと胸元を指先でいじりながら上目遣いに見上げた秀麗な顔は、耳たぶが赤くなっている。
    「藍湛は俺には何をしたって良いんだぞ? ほら、言ってみろよ。藍兄ちゃん、なんだってしてやるぞ!」
    いつまで経っても治らない魏無羨の悪癖に嗯と頷いた藍忘機はそっと、魏無羨が自身のために生み出した花冠を彼の頭に乗せた。
    「……食べさせてくれる?」
    「なぁんだ! そんな事か、この魏兄ちゃんに任せろ!」
    腕の中で微笑む幸福に嗯と頷いて、藍忘機は品よく口を開いた。
    「魏嬰を、食べさせて」
    細い指先が唇まで持って来てくれる甘い花を食みながら、不埒は手は肉付きの良い魏無羨の尻を揉みしだいていた。
    「んぁ、こら、藍兄ちゃん。朝から恥知らずだぞ」
    咎める声の甘さは到底、藍忘機を制止するものではなかった。
    「君には何をしても良いと、魏嬰、君が言った」
    「確かに言ったさ! でも藍湛、今日は勤めがあるんじゃないのか⁉︎」
    「今日は休みだ。君は本当に忘れっぽい」
    「んぁ、……ぁっ、悪かったよ! もう。ほら、お口を開けて」
    ぎゅむっと力の入った手にびくんと背筋をしならせて、魏無羨は頭上の花を手に取る。既に頬は染まり、口はだらしなく緩んでいた。ちっとも嫌がる素振りもなく、魏無羨は藍忘機の腕の中で艶やかに咲く。
    「ほら、どっちの羨羨も美味しく食べてくれよ、藍湛」
    「もちろん」
    降ってくる口づけに目を細めて、齎される快感に溺れる。
    きっと明日の朝も、魏無羨は花を編む。
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    小月 輝

    DONEインク屋小話④ジャミル
    モブランド4開催中に間に合ったー!
    ジャミル、インクを買い行く。
    柘榴の涙ジャミルのインク瓶は特別製だ。
    画一的な四角いガラス瓶とは違う、ころんと丸い形もさることながら、陽光に様々に煌めく色ガラスの鮮やかさが一際目を惹く。
    特に鮮やかな赤色の模様が気に入っているが、何よりも素晴らしいと思うのはその機能性だった。一見そうとは見えないように刻まされた魔法陣はジャミルのマジカルペンと呼応し、自動的にマジカルペン内にインクを補充してくれる。
    マジカルペンを介して魔法を使うため、マジカルペンへのインク補充は必然的に手作業になりがちな魔法士には嬉しい機能だった。ジャミルはカリムの元で、いくらでも美しく貴重なガラス細工を見た事があったけれど、この自分のインク瓶が一等美しいと思っていた。賢者の島内部であれば、どこにいてもインクを補充出来る売り文句に誤りはなく、おかげでジャミルはインク壺を持ち歩く事から解放された。自室のランプ下に置いてあるインク瓶の輝きが強い事に気づいて、ジャミルは予習の手を止めた。買って以来机の上から動かしていないガラス瓶は、インクの残量によって光の反射率が変わる。キュポッと蓋を外せば、思った通り底に僅かにインクが残るのみだった。
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    はるもん🌸

    MOURNING弟子達をつれて読狩りの指導に出ていた魏無羨。やっと姑蘇へ戻ってきた彼を藍忘機は見つめていた。
    すぐにでも話したかったが、魏無羨は何やら弟子達に何かを指導しているようだった。
    魏無羨を見ていると、喜怒哀楽がふつふつ湧き出てくる。これまで自分が嘘のように溶けていくのを感じた。
    しばらく眺めていると、藍忘機にの視線に気づいたのか急いで彼は来てくれた。
    喜怒哀楽はない方が生きやすい楽しい事があればその分落ち込んだ時の落差が激しい。
    常に心を静かに保つには、無駄な事は考えず、むやみに物事を口にしない事が原則。

    これが、含光君が生きてきた中で学んだ教訓である。

    回廊で藍忘機は足を止めた。
    遠目から、一点を見つめる。夜狩から帰ったばかりなのか、多少汚れた衣服の弟子達と魏無羨がいた。先頭にいた魏無羨は後ろを振り向き、子ども達に先に着替えて身を綺麗にしてから指定した部屋に来るようにと指示をする。

    皆が去ったのを確認した彼はくるりと身を翻し、藍忘機の所へ向かって走り、飛んだ。スタッ、と華麗にちょうど藍忘機の目の前に着地した彼は、ツイと人差し指で含光君のあごをなぞる。

    「そんなに熱い視線を投げられると、いたずらしたくなるな」
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