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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    31日間で宿虎になるSS
    三日目
    伊地知さんが見た二人

    私は一度、選択を誤って見殺しにしてしまった。
    だから、今度は選択を誤る事はしないと誓っていた。
    そして、私はまた選択を迫られている。
    選択肢は一つしかないのに、私はその選択を戸惑っていた。
    話に聞いていた彼と目の前に居る彼は、あまりにも掛け離れていたからだ。

    【三日目:伊地知視点】

    虎杖君一人でも、任せられる任務である事は五条さんも確認をしていた。
    勿論私も適正であるか裏を取っていたし、何も問題は無かった筈だった。
    「いた、どりくん?」
    帳を降ろして、虎杖君の帰還を待っていた時だった。
    帳が上がるのを合図に、中に居る虎杖君に声を掛けようとして喉が詰まっていく。
    息苦しさを感じる程の禍々しい呪力に、吸った息が上手く吐けなくなる。
    ただ名前を呼ぶだけなのに、絞り出した声は掠れて震えていた。
    「俺が小僧に見えるか」
    ギョロっと四つの目が私を捉え、震える手で眼鏡を掛け直す。
    特に眼鏡がずれた訳でもないが、私が見ている光景を信じたくなかったのかも知れない。
    今目の前に居るのは、私の知っている虎杖君ではない。
    彼の裡に潜む、特級呪物である両面宿儺である。
    下手に刺激をすれば、帳を降ろしていないこの場はきっと見るも無惨な事に成りかねない。
    どうして、入れ替わったのか。
    帳の中で何があったのか、私には知る由も無い。
    今私がすべき事は、五条さんへ連絡をして止められないと分かっている両面宿儺を一分でも長く留めさせておく事。
    ポケットに入れたままの手で、もしもの為に開いていた五条さんの連絡先をタップする。
    「虎杖君は、どうしたんですか」
    震える体を必死に奮い起たせ、現状を少しでも把握する為に宿儺へと話し掛けた。
    次の瞬間には私は死んでいるかもしれないと思っていたが、予想に反して宿儺は何もしては来なかった。
    「何を確認したか知らんが、面倒な呪いの相手を小僧にさせたな。呪いは俺が殺しておいたから、その内小僧と入れ替わる」
    心底面倒臭そうに答えて、宿儺は車の前に立って私をじっと睨む。
    何が目的か分からないが、車の前まで宿儺から目を離さずに近付くとドアを指差された。
    「開けろ。小僧の体の一部は治してやったが、他は治してない。俺は大丈夫だが、小僧が保つか分からんぞ」
    ケヒヒと笑う宿儺に言われ、改めて体を見れば所々制服が破けていた。
    両面宿儺の言う通り、出血が酷そうな場所は治してあるが虎杖君は全体的にぼろぼろの状態だ。
    虎杖君の体の事を考えて、宿儺の前に手を伸ばして車のドアを開ける。
    「入って下さい。今から高専に戻ります」
    「始めからそうしておけ。次はない」
    私を一瞥して宿儺は、すんなりと車へと入っていった。
    足を挟まない様に慎重に扉を閉めて、運転席へと座る。
    エンジンを掛けて、車を動かしながらバックミラー越しに見える宿儺の様子を観察した。
    今は大人しいが、何時暴れるか分からない。
    爆弾を抱えたままの状態で、事故らない様に運転出来るか自問自答をする。
    答え等出ない事に、頭を悩ませていると後部座席に座った宿儺が窓に頭を寄せた。
    聞こえるか聞こえないか位の囁く声に、思わず目を見開いた。
    「どうして早く変わらなかった、悠仁……」
    徐々に虎杖君へと戻っていく中、窓に映った顔を見て宿儺は確かにそう呟いたのだ。
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