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    r__iy1105

    田中新兵衛に心を狂わされた
    禪院直哉は可愛いと思う

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    r__iy1105

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    31日間で宿虎になるSS
    4日目

    二人は殺し愛

    薄く張られた氷の上で、俺と小僧は対峙している。
    どちらかが踏み出せば、足元の氷は脆く崩れていくだろう。
    均衡を保ちながら、互いに踏み出す時を探る。
    だが今はまだ、その時ではない。
    時が来たらその時は、互いに奈落へ堕ちて逝くのだろ。

    【四日目:宿儺視点】

    代わることを拒み続けた小僧が、領域へと降ってきた。
    つまらぬ相手に、消耗戦とは阿呆の極みだなと欠伸を噛み締めて見ていた。
    そんな矢先に、傷だらけの小僧がやって来たとなれば入れ替わるのは容易いだろう。
    「さっさと代われば良いものを」
    座っていた骨から立ち上がり、小僧の元へとわざわざ俺が足を向けてやる。
    小僧の腹の下に足を入れて、引っくり返す。
    これだけしてやれば、水の中で溺れる事はないだろう。
    次に互いの縛りとして、俺と入れ替わる事を小僧に許可させる。
    俺としてはこのまま入れ替わってもいいが、今日の監督役と言う人間に小僧は懐いていた。
    「有り難く思え、殺さない事を縛りにオマエと入れ替わるのだからな」
    意識がまだ戻らない小僧を置いて、虫けらを片付ける。
    致命傷に成りそうな傷だけを反転術式で治し、帳が上がり始めた頃に歩き出す。
    小僧の体を安全な場まで動かし、体の主導権を譲ってやった。
    やっと静かになった生得領域で、目を閉じて小僧の成り行きを見守る。
    監督役の男が呪術師と何かを話しているが、言う程危険な場所ではなかった事は確かである。
    そこに俺と言う呪いさえ居なければ、あれが引き付けられる事はなかっただろう。
    小僧が起きた時に説明を求められる可能性がある事に気付き、折角追い出した小僧を呼び戻す。
    呼び起こされ掛けていた意識から、無理矢理俺の領域へと呼び出された小僧はキョロキョロと周りを見回していた。
    見慣れた風景に合点がいったのか、俺の座っている骨の山を見上げる。
    「え、また俺こっちに来たの?」
    「説明させられるのが面倒だから、オマエを呼んだだけだ」
    「説明って、何の」
    小僧はまだ外の状況を把握しきれていないらしく、首を傾げて考え込んでいた。
    「オマエが、あの虫けらに良いようにされている所を俺が交代してやった事だな。主に」
    「は?交代したって、伊地知さんに何したんだよ」
    掻い摘んだ説明をすれば、小僧は一瞬で俺に殺意を向ける。
    余程懐いているあの監督役の安否が気になったらしく、俺を睨みながら拳を握っていた。
    縛りについては、意識を飛ばしていた小僧に囁いただけで小僧自身は聞いていない。
    だからと言って、詳しく説明をしてやる義理は俺にはなかった。
    心地好く向けられる仔猫の様な殺意に、ケヒッと笑う。
    「オマエが目を覚ませば、全て分かるぞ。直ぐにでも会わせてやろうか」
    「一回、お前を殴ってから会いに行く!」
    勢い良く山を駆け上がり、俺の元へと飛んで来た小僧をひらりと交わす。
    小僧を煽る前に、もう一つ説明してやる事を忘れていた。
    一番重要な事を伝え忘れては元も子もないと、術式を一度解除する。
    術式を解除した俺に、小僧が一瞬驚くも隙だと思ったらしく俺に生意気にも蹴りを入れた。
    穏便に伝えてやろうと思ったが、やはり大人しくさせるべきかと腕を伸ばし小僧の腹を抉る。
    「っ、宿儺っ!」
    「小僧。呪術師にあの虫けらについて聞かれたら、こう答えとけ。あれは、俺に引き付けられてきたとな」
    一番伝えるべき事を伝えたから、小僧にはもう用はない。
    腹に腕を入れたまま首だけを残して、他は全て切り刻み骨の上へと落としていく。
    残った小僧の首を抱いて静かになった領域を眺めながら、そっと小僧の首を持ち上げる。
    開きっぱなしの口から溢れる血を舐め、唇を重ねた。
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