悪魔パロ 下③月明かりの無い、暗い夜だった。
何十メートルに一本立っているか立っていないかの街灯の明かりだけが頼りで、それ以外の道は暗闇その物だった。
そんな道を、グレゴールは当て所も無く歩いていた。
向かう先も無く、剣を持ち出したと言うのに目的も無く、ただ歩き続けていた。
幅の広い川に掛かった橋を渡り掛けた時、グレゴールは不意に背後を振り返った。
音も無く後ろを付いて来ていた黒い犬はギクリと足を止めた。
その仕草と紫色に光る片眼を見れば嫌でも正体が分かった。
「……何のつもりだ?」
「……はぁ……ムルソーに行けって言われたんだよ。」
犬は瞬く間にヒースクリフの姿に変わって行き、ヒースクリフはこちらへ近寄って来る事無く柱に背中を預けた。
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