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    konekonepie

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    konekonepie

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    ふたなりのにょさめ先生と彼氏のイチャイチャ

    #さめしし

    ふたにょさめ先生と彼氏 獅子神がゆったりと足を伸ばせる程度の広さを確保してある湯船は、私が入るには随分と広く感じられる。彼の真似をしてだらりと足を伸ばそうものなら、そのまま顔まで湯に浸かってしまいそうなくらいだ。
     では、そうならないようにしつつ、更に私が足を伸ばしてくつろぐにはどうしたらいいか。簡単な事だ、沈んでしまわないように底を上げてしまえばいい。——厚みも大きさもぴったりで、支えてくれるような優しい恋人そのもので。
     
    「……お前ほんと、カミングアウトしてからオレの上に乗るの好きになったよなあ……」
     そう呟く獅子神の膝の上に乗り、逞しい肩を枕にしてゆったりとくつろいでいた私は目を開けた。体が横にずれないように腕を回してくれているうえ、クッション性も申し分ないのだから愛用しても仕方がないだろう。
     洗ってさっぱりとした髪を彼の肩に擦り付け、見上げた先の顎に軽くキスをした。ん、と微かに反応を示したその白い首筋には、私が付けたキスマークや歯形が幾つも散らばっている。
    「人とスキンシップを取った経験が少ないので確証は無いが、どうやら私はあなたに触れるのが好きで堪らないらしいな」
    「そりゃまあそうだろうよ。……じゃなきゃ、休みのたびにオレの手ぇ引いてベッドまで連行しねーだろ」
    「あなたの尻の具合が良すぎるのも悪い」
    「具合良くしてんのはテメーだろうが。……ったく、本当に何でこんな事になってんだか……」
     そうやって口では文句を並べているものの、見上げた彼の表情に不満は無く、喜びに満ちている。つい一時間ほど前まで私の下でその声を裏返す勢いで喘ぎ乱れていたくせに不満などあるわけが無いだろう、と、分かってはいるものの、それでも表情で見えると安心する部分もあるのは確かだ。
     彼と恋人になって、己の体の事を伝えられて、世間一般と違う形ではあるものの肌を重ねるに至ることが出来た。——異常としか言いようの無い体をした、痩せっぽちの気難しい女。それが私であり、それ自体を嫌だとは今まで思っていなかった。
     けれど獅子神に拒まれるのは今まで生きてきた中でも指折りに嫌だと思える事であって、こうして受け入れられて、抱きしめられて、愛して愛される事が何よりも幸せで、嬉しい。
     彼と恋人になってからうっすらと肉がつき始めた腹に回っている太い腕を撫でて、獅子神、と彼を呼ぶ。うん?と不思議そうな顔で見つめてくるその唇へ、少し体を捻って口付けた。
     まるでそうするのが当たり前になっているかのように、彼は目を閉じて私からのキスを受け入れてくれる。どこまでも優しい男だ。いっそ、愚かしく感じてしまうほどに。
    「獅子神、結婚しよう」
    「は?」
    「私と結婚しよう。一生幸せにする」
     思わず口をついて出た言葉ではあったが、本心以外の何物でも無かった。ぱちりと目を瞬かせた彼の頬に手を添えて、そのままぐるりと体の向きを反転させた。
     頬から離した手を彼の胸につけ、もう片手は脇の間を通って湯船の底に触れる。湯に浸かっていつもより血色の良くなった体を重ね合わせて、私は再び彼の薄桜色の唇にキスをした。
     最初の十数秒はきょとんとしていた彼も、すぐに今の状況を理解したらしい。お前、だとか、何で今、なんて呟いた後に深々と息を吐いて、目元に手を当てて天井を仰いだ。
    「プロポーズくらいオレからさせてくれよ……」
    「それはそれで改めてしてくれればいい。私はあなたを他の誰かに盗られまいとしただけだ」
    「今更お前以外の女に惚れる余地が何処にあるってんだよ。ついさっきまで枕にしがみついてハメ殺されかけてた彼氏だぞオレは」
    「とても可愛らしかったな。一人の夜のために今度撮っていいか」
    「ダメに決まってんだろ。……いや、台詞どう考えても逆じゃねえ?」
     軽口を交わしつつ、唇を甘噛みしてから頬や顎の先にも唇で触れていく。私の愛しい、いとしいおとこ。こんなにも在り方の美しいものは、きっとこの狂った世界の中にそうそう生まれるものではないだろう。
     だからこそ私は彼を絶対に手放したくなく、逃してやるつもりも無い。私の体の事を知ったあの日が、彼の唯一にして最後の逃げ道だったのだ。
    「私はあなたを絶対に手放さない。私の隣にいるのはあなたでなくては嫌だ」
    「……そりゃあ、オレだってお前がいいに決まってんだろ」
    「ならば決まりだ。獅子神礼と村雨敬一、どちらが良い」
    「その話する前にオレからのプロポーズもさせてくれよ。……ちゃんと準備して、指輪も渡すから」
     赤く染まった頬は湯のせいか、それとも気恥ずかしさからか。どちらにしても私の心を喜ばせるその表情に、私はにっこりと唇で弧を描いた。愛しい相手に応えられる、と言うのは本当に喜ばしい。——それが血の繋がった家族やそれ同然に生きた存在ではなく、巡り合う事が無ければ本来は他人であった筈の相手なら、尚のこと。
     胸に込み上げてくるものを確かに感じながら、私は彼にぴたりと寄り添って目を伏せる。美しく、優しく、気高く——そして少しの寂しさを織って作られている、私の愛する人。その心と体の中に収まっている臓腑が、何にも侵される事なく在り続けてほしいと私はただ願っている。
    「おら、そろそろ出るぞ。血色良くなるのは良いけどのぼせちまうからな」
     軽く私の背をたたいて彼が言う。ゆっくりと浸かるのを目的とした湯温ではあったものの、だからと言って過度な長湯は体に良くないだろう。
     それもそうだと納得し、体を起こす前にもう一度彼の唇を奪う。今度は重ねるだけでなく、にる、と押し付けた舌を唇の隙間に割り込ませ、そのまま彼の口の中へと滑り込ませた。
     ん、と、触れた体が震え、一瞬躊躇したように舌先が止まったものの、そろりと此方へ差し出される。その舌と自分の舌を擦り合わせるようにして絡め、漏れる音も何もかも構わずに角度を変えて口付けを深めていった。
     広い浴室の中に音が響く。腰にまわっていた彼の腕は暫く所在無さげに動いていたものの、ベッドの上でそうするように背中に回った。小さく漏れる喘ぎ声が反響するのを耳で受け止めながら丹念に舌や口内を蹂躙し——ぱ、と突然に解放する。
    「ぇ、あ……っ?」
     ぽかん、と間の抜けた顔で此方を見上げてきた彼の頭を撫でてやり、どちらのものかも分からない唾液で濡れた唇に軽いキスをする。『そういうキス』をしたから、きっと彼の体は素直に反応してしまったのだろう。
     敢えて彼の体に再び火を灯しつつ、何も知らないふりをして私は彼の体に跨るようにして座った。今まで何度も見た私の姿だろう、とでも言うかのように。
     背中からずり落ちた彼の大きな手が、行き場を無くしたかのように弱々しく私の太腿に触れた。その手の甲を包むように手を添えて、私は柔らかく微笑みかける。
    「寝る前にもう一回。……悪くない話だろう?」
     問いかけた先の表情が一気に期待と羞恥に満たされたのを見て、私は満足しながら立ち上がった。上がり湯にとシャワーから湯を出し始めたところでのそりと湯船から出てきた彼の様子を見上げ、その薄赤く染まった肌にもシャワーを向けてやる。
     彼の表情にはありありと性的な期待が浮かんでいるものの股から下がっている性器には未だ反応が無く、代わりに逞しい胸筋についている慎ましやかな乳首がつん、と尖っている。それだけでも可愛らしいと言うのに、シャワーを止めるまでの間も、湯船の栓を抜く間も、二人で連れ立って出た先で彼の頭にタオルをかけてやる間もずっと彼はぎゅう、と唇を引き結んで黙っていた。
     そうして粗方水分を拭き終えたところで、本来ならこのまま着て眠る予定だった二人分の寝間着を彼は私の腕に抱えさせた。そのまま私が催促する間もなく、ひょい、と彼に抱え上げられて運ばれる。
     堪えきれず、ふふ、と笑った私の頬に、彼は無言で頭を擦り付けてくる。私から焚き付けたのだから、そう恥ずかしがらずとも良いと思うのだが。
    「本当に愛らしいな、あなたは」
     湯冷めする間もなく、事後の名残を薄く感じさせるベッドの上に下ろされる。期待を隠しもしない目を向けてくる彼の頬に手を添えて、万感の思いを込めて私はそう囁いた。
     愛しい愛しい、私のあなた。——もう、互い無くしては生きられないな、と笑いながら、私はその白い首筋に喰らいついたのだった。
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    takamura_lmw

    DONE桜流しのさめしし、もしくはししさめ。ハッピーエンドです。ほんとなんです。メリバでもないキラッキラのハピエンなんです。信じてください。

    これがずっと出力できなくてここ一ヶ月他のものをなんも書けてませんでした。桜が散る前に完成して良かったと思うことにします。次はお原稿と、にょたゆりでなれそめを書きたいです。
    桜流し 獅子神敬一が死んだ。
     四月の二日、桜が散り出す頃のことだった。



     村雨にその死を伝えたのは真経津だった。
    「——は?」
    「死んじゃったんだって。試合には勝ったのに。獅子神さんらしいよね」
     真経津は薄く微笑んで言った。「獅子神さん、死んじゃった」と告げたその時も、彼は同じ顔をしていた。
    「……いつだ」
    「今日。ボク、さっきまで銀行にいたんだ。ゲームじゃなかったんだけど、手続きで。そしたら宇佐美さんが来て教えてくれた。仲が良かったからって」
     村雨はどこかぼんやりと真経津の言葉を聞いていた。
    「あれは、……獅子神は家族がいないだろう。遺体はどうするんだ」
    「雑用係の人たちが連れて帰るって聞いたよ」
    「そうか」
    「銀行に預けてる遺言書、あるでしょ。時々更新させられる、お葬式とか相続の話とか書いたやつ。獅子神さん、あれに自分が死んだ後は雑用係の人たちにお葬式とか後片付けとか任せるって書いてたみたい。まあ銀行も、事情が分かってる人がお葬式してくれた方が安心だもんね」
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