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    araito_00

    @araito_00

    SS、落書きなど
    18↑腐/風七/七風/七風七/

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    araito_00

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    大正ロマン妄想でしんどくなったから書き殴ったハッピー甘々七風七

    「…寒い」
    「マジでソレな」

     早朝、二人はげんなりとした様子で歩く。七ツ森の家から駅までの道は、大した距離はないが日陰になっている場所が多く、殊更にそう感じる。歩くたびに霜柱がざくざくと砕かれる音は心地よく嫌いではないが、寒さを助長させる要因には違いない。

    「はぁ…」

     風真が手を擦り合わせて、そこに自身の息を吹きかける。指先がほんのりと赤く染まっていた。

    「あれ?珍しい手袋してないんだ」
    「…昨日はそんなに寒くなかったから」
    「あー…、ゴメンね。急に泊まらせちゃって」
    「いや、俺も、」
    「うん…」

     それきり二人は黙り込んでしまう。
     昨晩、さよならをするのが何だか嫌で、夕飯を一緒に、もう少しだけ話を、ほんのちょっとだけ触れ合いたい、そんな可愛らしい欲を互いに受け入れた。七ツ森の部屋で唇を重ねたその瞬間、たが外れたように求め合い、終電を逃して外堀を埋められてからようやく『もう帰れないな』と笑ったのはどっちだったか。
     七ツ森が、風真と同じように手を擦り合わせる。その指先は彼よりも赤く冷たそうに見えた。

    「お前こそ手袋したらどうだ?」
    「んー…、実はね、ポケットにホッカイロが入ってます」

     そう言って七ツ森はコートのポケットに手を突っ込んだ。あったかいなぁと態とらしく笑う。

    「お前、ずるいだろっ」

     一緒の部屋から出てきたのだから自分にも渡してくれれば良かったのに、と風真は不満げに口を尖らせた。そして、彼の定員オーバーのポケットへ無理やり手を差し込む。七ツ森の手は予想通り冷たく、温かい場所を探して指を絡めた、が。

    「っく、ふふ」
    「…嘘ついたな」
    「あったかくなったから、イイでしょ?」

     七ツ森の言う通り、冷たかった筈の互いの手は、じんわりと温かくなっていた。

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    recommended works

    むんさんは腐っている早すぎたんだ

    DONE七風リレー小説企画 第一弾ラストになります。
    お付き合いいただいた皆様ありがとうございました!!

    (なおラストはどうしても1000文字で納められなかったので主催の大槻さんにご了承いただいて文字数自由にしてもらいました💦今後もラストパートはそうなると思います)
    七風リレー小説⑥ 一度だけ響いた鐘の音に惹かれて風真は歩を進めていく。理事長の方針なのかは知らないが目的地までの道は舗装されておらず、人工的な光もない。すでに陽は沈みきってしまっているため、風真は目を慣らしつつ〈湿原の沼地〉を進んでいく。草木の茂る中ようやく着いた開けた場所にぽつんとあるそこは、予想はついていたが建物に明かりなどついておらず、宵闇にそびえる教会はいっそ畏怖さえ感じる。……大丈夫。俺は今無敵だから。そう心で唱えた後、風真は教会の扉に歩みながら辺りを見回して声を上げた。
     
    「七ツ森。いるのか?」
     
     ――返事はない。
     シン、とした静寂のみが風真を包み、パスケースを握った右手を胸に当てて風真は深くため息をついた。あれだけ響いた鐘の音も、もしかしたら幻聴だったのかもしれない。そもそもこんな闇の中、虫嫌いの七ツ森が草木を分けてこんな場所にくるはずもなかった。考えてみたらわかることなのに、やはり少し冷静さを欠いていたようだ。風真はそっと目の前の扉を引いてみる。……扉は動かない。
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