ワンライ『観察』(2022/11/16)放課後、次の演目のことで相談があると言われ、丁度自分も確認したいことがあったと断る理由もなく招待された司の部屋。
部屋に着いて早々に司は荷物を置いてベッドに座り、隣をトントンと叩いた。
意図は分からないが無言のままじっと目を見つめてくるので誘われたとおりに隣に座る。
すると、肩を掴まれたかと思ったらそのまま横にされる。これはつまり、司くんの膝枕?
「…司くん?急にどうしたのかな」
「類、最近睡眠はとれているのか。隈が出来ている」
(バレてしまったか…)
確かにここ最近、次の演目に向けての演出案が溢れてしまい満足な睡眠を摂ることが出来なかった。
今朝、目に隈ができてしまっていたことに気づいたためファンデーションで誤魔化してみたのだが、どうやら司の前では効果を発揮しなかったようだ。
「よくわかったね」
「お前の顔はいつも見ているからな。その程度の誤魔化しがオレに通用すると思わないことだ」
口調や声色は厳しく聞こえるのに、優しく頭を撫でてくる手に暖かさを感じる。
そういえば、今日昼食を屋上で食べていた時妙に視線を感じたような…。
顔に違和感を感じ、その原因を探っていたのだろうか…自分が考えてきた演出案を語るのに夢中で気づくのが遅くなってしまった。
「別に今である必要はないんじゃないかい?」
「先程お前の目に気づいた時心配になってな。とにかく、お前が寝ている姿を見れないと安心できない、寝ろ」
どうやら選択権は無いらしい。
諦めてされるがままにしていると、頭を撫でる手の暖かさに少しづつ体から力が抜けていく。
「つかさくん」
「なんだ?」
「ありがとう」
「…ああ」
たまにはこんな時間も悪くない。そんな思考を最後に、意識を手放した。