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    hisoku

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    hisoku

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    作る料理がだいたい煮物系の尾形と作る料理がだいたい焼くか炒めるか揚げる系な杉元の話の「持ち寄り」の続きです
    尾語り

    #杉尾
    sugio
    #現パロ
    parodyingTheReality

    持ち寄り(続き) ぼんやり一缶を飲み切って、さて、どうしようかね、と考える。夜の部屋の中に誰かがいる気配があるのはいつ振りだろう。社会人になってからは初めてかもしれない。置きっぱなしになっていた腕時計を手に取り、九時十分過ぎか、と小さく声に出して針を読み、見るとなく台所の天井を見上げる。目を閉じて集中しても杉元の寝息は聴こえてこなくて、静かなものだ。ここからだと姿も見えない。二十二時までは寝かせてやるとして、どうしようか。寝ているとはいえ客人がいるのに、シャワーを浴びに行くのも変か。
     さてさて、と呟いて目を開くと立ち上がり、冷蔵庫のドアに手を掛け、開けて何があるか確認をする。足りそうだ。立ち上がって振り返り、タッパーに入れて冷ましていた今日作った料理を見つめる。豚肉と刻み昆布の大蒜しょうゆ煮、ほうれん草の胡麻和え、切り干し大根、人参と油揚げを入れたひじきの煮物、蓮根のきんぴら、人参と牛蒡と豚肉のきんぴら、茄子の煮浸し、水菜と油揚げの煮物。味噌味がなかったよな、確認して蓋をして積み上げて寄せると、起きたら起きたでいいか、と食材を冷蔵庫から取り出して調理を始めた。
     換気扇をつけ、汁椀で五杯分計りながら鍋に水を入れ、焜炉に据えてガス火にかけると、牛蒡を洗ってささがきにし、油揚げと人参を細い短冊に刻み、じゃが芋を剥いて適当な大きさに切り、途中、湯が沸いたのに合わせて出汁パックを放り込むと、剥いた玉葱を切り、細葱も刻み、最後に豚バラ肉を一口大に切った。出汁を作っているのとは別の鍋に、今日はサラダ油を少量注ぎ入れて、切ったばかりの野菜を炒め始め、次いで豚肉も投入して炒める。菜箸でこびり付かないよう具材を転がして、鍋の中から控えめにじゅうじゅうと豚バラ肉の焼ける音とじゃが芋が鍋肌にぶつかるごとごとという旨そうで賑やかな音がする。起きたら、起きただ。そのうち出汁が出来て、豚肉に火が通ったのを確認して鍋に移し加える。浮いてきた灰汁を取り、味噌を溶き入れて弱火でじゃがいも芋に火が通りきるのを待つ。蒟蒻もあれば入れたかったな、と思いながら、俎板や包丁を洗い、アウトドアチェアに座ってガス火の青を見つめる。腕時計も見つめる。出来たら起こそうと思った。
     じゃが芋に竹串を通して、汁の味見をする。じゃが芋はいいが、味は少し薄いか。味噌を足してもう暫く火に掛けておくことにして、その間に皿とグラスを洗ってしまい、本格的にやることがなくなって、また腕時計を見る。二十二時にはなった。鍋の火を止めてリビングに向かう。照明は、迷って付けずに杉元に近付く。蹲み込んで膝の上で頬杖をついて、敷物に頬をつけ横向きで寝ている杉元の寝顔を見つめて、こいつも疲れてたんだよな、と交わした会話を振り返る。くっきりとした二重瞼だ。気持ち良さそうに寝ているが、約束したしな、と思って声を掛けた。

    杉元、杉元。

     名前を呼んでみるが無反応で、困ったと思いながら、両膝をついて肩を揺する。

    杉元、一時間経った。

     揺すりながら話し掛けると、やっと目を開いて一瞬、ここはどこだ? というような表情をして、可笑しくて笑ってしまう。

    天井がなくなった。

    えっ。

    嘘だ、一時間経ったから起こした。

    あ、そうだった、ごめん、マジで寝てた。

    寝てたな、炬燵で寝たら風邪引くぞ。あと、涎。

    あ、うん。

    おはようさん。

    おはよ。

     涎を袖口で拭って起き上がって杉元がゆっくりと伸びをする。電気、もう点けるからな、と言ってリビングの灯りを点けた。眩しそうな目をしてそれから、炬燵やべえな、と笑うのが見えた。ふ、と笑って、ミネラルウォーターを注いだグラスを炬燵天板の上に置いてやる。

    どうする? 帰るか、呑むか。

    尾形は?

    さっき一人でもう一本飲んだ。グレフル、あるぞ。

    半分、貰おっかな、どうしようかな。

    豚汁もあるぞ。

    えっ、豚汁、豚汁食いたい。

    装ってきてやるよ。

    うわあ、豚汁か、滅茶苦茶食いたかったやつだ。

    食いたかったのなら持って帰るか。

     鍋から一人分、汁椀に装いながら話し掛け、七味要るか、と訊く。要るー、と返事がきて、運んで豚汁と一緒に目の前に置いてやる。

    要るのは、持ち帰りもか。

    え、いいの? お前の分なくなっちゃわない?

    阿保みたいに煮物があるから別に持って帰ってくれていい。明日休みだし、お前ん家の鍋に移して、鍋さえ返してくれば。

    え、じゃあ、貰おう、かな。ああ、豚汁いい匂い。いただきます。

     七味をかけ手を合わせて杉元が箸を持ち、汁椀を抱えて豚汁を食べ始める。一口啜るごとに、はあ、旨え、癒される、と云って食べる姿を見て作って良かったと思った。

    お前は食わねえの?

    サワーで腹ちゃぷちゃぷになったから。朝に食う。で、残りはお前が持って帰って食え。

    滅茶苦茶嬉しいけど、マジで貰っていいの?

    貰っていい。今日、愉しかったし。

    うん。これもこの豚汁も俺の好きな味だ。

    それは良かった。

    今度は俺ん家で飯食おうよ。

    うん、お邪魔する。ああ、その時はエビフライ、食ってみたい。

    解った、任せとけ。

    やったな。

     軽く約束を取り付けて、台所へ行き、調理スペースの隅に積み上げて置いていたタッパーを持って戻る。これも好きなのを持って帰れ、と言うと、お前の食うもんなくなっちゃうじゃん、と遠慮をされて、少し考え、牛蒡と人参と豚肉のきんぴらの入ったタッパーだけを目の前にことんと置いてやり、食パンにバター塗ってこれ載せてマヨネーズをかけて焼いて食うと飛べるんだが、と説明すると、何それ、やってみたくなるじゃん、んじゃあ、これだけ貰う、と笑って受け取ってくれた。
     押し付けの半分自己満足だと解っていても、癒されると云われたら誰だって渡したくなるもんだろう。

    エビフライの時、イカフライも食いたいな。

    オッケー、次は海鮮祭りだな。

    ん。

     杉元が親指と人差し指で丸を作って笑う。
     ふと肌寒さを感じて炬燵の奥へ足を入れると杉元の崩して伸ばしていた脚に爪先が当たってしまい、かといって男同士で急いで退けるのも変かと暫く触れさせたままにし、照れ隠しに、なあ、明日の天気、晴れるか知っているか、と訊いた。
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    Replies from the creator

    hisoku

    DOODLE過去作
    湯沸室で杉と尾がお茶を飲む話です
    前世記憶あり現パロ
    尾語り
    湯沸室 喫煙をする習慣はないので、就業中の休憩といえば緑茶だ。あるいは珈琲。それと少しの甘いものかしょっぱいものを一口頬張るのが日課で、デスクワークに根が詰まり、肩も凝りそうだったので仕事の効率が落ちる前に気分を変えようとひとり湯沸室に向かった。買い置きのドリップコーヒーを淹れるために湯を沸かそうと薬缶のことを思い、買い置きのミネラルウォーターはまだ残っていたっけと思い起こしながら廊下を行く。
     スタッフルームのあるフロアの一角、廊下奥の角の階段と廊下を挟んだ少し離れた斜向かいにトイレが、その対角線上の奥まった場所にひっそり湯沸室はあった。そこは小会議室の並びでコの字に壁と壁と窓に挟まれた造りになっていて、二畳半程の広さがあり、冷蔵庫と棚、その棚の上に電子レンジ、隣に小さな流し台があった。流し台にはガス台が二口と壁にガス給湯器が備えつけてある。どうってことはない必要最低限が備え付けられている極普通の湯沸室だが、流し台が木目調の引き出しのついた懐かしい感じのする流し台で、ばあちゃん家の台所を彷彿とさせて、そこを緑茶を飲みながら眺めているだけでも癒しを覚えた。面積の狭さも落ち着く。
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    nekoruru_haya

    DONE現パロ、ナチュラルに同棲。細かい事は気にしない方へ。
    ちょっとだけ血が出ます。
    「僕に洗わせてくれないかな!」

     真っ新な碧空みたいにキラキラした目でそう言われたら、断る事なんて出来ないよねえ。



     事の発端は僕が右手に包帯をして帰ってきたところから。まあ、手のひらをざっくり切ってしまっただけなんだけれど。それを見た松井が何故か喜々として「お風呂はどうするんだい?」って訊くから、どうしようねえ、なんて悠長に返事をしてしまった訳だ。身体はともかく、頭を洗うのは片手では不便かもと一瞬でも浮かんでしまった自分を呪う。
     その結果が冒頭の一言。
     そして今、僕は非道い目に遭っていた。

     先ずは冷水を頭から被せられた。初夏の気候とは言え冷たいには違いない。松井が温度の調節をする間中、冷水と熱湯を交互に掛けられてある意味健康になれそう。そう言う意味では健康だから必要ないんだけれども。
     漸く頭を濡らし終わっていざシャンプーな訳だけど、ここでも一悶着。
    「待って、松井。それ松井のシャンプーでしょ」
    「そうだけど」
    「僕ので洗ってよ」
    「もう手に出してしまったし、これ髪がサラサラになって」
     松井の髪ならサラサラになっても構わないし、むしろその方が良いんだけれど、僕の髪が 1626

    ゆき📚

    DONE【sngk】【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅵ
    現パロエレリです。
    試される会社員、やっぱりテンパる会社員、若さと勢い!大学生!!
    そんな感じのお話です。いい加減いちゃいちゃ書きたいと思い最後のほうちょっとだけちゅっちゅしております。
    相変わらず諸々雑な感じですが
    大丈夫、どんなものでもどんとこい!な方よかったら読んでやってください
    【ジェリーフィッシュが解ける頃】Ⅵ ゆるやかに街が暗くなれば反するように地上からそびえ建つ様々な人工物が人工的な明かりを灯していく。
     高層ビルの窓が不規則に四角く輝き、何かを宣伝するように緑と赤と青がびかびかと交代でリズムに合わせて光っているのが遠くに見える。
     リヴァイはそう言った人工的な明かりがあまり好きでは無かった。
     暗闇を照らす明るさは人間が発明した最高の科学のひとつだと思う。
     リヴァイはそんな事を考えながら空を見上げる。
     星が、見えねぇな
     心の中で呟きながら朝に見た天気予報を思い出す。今日は一日晴れ模様という事で確かに地下鉄まで歩く道すがらに見た空は小さな雲がいくつか浮かぶだけであとは青い色が広がっていた。
     そのまま夜になれば見る事ができるだろう星は
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    hisoku

    DOODLE昔書いた掌篇小説です
    杉語り、尾の寝る時の癖に気付いた話です
    両手に収まりきらない程の 同棲を始めて毎晩一緒に寝るようになって、尾形が寝ている間はいつも両手を握っていて、ぐーをしている事に気が付いた。毎晩、毎晩、時には眠る前に手を繋いでいたりすることがあっても、いざ眠りに落ちて繋いでいた手がするりと解けると同時にぐーになる。きっかり両手を握り締めていて、ぱーの手になっていた事がない。柔くもなく常にきつく握り締められていて、それに気付いてから目にする度に不思議だと思った。
     こいつは力んで寝ているのだろうか、そんな力を入れたまま寝て休めているのだろうか。夜中にトイレに起きたついでに気になって握っている手の指を開かせてみたくなった。腹這いになって尾形の手元に顔が来るように寝そべり、一本ずつ曲げている指の関節を伸ばしてやろうと指に触れる。親指は人差し指の隣につけられていたので、先ずはそれをそっと横にずらした。出来た隙間から人差し指の第一関節を優しく掴むと起こさないよう細心の注意を払いながら手のひらから離すように伸ばしてやる。開いたら、自分の手の甲の縁で押さえて中指も広げようとした時に声がした。
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