雲間やぁ、先生。
タルタリヤは声を発したつもりだった。だが、音にはならなかった。
目の前にいる鍾離は、目を細めて微笑む。如何にも神らしい、余裕ぶった笑顔だった。
「無茶をしたものだ」
タルタリヤの声は出ないのに、鍾離の声は聞こえる。それが不満だ。
すると、そんなタルタリヤの心情を読んだかのように、鍾離はまたくつくつと笑った。
「ここがどこだかわかってるか?」
見れば、当たりは薄暗く、どことなく陰鬱な空気が漂っている。遥か遠く、前方にも後方にも光が見えていて、どちらが出口なのかわからない。
ただ、ここが現世でないことは確かだ。そして、タルタリヤはこの気配を知っている。
「お前は今、生死の境を彷徨っている」
だから何?とタルタリヤは鍾離を睨んだ。
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