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    とまと

    @nyotagiyu

    特に日受、🌊受、を今は。
    女の子、NLBLGL女体化好き。
    にょたぎゆは俺が幸せにする。

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    とまと

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    美しい者は美しいままで居てほしい。その美しい顔を一ミリも狂わせたくない。唯一の方法は、剥製にすることだった。
    さねぎゆ、しのぎゆ、モブ義

    #さねぎゆ
    #しのぎゆ
    clean,FreshlyPouredBath
    #モブ義
    mobJustice

    偏食の鬼と綺麗なものが好きな人「ちょっとそこのお兄さん、永遠の美に興味はありませんか?」
    冨岡は足を止め、ゆっくりと振り返った。短い黒髪で身形の良い男が優しい顔で微笑んでいる。
    「興味ない」
    知らない男だった。話を聞く理由も無いため簡潔に返事を返すと、冨岡はそのまま背を向けようとした。
    「待って下さい!ある御方が不思議な力で永久に続く美しさを約束してくれるんですよ。貴方みたいな方は特に……そう、貴方には……」
    有無を言わせないとでも言うように男の目は冨岡に真っ直ぐ向けられていた。瞬き一つ無くジッと此方を見つめている。ある一つの言葉が気になり、冨岡は口を開いた。
    「不思議な力?」
    「そうです、本当に摩訶不思議な力なんです。気になりませんか?」
    男は前のめりになり、冨岡の方へ一歩二歩と近付いた。どこか仄暗い深淵の様な瞳が大きく見開かられている。冨岡は背筋が冷えるのを感じ、男から目を逸らした。
    「不思議な力のことについて話せ」
    鬼の可能性がある。
    「勿論です!ああ、嬉しいなあ!貴方に聞いて頂けるなんて!」
    異常なまでに喜びを表す男を冨岡は首を傾げて見ていた。冨岡はこれまで人に対して負の感情を持つ事は無かったのだが、目の前の男はどうも苦手だった。今もまだ自分から目を離さない男を少なからず気味が悪いと感じている。
    「さあさあこちらへ」
    嬉々とした男の手が冨岡の手を掴む。驚いて手を引こうとしたが、思いの外力が強く条件反射程度の力では振り解く事は出来なかった。手を掴まれている事で特に困る事は無いと思った冨岡は、少し窮屈な手をそのままにする事にし、男の足が進む方へゆっくりと歩き出した。

    不死川の足が豪奢な襖をこれでもかと言う程蹴り飛ばした。その後ろでは、何が面白いのか大きな目を弓形にしたしのぶが床に散らばった障害物を優雅に避けながら付いて来ている。優しい微笑みとは反対に、赤く紅を塗った唇は苛立ちに震えていた。
    「もう少し大人しく出来ませんか?歩き辛いんですけど」
    「さっさと終わらせてェんだよ俺はァ!何で冨岡何か助けなきゃなんねぇんだよクソがッ」
    胡蝶は不死川のあまりに大き過ぎる怒声が鼓膜に響かないかと心配になった。彼が怒れるのも仕方が無い。冨岡の鴉が報告に来てから数日が経ち、彼からの連絡が一切途絶えたとお館様から告げられたのは昨日のこと。
    柱程の男がまるで一般隊士の様な状況に陥っている、その為集められたしのぶと不死川が共同で向うことになったのだ。以前から冨岡が姿を消した周辺で、容姿の整った人間が姿を消すと噂になっていたらしい。そこへたまたま冨岡が居合わせたようだった。散々人を見下すような態度をとっていたくせに何て無様何だと不死川は鼻で笑い、しのぶはやっぱり天然ドジっ子じゃないですかとため息を吐いた。
    そしてこの様な状況になったのである。散々馬鹿にしていた不死川は段々とその感情が激しい怒りに変わってしまったようで、あっさりと辿り着いた敵の本拠地を崩壊させるのではないかと思う程暴れながら進んだ。そして屋敷の一番奥、光の届かないその襖からは明らかに強い鬼の気配がしていた。確実に居る。不死川としのぶは目を見合わせた。もしかしたら冨岡は間に合わなかったかも知れない。だとしたら冨岡を殺せる程の鬼、上弦の可能性がある。自分達も死ぬか、せめて相打ちくらいには持ち込みたい。
    不死川は最後の襖もしっかり蹴り飛ばした。この襖みたいにどんなに強い鬼が相手でも八つ裂きにしてやる、そう思いながら。薄暗い部屋の中心に冨岡は居た。いつも纏められている黒髪は解かれ、白い寝間着を着せられている。海の様に青い瞳は閉じていて、生きているのか死んでいるのか見当もつかない。
    ぐったりとしている冨岡を、見知らぬ男が抱えていた。まるで親が子供を守る様に、震える両手で大事そうに囲っている。怯えた目で不死川を見上げ、しかしその目は直ぐに挑むような目付きに変わった。
    「か、帰りなさい!此処は貴方が来るような場所じゃない!」
    そちらの女性なら考えなくも無いですが。男の目は一時しのぶを捉えたが、今にも襲い掛かって来そうな不死川へ瞬時に戻された。不死川は獣の様に唸りながら男を睨み付けている。しのぶは嫌悪感を顕に周囲を見渡した。鬼の気配はあるのに冨岡を抱えている男は確かに人間。何より気色が悪いのは、部屋の壁一体に飾られた十数人の人間だった。
    容姿を褒められる事が日常のしのぶが感心するほど見目の良い人間達。目は開いているのに生気を感じない。その鼓動は聞こえず、ようは死んでいるのだ。綺麗な着物を着せられ、まるで人形の様に飾られている。腐敗する事もなく生前の美しさをそのままに、例えるならば動物の剥製みたいな……。
    「綺麗な人達ですね。お人形さんですか?まるで本物の人間みたい」
    「おい、胡蝶。何言ってやがる。とっととあいつぶん殴ってあの馬鹿連れ戻すぞ」
    「ちょっと大人しくしてて下さい」
    不死川の荒げた声を遮る様に、冷静なしのぶの透き通った声音が重なる。長いまつ毛に縁取られた目で男を見つめ、問い掛けの返事を待った。
    「人形じゃない、本物です。人形には表せない、こんな美しさは」
    男は怯えていた目を緩め、青白い頬を染めた。その表情はさながら何かに陶酔している様だった。
    「なるほど、みんな生きていた人達なんですね。確かにこちらのお嬢さん、髪も艶めいていて、肌も綺麗でとても死体とは思えません。きっと笑ったらもっと可愛らしいでしょうね」
    しのぶの細い指が、大きな花の髪飾りを付けた長い黒髪を撫でる。これで頬を染め、黒目がちな瞳を潤ませたなら、さぞかし花も恥らう乙女だっただろう。可哀想に。
    「貴女はおかしな事を言う」
    男は引き攣った笑みを浮かべた。その手が冨岡の髪を一本一本確かめるように優しく梳く。やがて細い束を掬い上げると、それを己の唇に寄せた。不快。しのぶの整った眉の間に深い皺ができ、不死川は我慢の限界なのか既に右手は刀の柄を握っていた。強く食いしばった歯の間から、呼吸の音が漏れている。鋭い三白眼は血走り、目の前の男を強く睨みつけていた。
    「笑ったら崩れてしまう。美しい顔が歪んでしまう。貴女も笑わない方が良い。その目や鼻や唇は、綺麗な形でそこにあるから美しいんですよ」
    男の言っている事を理解してやれる程、しのぶは寛容ではなかった。どんな人でも、心から笑えば美しいのだ。この男は自分達と根本的に何かが違う。人間である筈の男がとても恐ろしいものに思えた。
    「この人はね、ずっと無表情なんですよ。綺麗な顔でいてくれるんです。私の理想なんです、この人が。初めて見た時、衝撃でした。形の崩れない理想の美がそこに居たんですから。彼ならずっと綺麗でいてくれる」
    目眩がして、しのぶは手を額に添えた。耐えられなかったのだ。気色の悪い事をペラペラと述べるその口を縫い付けてやりたいと思う程に。
    「気色悪ィんだよクソ野郎ォ」
    ずっと黙っていた不死川が地鳴りの様な声を発した。落ち着いているようで、とてつもない激情を抑え込んだ声音だった。
    「そいつは人間だ。生きてりゃどうしたって笑うし、怒ったり泣いたりするんだよ。ずっと綺麗なままなんかあるか。確かにそいつはちっとも笑わねえしつまんねえ男だが、歳とりゃあジジイになるしシワだらけになってハゲんだよ」
    それはどうだろう、想像出来ないな。しのぶは直ぐに考えるのを止めた。お気に入りの顔が髪を失う、そうはさせない。しのぶは遠い未来を守る事を今この時に誓った。
    「そうですよ、この人は人間で生きている。生きているから老いる。この人が醜く老いる姿を黙って見ていることが私には出来ない。辛いのです、苦しいのです…だから、だから」
    冨岡を抱える腕の力が強くなる。愛しい者を抱き締める様に肩口に顔を埋め男は深く息を吸った。不死川のこめかみに浮かんだ血管は今にも破裂しそうだった。柄を握る手が強すぎる力で震えている。しのぶとて冷静では居られなかったが、隣の男の存在で何とか正常に保つことが出来た。自分まで理性を失っては元も子もない。男が顔を上げた。

    「剥製にするんです。鬼様にお願いして、中身を綺麗に掃除してもらって、そうして私が研究して生み出した技術で永遠の美を与えるんです。今まで目だけは剥製にする事が難しいとされて来ましたが、私なら出来る。この澄んだ青色を永遠にすることが出来る!」

    狂っていた。その目は焦点が合っていない。鬼の気配がどんどん近くなる。男が笑えば笑う程。屋敷が揺れ、人形達がカタカタと震えた。まるで怯えているかのように。
    「うっせェ、永遠なんかあるかァ!そいつはこれから俺が笑かすんだよっ、鬼ごと斬られたくなかったらその手を離せクソ野郎!」
    己の死が目の前に突き付けられても尚、男は冨岡を離そうとしない。恐ろしいまでの執着、まあ隣の男も似たようなものだが。しのぶは目を細め、抜刀した。唇は弧を描いている。
    「今のはちょっと良かったです」
    「ア?」
    「今回だけ、貴方に花を持たせてあげます。私が鬼を殺るので貴方は冨岡さんをお願いしますね。ああ、大丈夫ですよ。どんな敵が来ようと、お姫様を助けるヒーローは必ず勝利するんです」
    花を持たせると言いながら一切譲る気の無い満面の笑みを浮かべ、不死川の文句も聞かず、しのぶが床を蹴った。

    「鬼様ああ!お願い致します!」

    男が叫ぶ。何も無い彼の背後からぬうっと巨体が現れた。同時に、ふわりと宙に飛んだしのぶの切っ先が男の頭上を通り過ぎる。
    出遅れた不死川はそれ以上文句は言わず、狂った男から冨岡を奪い返す為全力で走り出した。

    「剥製鬼」
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