心臓が私を躍らせる
All Hallow's Eve
ドレークは以前にも、トラファルガー・ローと遭ったことがあるように、思う。辿ればかならず痛む頭、にぶい明滅のさきに棲む記憶を手繰り寄せれば、それはシャボンディ諸島での邂逅の、翌年から続く奇異のことで、あった。その頃には既にドレークは真なる任務を遂行せんと百獣海賊団への傘下入りを果たしており、真打ちの地位も獲ていたが、トラファルガー・ローが率いるハートの海賊団、黄色い潜水艇を繰る海賊団は、四皇の傘下となるでも、何処ぞと同盟を結ぶでもなく、未だ七武海でもない、最悪の世代という、畏怖の裏側に青い子供の意味が込められた名しか持っておらず、新しい海に求められる戦略の一切を有していないようにも思われた。頂上戦争からむこう、向日葵いろの船は紙面を賑わせることなく、同期と一括りにされた海賊団が———太陽の獅子を抱く海賊船を除いて———われ先にと新世界へ繰り出すなか、潜水艇は沈黙をつづけるのみであった。
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