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    bocchi_takagi

    @bocchi_takagi

    14創作と龍 文字書き

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    bocchi_takagi

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    マスターと兄さんがサバイバーで会う話。中身はない。
    ※2023/4/19 Privatterにあげてた作品。Pixivにもアップ済

    訪れた邂逅の刻「こないなとこにおったとはのう……」

     趣味だろうか、レコードがひしめいてる一角に、カウンターの奥には高級な酒瓶がずらりと並ぶ。神室町にある格式高いバーとは違う、親しみがありつつも落ち着いた雰囲気の店内にいるのはオレとマスターの二人だけ。ぽつりと呟いた言葉に相槌を打つでもなく、マスターはグラスを拭いている。
     そないなことせんでも、と断ったのに誰かさんみたいに人を引き付けるもじゃもじゃ頭のあいつに連れられて行きつけだというここにやってきたら思わぬ顔に足が止まる。メガネをかけ、髪をオールバックにしていても独特の顔の傷を見間違えるはずがない。目が合った瞬間、小さく見開いた様に見えたが気のせいだったのではと思うほど、ごく自然と手元に視線を移す。ただ、何も言うなとでもいうほどの圧がメラメラと感じるのは言うまでもない。
     オレかてそんな野暮なことはせん。聞きたいことはたっぷりあるし、問い詰めたい気持ちもある。だが、何をどこまで知ってるか知らんやつの前でペラペラと喋るほど口が軽いつもりもない。ただまあ、なんとかして人払いはしたいなと貼り付けた笑顔の裏ではそう考えていた。
     一人、また一人と店を出始め、残りわずかになったところで適当に理由を付けて二人きりになれたのはつい先ほどのことだった。

    「これでようやく話ができるっちゅーわけや」
    「……話?」
    「とぼけんなや、マスター。いや、柏木はん」

     ぎゅっと音を立たせた手は止まり、グラスが棚に置かれるとようやくマスターと真正面から対峙する。隠してるつもりかもしれへんが、ぜーんぜん隠せてへんで? にやりと笑うと何や嫌そうにため息をつかれる。感動の再会やっちゅーのになんて顔してくれてんねん。

    「まあ、ええ。んで、あんた、これからどうすもりつもりなん」
    「これ以上よくわからない話するんだったら力付くでも出ていってもらうが」
    「ほー? ちゅーことは柏木はんと戦えるってことやんな? それはそれでおもろそうやないかい」

     これ見よがしにマスターもとい柏木はんは、今度こそ深くわざとらしいほど大きなため息をつく。どうやら根負けしたらしい。いつぶりかあの気迫を味わえるのかと思ったら楽しみでたまらんかったが今回はお預けや。ま、それはそれで良しとするか。

    「全く、だんまりされても困るんやけどなぁ」
    「そっちが勝手に喋るから問題ないだろ」
    「まあな。まぁ今日のところはええわ。いろいろ聞きたいこともあったんやけど、あんたがここにおるっちゅーのがわかっただけで十分や。ほな、ごちそーさん」
    「……そうか。もう来るなよ。会計は56万円だ」
    「高すぎるやんボケェ!!」

     最後の最後に爆弾を落としおってなんやねん。顔を見れば真意の見えない仏頂面。ちいとばかしかつての頃の面影を見せてくれただけでもええとするか。また来るで、席を立って背中を向けたまま手を振る。本当にまたここに来るかどうかはわからんし、昔の顔馴染みに見られたからここを去る――ということはないやろうが、先のことは誰にもわからん。これからどうなろうが、オレはオレの血に従って動くだけや。
     ここにきて初めて空を見上げた。見慣れた神室町とは違う空がここには広がっていた。
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    bocchi_takagi

    MOURNINGnotすけべでエロい趙さん書こうと思ったんだけど難しくて頓挫した。
    すけべじゃないエロチャレンジ 誰が言ったかはもう過去のことで、大事なことは目の前にある事実だけである。横浜流氓の元総帥、趙天佑は女から見ても、男から見ても大変色気のある男だ。異人町にある中華マフィアの総帥ともなれば、おいそれと近づくことはできず、一般市民であれば闇を煮詰めたような世界と関わることすらしない。ただ偶然が重なり、彼のそばに近づいた者は口々に言うのだ、彼からとても「良い匂い」がする、と。
     一口に匂いと言っても、鼻を掠めるような香水であったり、風呂上がりの優しい石鹸の香りであったり様々だが、人々が口にするのはそれらであって、そのいずれでもない。見えないはずの匂いが時に色となって現れる。
     それを助長させているのは恐らく、彼特有の話し方が一端を担っている。気だるそうに間延びした言い回し。それでいて放たれる言葉は刃の様に鋭く、音となり首元に突き刺してくる。懐に入り込まれそうな懐っこさを見せたかと思えば、地鳴りを起こしそうなほどの低いではないのにドスの聞いた圧のある響き。彼自身、総帥という立場に対して自信なんてものはないのだが、傍目に見れば収まるべくして収まったとも言うべき器量の高さ。艶めいているように見えるのは贔屓目だろうか。
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