或る、満月の日「俺たち、なんでここにいるんだっけ…?」
「…さあなぁ」
俺たちリビングでホットウイスキーを飲んでいたはず。
でもここは小高い丘の上。
芝生の上に何故か、ソファごと座っている。
「うきき、目が覚めたか?」
「うん、ごめん。やらかしたかもしれない」
少し寒くなってきたからってソファの上で一枚のブランケットにくるまって
ホットウイスキーを飲みながら
ハイカカオのチョコレートと映画を2人で
たのしんでいて。
あー幸せだなあ。あったかいな。
ずっとこの時間が続けばいいのに
なんて思ってたはずだったんだけど。
どうやら眠くなってきた俺は無意識で
超能力を発動させてしまったらしい。
ふーちゃんが俺を抱き寄せてよしよしする。
俺も身体ごとふーちゃんに委ね、
満天に広がる星空を仰いだ
「ああ、満月と流星群が重なったのかな」
「何か願ったのか?」
「ずっとこの時間が続けばいいのにって、ん」
「私もそう思うよ」
「ふふ、くすぐったい」
「お?うきき甘い香りがするな」
上から優しい唇が降ってくる
ウイスキーのおかげで少し温かいそれに
少し笑みが溢れた
俺も腕を伸ばして応戦する
こんな人気ない丘にソファなんて置いて
何やってるんだと
去年買ったお揃いのマグカップは
サイドテーブルに置いて。
お互いに唇を寄せれば
月がこれでもかというくらい照らしてきた。
「うきき、歌って。」
「うん…」
優しいあの曲を口ずさむ。
月と星の間で遊ぼう、さあ手を繋いで
ーーーーーーーー♪
「ちょっと!2人とも起きて」
「…んん?サニー…?夜勤終わったの?」
「終わったよ。2人とも寝るならベッドにしな、風邪ひくよ」
「ンンン………」
気づいたら眠ってしまったようで明け方帰ってきたサニーに怒られた
「あれ…家だ」
「家だよ?あ もしかして2人飲みに行っててリビングで寝落ちしたの?」
「…そんなところ………ふぅちゃ、起きて、ベッド行こう」
「ん…?あれ、家だ…?」
「怖い怖い!寝ぼけてないで!」
「うう…ベッドつめたぁい」
「すぐあったかくなるよ」
ふぅちゃんの部屋のベッドに潜り込む
ひんやりしたシーツと寝ぼけた彼の温度差のコントラストが鮮やかすぎる
「帰ってこれててよかったぁ」
「月が呼んだのかもな、うきき歌ってーって」
「ふふ、そうかも」
もう一度顔を見合わせてキスをし
温度を分け合うように
2人でもう一度眠りに落ちた。
或る、満月の日
「月が綺麗ですね」
「めっっちゃ綺麗ですよ!」