独占欲。「珍しいじゃないか!ファルガーがこんな場所に顔を出すなんて!」
「やあヴォクシー、そんなか?」
「そんなさ。」
そもそも我だってくるつもりじゃなかった。
アメリカで大規模なパーティがあるということになり、各企業勢やストリーマー、個人勢にエンジニアなど、プラットフォームを開発する側と使う側の交流会らしい、
そんなところに喜んで行くと思うか?
我が。
今日は交流会ということで色々なクリエイターの催しものもある。
我らNIJI ENからは、マリリンを筆頭にした実力派アイドル男女混合ユニットのお披露目だ。
そう、それに参加しているのだ。我の可愛いmy boiが。
「ふぅふぅちゃん」
「うきき〜!………素敵な、ドレスだな」
「ふふ、珍しい形だよね?」
「露出が少ないのに透ける…美しい素材だ。まるで蝶の羽みたいだよ」
「似合う?」
「もちろん似合うとも。マリリンのデザインセンスはやはり素晴らしいな、…それで」
「ひゃっ」
「なんでこんなところが空いてるんだ」
ふわりとヴェールのように被さる布の下、なぜだか空いていて素肌が見える。
ちょっとエッチなような。
「ちょっと、触らないで」
「こっちも横に穴がある」
「あっ…!!!!!!!」
「んー……浮奇、その顔はみんなに見せない方がいいぞ」
「見るなよヴォクシー」
「壁になってやってるのがわからないのか?」
脇の下が空いていてスルッと胸までたどり着けてしまう。
侵入させた指が透けて見えるのもなんとも誘惑的だ
「ほら、布を一枚捲るだけで丸見えじゃないか」
「ゃ…ぁん、」
衣装とは分かっていても、こんな人が多いところでエッチな服を着て全く気が気じゃない。
ていうか出番までは普通の服でよくないか?
ネタバレじゃないかこれは。
「……ぅ」
「ファルガー、浮奇が泣きそうだ」
「…すまない」
「…メイク直してもらってくる」
「…あ」
あんな魅力的な男を誰が放っておく?
みんなちらちら見ていたし会場1美しすぎる。
みんなに素晴らしい彼を見てほしいと思う気持ちと、誰にも見せずに閉じ込めたい気持ちが渦巻く。くそ、腹が痛くなってきたな。
そして我は怒ったレディたちに浮奇接近禁止命令を出されたのだった。
プログラムは華々しく終わり我らのアイドルたちも人に囲まれている。
天女と見まごう程美しかった。
高らかに伸びる歌声、低いラップ、たおやかさを携えた骨太なダンス。
君しか見えてなかったよ
「んふ…ふふ……」
「なんだ、何が面白い」
「男の嫉妬ほど醜いものはないからな。お前の歪んだ顔が最高に愛おしくて」
ヴォクシーは大きい手で易々我の顎を掴むと頬に唇を落とす
「気色悪い!」
「かわいいね、兄弟」
「妬いてなんかいない」
「余裕もない男がか?」
「焦がれているだけだ」
手に持った赤ワインを飲み干しその場を去ろうとした。
「ふぅふぅちゃん!」
「うきき…、」
「待って、俺も帰る」
「…いや、最後までいなさい。君は仕事に関わる事なんだから」
「〜〜、パフォーマンス見ててくれた?」
「勿論。君にしか目がいかなかった」
「後で、後夜祭はスーツ着るから!一緒にいてね」
「………ああ」
きゅ、と握られた手はサイボーグなのに熱を持って。
とりあえずBARにでも行こうと思っていたのに、足取りは宿泊先のホテルに向いてしまった。
困らせたかったわけではない。
しかしあの美しい女神を見られたくなかったなんて。
いつもなら世界中に見て欲しいのに。
急に気分が沈んできてベッドへとダイブする。外着のまま倒れ込むなんて彼は怒るだろうか。
ミニバーからジンを取り出しグラスへ注いだ。
ジュニパーベリーが我を諌めてくれるようで舌にのせては香りと共に熱を飲み込む
「後夜祭だって行かなくていいだろう。」
このまま酔い潰れてしまおうか。なんて思った矢先、ドアが開いて電気が付けられた。
「ふぅちゃんただいま、戻ったよ」
ベッドに上がってきた彼もだいぶ酔っ払ってる
「よく頑張ったな、最後までいてえらいぞ」
「ふふ、えらい?」
「ああ。沢山の人と話すのは疲れただろう?えらいよ」
「もう本当に疲れた。ロゼミがめっちゃ守ってくれて助かったよ」
「さすがだな」
「さ、着替えて後夜祭行こう?」
「えー…疲れてるならこのまま休んでもいいんじゃないか」
「いい男を連れ歩くのも後夜祭の醍醐味でしょ」
浮奇がスーツケースから取り出してきたのは、お揃いかつ互いの色合いがあしらわれたネクタイ。ペアリング。ペアのピアス。
「さ、ふぅふぅちゃんネクタイ替えますよー」
「わ、あ」
サッとネクタイを解くも手がふにゃふにゃしている、全く可愛い子だ、
「貸してくれ」
「あっ…」
解いたネクタイで彼の手首をまとめて縛りシーツに縫い付ける
「後夜祭へは行こう。だが、我のそばを離れるなよ」
「……!!!!!!!!!」
お酒だけじゃなく真っ赤になった彼を見て少し安堵する。
「さっきはごめんな」
「キスしてくれたら許す」
「お安いご用だ」
しっかり腕を組み、揃いのネクタイにペアリング。
普段ならしない髪のセット。
ヒールを履いてもなお小さいmy bunny
入場早々にそれを見た目を爛々と輝かせたヴォクシーが近づいてきた。
「よかったな!もがれなくて!」
「ナニが、とは言わないがね」
「ふうん?浮奇、飽きたら私を呼んでくれ。スパイスになってあげるよ」
「wow」
「そんな日は来ない」
「3Pはいいぞ」
「それは同意」
「こら!おいアイク!この犬をどうにかしろ!」
ステージの女神は後夜祭の間中、宣言通り我の腕の中にいた。
どうだいい男だろう。
疲れた時には我を壁にして休んで。
「ふふちゃんって顔広いよね、…妬けちゃうかも」
なんて言われた日にはもう。
どうださっきまでの我。
優勝しているぞ
「そのままお返しするよ、うきき。」
「bi*ch 俺以外に恋人作ったら赦さないから」
「キスしたいのも一緒に寝たいのも君だけだよ。」
「終わったら早く帰ってお風呂はいろーね」
「ぅ!?あ、ああ…」
2人手を繋いで会場を出た。
あーあ。我ながら大人気なかった。
そもそも人を愛する経験が久しぶりすぎて忘れていた。
独占欲、嫉妬なんて忘れていた。
どんな感情も思い出させてくれるのは君だと再認識。
「なんか難しいこと考えてる?」
「いや、うききのパフォーマンスを思い出してただけだ」
「ならいいけど」