*小さな赤子
ぱちり、
鼻をくすぐる塩素の匂いに目を開けた。見覚えのない白い天井が目に入る。
あたりを見渡すとここは個室のようで、俺は困惑した。
無機質な白い壁、木目調の小さな棚があって、足元に目を向けると救護室で見たことのある白い柵のついたベッドに俺は寝ているようだった。
さっきまで、何してたんだっけ。
最近はもうずっと調子が悪くて死ぬんじゃないかと思ってたけど、身体の感覚はちゃんとあるし死んだわけじゃないみたいだ。
だけどなんとなくだるくて、身体を動かしたくない。
「起きたのかい」
部屋を開けて入ってきたのは、弓弦がいたときに何度かお世話になったこの施設唯一の医者だった。
こんなふざけた施設にも、医務室はある。
だけど、ヤブ医者無資格当たり前、使い捨てのコマである俺たちを『建前上』応急初期するための施設だ。
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