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    にしな

    @P15_44C

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    にしな

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    初代ちゃん(監督生が来る前に現代からすっ飛ばされてきたオリジナル男装夢主ちゃん)と、愉快な同級生たちとのハートフル学園物語。多分。ライオン出せずに終わっちゃった、ごめんね。

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    地獄の門は閉じている④ お姫様抱っこをされてこんなにも嬉しくないものかと思う。常であれば、というか一般的な女子高生だったならば、赤面して意識を失っていたかもしれない。長身のイケメンにお姫様抱っこされようものならキャーキャー喚いて真っ赤な顔を両手で隠しただろう。残念ながら私は普通の女子高生ではないし、ここは異世界ツイステッドワンダーランドの、孤島に聳える全寮制男子校である。もう一度言おう、男子校だ。
     当たり前だが裏口入学で、しかも魔法のマの字もないやつが、間違っても女が、うっかりミスで入学していい学校ではない。そうでなくとも後ろ盾は神父様とちょっと大きい病院の熱血医師で、未知の病を治療中だなんてとんでもない設定がくっついているのに。
     入学して早々にここが男子校だとわかった。というか自分以外男しかいなかったので気付かざるを得なかったが、その時点で素直に白状していればよかったのかもしれない。実は女でして、神父様は絶壁ぺったんこの胸部と色気のイの字もない薄い体を見て勘違いし、入学を取り付けてしまったんですと。お人好しな神父の顔に負けて何も言い出せず、まあ三年間の我慢だから黙ってりゃどうにかなるかな、などと悠長に高を括っていた罰があたったのかもしれない。
     長すぎる股下のせいで抱えられた体は地上ウンメートルかと思わせる距離感にある。それもそのはず、かのオクタヴィネル副寮長はその肩書だけでなく、高身長故にものすごく目立つのだ。遠めに幾度か見掛けたことはあったけれど、まさかこの長躯の腕に抱えられる荷物になるとは思ってもみなかった。
     背中の傷のせいか、或いは失血のせいか、それとも緊張のせいか、揺れる視界は斜かかって不明瞭だ。ぐらぐら揺れる頭のせいで吐気をさえ催していたけれど、血塗れのジャケットごと問題児を抱えるジェイドに向け、更に吐瀉物を吐きかける暴挙は死んでも避けねばならない。ぐっと口の手前、舌の根まで濡らすほどの不快感と、喉までせり上がった胃液を戻して何度目かになる。嘗てない程医務室までの道のりが長かった。本当に医務室に向かっているのかさえわからない。
     ぐるぐる回る頭の中で、未だに小骨のように引っかかっているのは先のジェイドの言葉だった。お嬢さん。体を抱える長い腕が背中から肩へ、縮こまる足へと回ってしっかりがっちり捉えている。
     気が遠くなりそうな距離をのんびり歩く長躯を止める者はいなかった。授業中でも好き放題する輩ばかりのくせに、今日ばかりは全員おとなしく教室で授業を受けているらしい。なんとも間が悪い奴らだ。肝心な時にいやしない。
     どうにかしてこの男との二人きりを打破しなくてはならない。医務室に辿り着く前に何かしらの乱入を受けるか、或いは気紛れが終わって突如地面に放り出されやしないかとむしろ祈ったのだ。残念なことに真っ赤な荷物を両手に抱えたジェイドの前には誰も現れなかったし、最悪なことに医務室にも人っ子一人いなかったのである。あ、積んだなと思った。もうこれはおしまいかもしれない。
     教室に乱入した時と打って変わってジェイドは丁寧に医務室のドアを開けた。両手が塞がっているのでと長い足を延ばして隙間に爪先を引っ掛けて開き、後は捻じ込ませた太腿と肩とでぐいっとやれば事足りる。ガラガラ開け放って侵入を果たし、踵で引っ掛けてドアを閉め、そのままずんずん突き進み、管理者のいない医務室の奥、並んだベッドのひとつへとそっと私の体を下ろした。と、同時にシャッ! とカーテンで仕切りを閉ざす。文字通り真っ白になった視界の先で「それでは改めまして」ジェイドがゆっくりベッドの淵に腰を下ろした。
    「オクタヴィネル寮にて副寮長を務めております、ジェイド・リーチと申します。先ほどは名乗りもせずに大変失礼致しました。突然の暴挙となったこと、深くお詫び申し上げます」
     名乗って頂かなくとも有名人なので存じている。顔を見ただけで〝ワ、あのおっかない双子の片割れじゃん〟となる程度に、彼の顔は知れ渡っている。そうと知った上で改めてのご挨拶、というのならば腹の底が知れない。ニコニコ引いた唇を撓めて内側に蔓延る鋸歯を隠し、ジェイドは「ところでお聞きしますが」そう言って長い脚で私を跨いだ。よいしょ、なんて言わずとも、さらりと足の間に貧相な体を収めて影を振り落とす。
    「いつから我が校は共学になったのでしょうね」
    「……や、あの、勘違いです。俺、こう、パッと見細いし、勘違いされやすいだけで」
    「おや、おや、そうでしたか。それは大変失礼致しました」
     これ以上問題を起こすのはご免被る。とは言えここに来てバカ正直に〝実は女でした〟と告げたところでどうせ問題になるだろう。というか洒落にならない。
     身動いでジェイドから距離を取った。シーツと血塗れのジャケットが癒着しているから体はうまく動かないが、この化け物の足の下にいるよりマシだろうと。ドクドク煩い心臓は失血のせいであって、断じて目の前のウツボのせいじゃないと言い聞かせる。違います、違います、裏口入学だし魔力はないけど、女じゃないです、そんなわけないじゃないですか。アハハと精一杯の愛想笑いを浮かべれば、ジェイドが「でしたらこちらは」ぐいっと膝に手を掛けて左右に開いた。あっという間の暴挙、パートツーである。
     は、と僅かな呼吸の合間に膝を割られて瞬いた。ジェイドの片足がシーツを滑って股座に向け膝を寄せる。硬い骨が制服越しにぐりぐりとぶつかった。膨らみの無いズボンのあわいに、無遠慮にもぶつかって擦らせる。
    「おかしいですねえ、ひとの体は不思議なものだと陸に上がって知りましたが、雄にはここにみな男性器があるのが常だと教わったものでして」
    「…や、や、あの、その、…」
    「ああ、もしかして体内に仕舞い込んでしまっているのでしょうか。スリットか何か、出し入れできたりするような、そういう個体もいらっしゃるということでしたら、僕の勉強不足ですけれど」
     それともポムフィオーレでは去勢手術が流行っているのでしょうか、だなんてとんでもない説を唱えだしたジェイドがそら恐ろしい。尚も遠慮なしに股座をぐりぐりやりながら、落ちてきた手のひらが下腹をぐっと押さえた。大きな手のひらと指は下腹全部を覆ってしまえるほどだ。
     本能的な恐怖が上回って手を伸ばす。腹に掛かる手首を捉えて爪を立てれば「どうされましたか」白々しい問いが笑気混じりに紡がれた。
    「ご無理なさらないでください。貴方は怪我を負っていらっしゃる、それも大変な大怪我です。かなりの量の出血がございましたから、あまり無理に動かれてはお体に障りますよ」
    「……じゃあ、あの、包帯かなにか、…」
    「ええ、ええ、もちろんご用意致しますよ。そういうお約束でしたからね。ご心配せずとも、僕の話が終わってから、きちんと手当てをしますので」
     渾身の力でジャケットを引き抜いて体を起こす。破かれた制服はボロ布同然だったが、これ以上の暴挙を思うと不安が募った。ないよりマシだとは言うけれど、ジェイドが何をしでかすかしれない。血を吸ってぐっしょり重くなったジャケットを胸の前にかけ、ベッドの上を後退る。逃げ場はない。ないけれど、距離を取りたかった。
     膝を掴んでいたジェイドの手が足首を掴んだ。ぐん、と引き戻されてシーツの上を無様にのたうつ。下腹からじっとりと辿って長い指が臍を過ぎ、ジャケットを剥ぎ取って床に落とした。ボロ布越しに肌を擦った手のひらが再び下腹へくだり、ズボン越しに股座を覆う。
    「見せて頂けませんか、ここ。男同士ならば、然程恥ずかしいことでもないでしょう」
    「……普通に、嫌です」
    「もちろん貴方だけとは言いません。お望みでしたら僕もお見せします」
    「…………え、は、……ちんこを…?」
    「ええ、そうですね」
    「……や、や! い、いいです、いいです! そんな! そんなもの、ひとに見せるもんじゃないし!」
    「陸ではそうなんですね。でも僕はまだ、こちらに来て日の浅い小魚ですから、まだ陸のそういったルールには疎くて」
     どこが小魚じゃいと心の中で突っ込んでおく。口は出せないけれど、ちょっとでも去勢を張っておかなければと、変な防衛本能が働いたのかもしれなかった。この状況で冷静さを失えば文字通りの命取りになる。
     ブンブン首を振って拒否の意を示しながら、ベッドの上で出来る限り距離を取ろうと後退った。ベッドが狭いのかジェイドがデカいのか知れないが、どれだけもがいても距離がちっとも変わらないのが最悪だ。ゴンと頭をベッドヘッドにぶつけて視界が弾けた。一瞬明滅して眩み、頭が揺れる。
     腕を取られて体が浮いた。ほんの刹那の浮遊感だ。数分前にお姫様抱っこをされた時のデジャヴを感じて嫌になる。馬鹿力で肩から引っこ抜かれるかと思うほどだ。痛みに顔を顰めながら睨みつけたのも束の間、ぐるんと体がひっくり返されて、胸からベッドに落とされた。軋むベッドのスプリングが鈍い悲鳴を上げている。
     顎が枕にぶつかった。息がしにくくなって呼吸がヒュウと喉を滑る。腰と腕を押さえつける手がベッドに体を縫い付けた。
    「別の方法(ユニーク魔法)で素直になって頂いてもいいのですが、問題を起こすと少々後が面倒でして」
     今更どの口が問題だなんだと言うのか知れない。面識はないしおっかない噂しか聞かないけれど、今すぐ来てくれアーシェングロットと思わずにいれなかった。契約でもなんでもするし、カフェかなんかの手伝いだってする。馬車馬のようにここ一年くらい一生懸命奴隷になるから、頼むから来てくれと必死に願った。化け物を倒すには化け物を召喚するしかないのだ。
     とは言え今日に限らず毎日のように不幸は積み重なっているし、運もクソもない世界である。サバナクローのやつらに裏拳を食らったあたりでHPは尽きてしまった。そんな都合よく求める誰かが訪れるわけもなし、祈りも空しく「怖がらないで」さらりと首筋にジェイドの長い前髪が触れて肌が粟立つ。悪いようにはしませんから、なんてセリフをこの状況で吐く方がどうかしているのだ。信じられるか、ばかたれが。凶悪双子の片割れめ。これじゃグリズリーがウツボに変わっただけじゃないか。
     ベロンと背中の傷を濡らされて震えが走った。悪寒にも似て滲み出る脂汗が額にぐっしょり流れていく。どうにかして状況を打破しなくてはいけないのに、現状、どう頑張っても無理そうだった。
     プツプツ粟立つ鳥肌をザラリと傷ごと舐られて、ヒェ、と声が出そうになる。どうにかシーツを噛んで堪えていれば「ああ、可哀想に」憐れむ素振りの悪魔が背後でそう囁くのだ。腰から撫でて前に回った手のひらが、そうっと胸まで上がって来てシーツとの間に空気を挟む。片腕一本で持ち上げられた体が、心臓が、鷲掴まれているみたいだ。
    「………ちんこは、お見せできません…」
     観念して白旗を振る。貴方の仰る通り、膨らみのない下腹には求める男性器なぞついていないのでと、真っ青になった顔を真っ白にして、どうにかこうにか絞り出した。終わった。もうおしまいだ。何もかも擲って正直に吐露したことを既に後悔し始めている。何せあの教室で取引した時だって正気じゃなかったのだ。弱みどころか男子校にいる女だなんて玩具を、こいつが放っておくわけもないのに。
     胸部を覆う手のひらが布切れに沈んだ。ぐん、再び起こされて背中からジェイドの胸元へと体を引き寄せられる。痛みに呻けば「そうですか」ジェイドの息が耳殻に触れた。じっとりと含ませた吐息ごと、鼓膜に注いで濁る薄笑みがさぞや楽しげに唇を歪めたことか。振り返る勇気はなかった。胸から上がってきた長い指が鎖骨を過ぎて首筋を覆い、喉と顎とを捉えて顔を固定する。
    「どうかそう怯えないでください、哀れなお嬢さん。貴方の憂いはありませんよと、そうお伝えしたばかりじゃないですか」
    「…………望みはなんですか、…おもちゃがほしいだけなら、他をあたって」
    「いいえ、いいえ、そんなに僕が非道のように見えますか。お可哀想に。震えずとも大丈夫、むしゃむしゃと食べたり致しませんよ」
    「……じゃあ、何がしたいの」
    「ご質問にお答えしたいのは山々ですが、僕は貴方をお救いする際、なんと言ったか覚えておいでですか」
     それでは先に契約をと、ジェイドは喉を鳴らして薄く笑った。





    地獄の門は閉じている。
    (今、開けてやった)
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    にしな

    MOURNING初代ちゃん(監督生が来る前に現代からすっ飛ばされてきたオリジナル男装夢主ちゃん)と、愉快な同級生たちとのハートフル学園物語。多分。ウツボとライオンが出てくるはず。
    地獄の門は閉じている③ にこやかに微笑まれても、どんなに丁寧な物腰で声を掛けられても、その手を取ってはいけない。後から対価として何を要求されるか知れないから。それが例え死を目前にした危機的状況であっても、まずはよく考えることだ。
     その相手が、人魚であるなら尚更、警戒を解いてはいけない。


    ◆ ◆ ◆


     用心なさいと誰かは言った。誰だったか知らないが、確かにそう聞いた。
     慈悲の心だなんてそんなものを掲げるくせ、弱肉強食を素で行く彼らであるから、決して取引してはいけないと。同じ学年のたかが学生を相手に対し、なんて恐ろしげな肩書が出回っているものだと思った。それもまだ、入学間もない一年生を相手にだ。
     無法地帯にも等しいNRCだが各寮には一応その寮ごとの取り決めがあり、その寮ごとに掲げる座右の銘的な、指針的なものがある。その特性に見合った生徒が鏡に選ばれ、なるべくしてなるのだったか、つまりはそういうことだと暗に諭された。通常の入学とは違う手順を辿り、例外としてポムフィオーレに名を置く一人は別であるのだけど。
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