友だち.ジュンから定期的に相談をされる。仕事面は勿論、些細な悩みにも相談に乗っている。彼から相談をされる事に対しては迷惑だと思っていないし、頼られているのはむしろ嬉しい。最近は二人で外に出掛ける機会も増えた。その影響もあり、ユニットの仲間として距離も縮まった気がする。
『オレら友だちみたいですねぇ』
彼からたまに言われるその言葉には共感もしていないし否定もしていない。正直友人の定義が分からない。似た者同士で、本音を語り合えて、長い時間一緒にいても疲れない。俺とジュンは似た者同士だとは思わない。あんなに輝いて必死に上にしがみついて愛想のあるあいつと俺は釣り合わないし、全く似た者同士ではない。それにジュンは本音を語ってくれるが、俺はあいつに対してあまり本音を語らない。素が出ているとたまに指摘されてしまうことはあるが。長い時間一緒にいても疲れない。確かにあいつと一緒にいる事を不快には感じていないし、一緒にいるのは楽だ。それなら俺たちは友人なのだろうか。友人みたいだとは言われたが、あいつが俺を友人だと思っているかは分からない。聞く機会なんて無いだろう。
「…いばら〜?」
「…はい?」
「もぉ〜…何回も呼んだんですよ?」
「これは失敬!少し考え事をしていました☆」
「ったく…考え事しながらキーボード叩くって凄いですよ…」
「それで?スケジュールの合間にわざわざ事務所まで来たみたいですけど、自分に何か相談事でも?」
「いや…別に相談事とかじゃないんですけど…」
「それなら何の用ですか?自分暇じゃないんですけど。…話が長いなら珈琲でも淹れましょうか?」
「何かと言ってあんた優しいですよねぇ。いや、茨の様子を見に来ただけなんですぐ現場に戻りますよ」
「…自分の様子をですか?」
「はい。次の現場がちょうどESに近かったんで、茨何してるかな〜って思って来ちゃいました♪」
ジュンはそう言って笑みを浮かべる。
「来ちゃいましたって…スケジュールに支障は出さないでくださいよ?そもそも普通近いからって会いに来ます?」
「勿論支障は出しませんよ〜?…何でだろ……単純に会いたいって思ったからですかね?」
予想外の返答に驚いた。平然な顔をして答えたジュンを凝視すると、不思議そうな顔をして俺を見つめてくる。
「は…?…自分はジュンの友人か何かですか」
「…え?友だちじゃないんですか?」
「…え?」
友だち?俺とジュンが?彼はそう思っていてくれたのか。
「…自分たち友だちだったんですか…?」
「ち、違うんですか…?…もしかしてオレの思い込み…?」
「あ…いや…ジュンが自分のことを友人だと思ってくれていると思わなくて……そっか…俺たち友だちだったんですね」
嬉しいのか分からないが、自然と頬が緩んでしまった。今まで友人が欲しいと思う事なんて無かったし、自分には出来ないと思っていた。俺にとったら初めての友人だ。
「嫌…じゃないですか…?」
「…嫌ではありませんよ。…いやあ〜!自分友だちが出来るのは初めてです!これからも仲良くしてくださいね、ジュン♪」
握手を求めて手を差し出すと、嬉しそうな表情をして両手で手を握られる。
「はい!これからもよろしくお願いします♪」