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    michiru_wr110

    @michiru_wr110

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    michiru_wr110

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    mhyk 初出2022.6.
    ジュンブラ祈願で書いたネロ晶♀
    恋人同士、ベッドの中で迎えたある朝のお話

    #mhyk男女CP
    mhykMaleAndFemaleCp
    #ネロ晶♀

    取り消しの利かぬ愛(ネロ晶♀) むず痒い体温の気配に誘われ、重たい瞼を僅かに開ける。どうやら彼女は今朝も、飽くことなくしきりに俺の髪に触れているらしい。目先で鈍色が混じる水色の前髪は細い指先になぞられていて、同じ朝を迎える度にカーテンを開ける時もこんな風に優しい仕草だったなと思う。
     ネロは薄目を開けながら、柔らかなシーツと静寂に身を任せる。前髪に指を通す彼女のあどけない表情を盗み見ては、身に余る幸せを噛みしめつつ。

     本来ならばいつまでも、こうして彼女を慈しんでいたいものだが。
    「……はよ」
    「おわっ」
     頃合いを見ながら声をかける。晶は驚きに目を丸めながら、彼の前髪から指を離した。もう少し眺めていたい気もしていたけれど、今日も今日とて魔法舎に住む面々のために朝食を拵えなければならない。それに、彼女が寝ぼけ眼を見開きながら驚く様を逃さず見届けることは、ネロにとってのささやかな恋人特権のひとつとも言えた。
    「もう……びっくりするじゃないですか」
    「はは。わりー」
     ちっとも反省の色を浮かべない甘さを孕む声は、晶を赤面させるのに充分だったらしい。目を逸らしながら少し尖らせた唇が今日も愛おしいと、ネロはいつまでも言葉にすることができずにいる。
    「今日はずっと前髪触ってたのな」
    「……まあ、はい。前髪に寝癖がついていて」
    「げ。まじ?」
     慌てて額を抑えるネロに、晶はどこか名残惜しむような表情を浮かべる。
    「はい……あの、それで直らないかなって前髪触っていたのですけど」
     気まずそうに言い訳をする晶に言わせるとこうだ。
    「何と言いますか、おでこが見えるのが新鮮で、その……格好良かったと言いますか」
    「……そうか?」
    「はい」
     見てくれに変化があったからとて、だれが何の得になるのだろう。格好良いと称賛するに値する人物はもっと沢山いるはずだ。仮に魔法舎内に限定したところで、見目の麗しいヒースや人たらしな言動が様になるカイン、圧倒的な色気を纏うシャイロックなど、褒めるべき者は他にもたくさんいる。いるはずだというのに。
    「私は、ネロが良いんです」
     一方的に賢者の役目をされた彼女はそれでも、これほどまでに情けない男にまで、無防備に心を開いてしまうのだ。

    「……ほんと、見る目ないよな。あんたも」
    「そんなことありませんよ」
     衣擦れの音と共に背中に腕を回し、晶は逞しい胸板に耳を押し当てる。柔らかな質感の寝間着越しに胸の鼓動を聞いている。
    「また明日も、寝癖、直しますね」
     きっと建前なのだろう。おそらく、ネロを直視するための。
    「……賢者さんが、先に起きたら、頼むわ」
    「ふふ」
     
     俺の顔なんか、そんなに良いもんじゃないよ。
     それは掛け値などない本音ではあったが、彼女の前では口に出せそうにもなかった。たとえ愛らしい彼女に、本当は愛される資格などなかったとしても。自らの膜の内側を見せられる彼女を今更手放せるほど、適当な想いを傾けているつもりもなかったので。

     昇り始めた朝陽は少しずつ枕元に差し込んで、慌ただしい一日の始まりを告げようとしている。
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    michiru_wr110

    DONEbrmy
    弥代衣都(+皇坂+由鶴)
    捏造しかない・弥代衣都の中に眠る、過去と現在について
    image song:遠雷/Do As Infinity

    『きょう、ばいばいで。また、ママにあえるの、いつ?』
    軽やかに纏わる言霊(弥代衣都・過去捏造) 女は視線でめつけるように傘の骨をなぞり、露先から空を仰いだ。今日という日が訪れなければどれほど良かっただったろうか、と恨みがましさを込めて願ったのに。想いとは裏腹に順調に日を重ね、当たり前のような面をして今日という日を迎えてしまった。

     無機質な黒色の日傘と、切り分けられた青空。都会のように電線で空を区切ることも、抜けたように広がる空を遮るものもない。しかし前方には、隙間なく埋め尽くされた入道雲が存在感を主張している。

     女の両手は塞がっていた。
     片方の手には日傘。そしてもう片方の手には、小さな手の温もり。
     歳相応にお転婆な少女は女の腰にも満たない背丈で、時折女の手を強く引きながら田舎特有のあぜ道を元気に駆けようとする。手を離せば、一本道をためらいなく全力疾走するであろう、活発な少女。しかし女は最後の瞬間まで、この手を離すつもりはない。手を離せば最後、何もしらない無垢な少女はあっという間に目的地へとたどり着いてしまうに違いない。
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    michiru_wr110

    DONEanzr
    夏メイ(のつもり)(少し暗い)
    2023年3月20日、お彼岸の日の話。

    あの世とこの世が最も近づくというこの日にすら、青年は父の言葉を聞くことはできない。

    ※一部捏造・モブ有
    あの世とこの世の狭間に(夏メイ) 三月二十日、月曜日。日曜日と祝日の合間、申し訳程度に設けられた平日に仕事以外の予定があるのは幸運なことかもしれない。

     朝方の電車はがらんとしていて、下りの電車であることを差し引いても明らかに人が少ない。片手に真っ黒なトートバッグ、もう片手に菊の花束を携えた青年は無人の車両に一時間程度揺られた後、ある駅名に反応した青年は重い腰を上げた。目的の場所は、最寄り駅の改札を抜けて十分ほどを歩いた先にある。
     古き良き街並みに続く商店街の道。青年は年に数回ほど、決まって喪服を身にまとってこの地を訪れる。きびきびとした足取りの青年は、漆黒の装いに反した色素の薄い髪と肌の色を持ち、夜明けの空を彷彿とさせる澄んだ瞳は真っすぐ前だけを見据えていた。青年はこの日も背筋を伸ばし、やや早足で商店街のアーケードを通り抜けていく。さび付いたシャッターを開ける人々は腰を曲げながら、訳ありげな青年をひっそりと見送るのが恒例だ。商店街の老いた住民たちは誰ひとりとして青年に声をかけないが、誰もが孫を見守るかのような、温かな視線を向けている。
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