桜、酩酊、未必の恋。───────────────────
「ふふ、ゼノ! ゼノも飲んでっか!」
「そういう君は少々飲み過ぎじゃないかい、スタン」
「飲もうって言ったんは誰よ」
確かに誘ったのは僕だ。
今年も桜の季節だねと嬉しそうに話す旧世界・日本育ちの弟子たちの様子を見て、僕たちも是非見に行ってみないかと声をかけたのは僕だ。
どうせならお酒でも飲みながら、という提案をしたのも、確かに僕だった。
それは紛れもない事実である。
出たゴミを持ち帰るために持ってきたビニール袋には、既に3つ、空になったビールの缶が入っている。それも350mlではなく500mlのものだ。
桜の観測に適した場所を探す前、立ち寄った店で迷いなく6缶パックを手に取っていた時点で何となくそんな気はしていたが、察しが付いていたとしても今日のスタンの飲酒スピードはすごい勢いだった。
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