Q&A「大城君は″海〟と聞くと何を連想する?」
バイクから離れ、夜明けの白々とした光を浴びながら寄せては返す波打ち際を隣りあいながら、あるいは先に行き後に行きながら、桐生月夜子は隣を歩く大城翼へそう問いかけた。
「急ですね」
「前もって準備できるものなんて何もないよ。二週間かけてノートの中身を頭に入れようとも、出される問題に予想外のものの一つや二つはあるだろう?」
「それは教師によると思いますが。……桐生さんはそういうものまで楽しんでいそうですね」
「ははは。というよりは……そうだな、問題そのものよりもその問題を選んだ教師の気持ちを考えるのを楽しんでいたと言える」
小説も絵も答案も、作り手がいるのならその作り手の気持ちを一度想像してみるといい。泥を捏ねて作り手の姿形を作り、選んだ絵具で色を付けてやり、ぬかとピンを混ぜて作った脳味噌を詰めて考えられるようにしてやったそれがどう口を開くのか考えて、その空想と実際との差異を測ってやるんだ。
1945