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    oishi_mattya

    気まぐれに追加される抹茶のSS倉庫
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    oishi_mattya

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    こう→りお&しょうひか前提幸司君と光理ちゃん

    #うちうち
    familyCircle

    「俺、姐さんのこと好きだったんですよ」
     いつものように交番に顔を出した中屋敷君が、妙に吹っ切れた顔でそんなことを言った。
    「十七の時かなあ、俺ちょっとだけ今よりスレてて、俺の話をまともに聞くやつなんていないよな。って思ってたんです。……でも、姐さんは違った。俺の話聞いてくれたし、聞いたうえで叱ってくれた」
    「それが仕事だからね」
    「はい。仕事でした。でも、それは俺にとって初めてのことで、すっごい嬉しくて、……この人のことが本気で好きだなって思ったんですよ」
     ……でも、ガキだったから結局告らずに終わりにしたんですよね~。世間話をするようにそう結んだ中屋敷君に何も言えなくて「そっか」とだけ返した。
    「そういえば、中屋敷君は私のこと「唯崎さん」って呼んでたね。すぐに「唯崎姐さん」になったから忘れてたけど」
    「……だって、「ねえさん」に恋はできないじゃないですか。姐さんが鈍感で助かりましたよ。ホント」
    「鈍感……。否定はしないけど、直球で言われると傷つくな……」
    「傷ついてください。だって、俺があの時告っても姐さん断ったでしょ?」
     にこにこと笑いながら言う中屋敷君に溜め息を吐いてしまう。手を伸ばして目の前にある茶色の髪を掻き回せば、「ひゃあ」なんておどけた声が返ってくる。……うん。可愛いけど。やっぱりそれだけだ。
    「それはそうだね。今告白されても断ると思うよ。『気持ちは嬉しいけど答えることはできません』って」
    「ですよねー! でも、俺のこと姐さんが贔屓して、可愛がってくれてるのは分かってるので平気でーす!」
    「別に贔屓はしてないから……」
     いや、贔屓はしてるな。可愛い弟分って思ってるのも否定できない。……何か調子に乗りそうだから言わないけど。
    「それに、今の姐さんには聖理さんがいるので。ラブラブなの見てるの楽しいし、あの時告らなくてよかったな~と思ってますよ」
    「ちょ……! なんで今聖理の話するの!?」
    「だって楽しいですもん。指輪とか手繋いで歩いてるの見るのとか!」
    「……っ。大人をからかうのもいい加減にしなさい!」
     聖理とはまた手触りの違う髪から手を離して、軽く叩く。「暴力反対!」って声に「警察官の内情を探ろうとするからです」と返して、話題を変えた。
    「それで、なんでいきなりその話を? 世間話……って感じでもないけど」
    「……うーん、ちょっと吹っ切れたかったというか。姐さんと話がしたかったというか。……初心に還りたかったというか。……まあ、そんな感じですね」
     ほんのちょっとだけ遠い目になった中屋敷君に、少し前の彼のことを思い出した。何気なく聞いた「最近よく一緒にいる二人」の話を遮ろうとした時の彼を。あの時は純粋に友達について色々言われるのが嫌なだけだと思ったけど、そう考えると何かがおかしい気がした。……もしかして。
    「中屋敷君、……君、好きな人いるの?」
    「……」
     答えは返ってこなかった。でもいつものふざけた感じじゃなくて、大人っぽさと寂しさを滲ませた顔で中屋敷君が笑ったので、多分それが答えなんだろうなって思った。



     「姐さん」と呼ばれて顔を上げる。帰り支度をし終えた中屋敷君がスニーカーの爪先でとんとんと床を叩いていた。
    「大事にしてくださいね。その指輪のことも、聖理さんのことも。……俺、姐さんと聖理さんの結婚式楽しみにしてるので!」
    「言われなくてもそうするけど飛躍しすぎ……。……中屋敷君こそ、周りにいる人をもっと大事にしなよ? 君自身も含めてね」
    「……。大事にしてますよ! 滅茶苦茶大事にしてます!」
    「ホントに?」
    「ホントですって! 俺くらい自分勝手に生きてるやつそうそういないってくらい自由に生きてますし、巻きこんじゃった人達へのフォローもしっかりしてますから!」
     じゃあ帰りますね。また! と手を振る中屋敷君に「またね」と手を振り返して、溜め息を吐く。チェーンに下げた指輪を弄ろうとしている自分に気づいて、手を机に置き直した。
    「……なーんにも、聞けなかったなあ」
     彼が恋愛面で何かを抱えていることは引き出せたけど、深いところまで触れることはできなかった。……触れさせてくれなかった。いろんな人に心を開いているように見えて意外とそうでもない少年は、今日も話したいことだけ話してするっと逃げていってしまった。
    「中屋敷君の好きな人、か。……どんな人なんだろうな」
     「話を聞いてくれて、叱ってくれた」から私のことが好きになったのだと中屋敷君が言ってたから、彼の話を聞いてくれる人なんだろうなとは思う。そういえば、中屋敷君が前に見せてくれた写真に写ってたのは半泣きの女の子と笑顔の女の子だった。中屋敷君の反応から考えても、あの二人のどちらかが中屋敷君の好きな人なのは間違いない。
    「……大事にしなよ」
     大事にするのも大事にされるのも、どちらもすごく大切で、温かくて、優しくなれることだから。私と聖理のように、中屋敷君にも大事にしたり大事にされたりする誰かができたらいいなと思う。そういう人が出来た時、逃げないで向き合ってくれたらいいと思う。
    「……中屋敷君と好きな人が上手くいったら、ダブルデートでもしてみようかな?」
     いつの間にか聖理と仲良くなってたし、たまには彼の心霊スポット巡りに付き合うのもいいかもしれない。幽霊なんてあんまり考えたことなかったけど、生きてる人間よりは怖くないだろうし。……聖理がどうかは知らないけど。
     時期を見てさり気なく提案してみよう。と背伸びをして、私もわりと飛躍してることに気がついてちょっと笑った。……でも、まあ。中屋敷君ならなんだかんだで上手くいくような気がする。「この人が俺の彼女です!」って笑顔で彼女の手を引いてお喋りにくるような、そんな気がする。
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    MOURNING幸司君と光理ちゃん
    ゆりかご電車の後あたり
    「中屋敷君って、頭の中ぶっ飛んでるのに、案外人を放っておけないタイプだよねー」
     仲良しの刑事さん――唯崎姐さん――は俺にお茶を差し出して、疲れた顔で笑った。
    「え~、そうですか? 俺はまっとうな大学生男子ですよ~!」
    「いや、まっとうな大学生男子は心霊写真撮りに来て、不良と絡んで、警察に捕まったりしないから」
     まったく……。と溜め息を吐く唯崎姐さんにまあまあと言って、貰ったお茶を飲む。口の中を切ったからしみて痛い。
    「い……っ! ……でも、ほっとけないじゃないですか。アイツら祠壊して遊んでたんですよ? 怪奇現象に対する冒涜です。……それに、後からあの人達に天罰とかあっても怖いし」
     唯崎姐さん知ってます? 怪奇現象って魅力的ですけど、遊び半分で首突っ込むと怖い目に遭うんですよ。だから、ちゃんと敬意を持って接しなきゃいけないし、首をつっ込むならそれ相応の覚悟を持ってやらないと。
     一息にそんなことを言うと、唯崎姐さんは目を真ん丸にして、「へぇ」と呟いた。
    「いつも遊んでるだけかなーって思ってたよ。結構真面目なこと考えてたんだ」
    「うーん、最初は遊び半分だったんですけど、一回痛い目見た 981

    oishi_mattya

    MOURNINGこう→りお&しょうひか前提幸司君と光理ちゃん「俺、姐さんのこと好きだったんですよ」
     いつものように交番に顔を出した中屋敷君が、妙に吹っ切れた顔でそんなことを言った。
    「十七の時かなあ、俺ちょっとだけ今よりスレてて、俺の話をまともに聞くやつなんていないよな。って思ってたんです。……でも、姐さんは違った。俺の話聞いてくれたし、聞いたうえで叱ってくれた」
    「それが仕事だからね」
    「はい。仕事でした。でも、それは俺にとって初めてのことで、すっごい嬉しくて、……この人のことが本気で好きだなって思ったんですよ」
     ……でも、ガキだったから結局告らずに終わりにしたんですよね~。世間話をするようにそう結んだ中屋敷君に何も言えなくて「そっか」とだけ返した。
    「そういえば、中屋敷君は私のこと「唯崎さん」って呼んでたね。すぐに「唯崎姐さん」になったから忘れてたけど」
    「……だって、「ねえさん」に恋はできないじゃないですか。姐さんが鈍感で助かりましたよ。ホント」
    「鈍感……。否定はしないけど、直球で言われると傷つくな……」
    「傷ついてください。だって、俺があの時告っても姐さん断ったでしょ?」
     にこにこと笑いながら言う中屋敷君に溜め息を吐いてしまう。 2389

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