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    noa_noah_noa

    アルセノの文章を時々。
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    noa_noah_noa

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    アルセノもどき謎パロ。
    なんでもありな人用。
    ※18世紀後半くらいの西欧のどこかの国っぽいイメージかもしれない
    最初と最後、そしてタイトルが言いたかっただけ。

    #アルセノ
    haino

    唯一の男。唯一の男。




    セノはいつだって淋しがりやに囲まれている。

    セノという少年について語るには、まず彼の母親について話さなければならない。

    セノの母親はこの国で3番目に大きな都市でとある娼館の5番目くらいに人気のある娼婦だった。
    異国から流れてきたという彼女は、闇に溶け込んでしまう程の漆黒の髪に太陽に焦がされた褐色の肌をしていた。この国では滅多に見かけない色と妖艶な肉体は男達の関心を誘った。一方で彼女は母国とはやや発音も文法も異なるこの国の言葉は殆ど話せず、子供程度の語彙しか持っていなかったため、異国の血を引く豊満な身体の女に似合わぬ愛らしさがあった。それもまた男達の欲を駆り立てたのだった。
    彼女は自分のことを愛してくれる男達のことが大好きだった。故郷で家族を全て失い、この国に来た彼女にとって男達は自分を求め、一晩中その大きな腕の中で包み込んでくれる貴重な存在だった。男達との夜は彼女を祖国での過去を忘れさせ、冷え切った心を温めてくれた。
    彼女のことを愛したのは男達だけではない。
    成熟した身体に似合わぬ幼気な精神をもつ彼女のことを店の女達は妹分のように可愛がり、休みの日は一人寝に泣く彼女をそっと抱きしめて一夜を過ごした。
    こうして娼館は彼女にとって名実共に生きるための場所になった。


    彼女が娼館にやってきて何年か経った頃、初めて彼女は恋をした。
    相手の男はとある地主の三男であったが、この街で貿易商を営んでおり、依頼人の付き合いで娼館を訪れていた。そこで彼は淫靡な雰囲気に見合わぬあどけない笑みを浮かべる彼女に目を奪われたのだった。
    彼女も彼女で男のきらきらと輝く白銀の髪に釘付けだった。

    男は足繁く彼女を訪ね、その度に愛を重ねた。彼女もまたそれに応えた。女が身籠るのにそう時間はかからなかった。
    男は彼女との結婚を考えていたので彼女の懐妊を喜んだが、彼の家がそれを良しとしなかった。男の父親である当主は娼館に使用人を送り、鞄いっぱいの金を娼館の主人に押し付け、男が今後娼館に来ないことと、子供のことを一切公言しないことを約束させた。いくら相続権もなく独立した息子とはいえ、家名に身元もわからぬ異国の女が名を刻むのを恥じたのだろうと後に館の主人は考えた。そして当主の言葉通り、男が姿を見せることは二度となかった。(噂によると、父の領地へ呼び出され許嫁と結婚したらしいが、これは女達による噂であって真偽はわからない。彼女がこの噂を耳にすることはついぞなかった。)
    残された女は日に日に膨れる腹を撫でてほろほろと涙を流す日々を過ごした。愛した男との愛の結晶だったはずの腹の物が岩のように重く異物としか思えなくなっていた。
    女達がいくら宥めても表情が晴れることはなく、彼女の笑顔を見ることは叶わなかった。
    やがて彼女は出産し、乳飲子を置いてたまたま居合わせた客の船乗りと共に娼館を後にした。彼女にはわずかばかりの母性が残っていたが、彼女にとって胸の奥に空いた穴を埋めるのは我が子ではなかったのだ。
    結局彼女は女としては上等であったが、母にはなれなかった。


    生まれた子供はセノと名付けられた。
    太陽に愛された褐色の肌に月光のような髪に朝焼けのように輝く瞳はたしかに彼女とあの男の子供だった。
    娼館の主人としては気立が良い男寡はこの子の行く末を案じ、娼館で育てることにした。流行病で亡くしたばかりの我が子の面影を求めていたのかもしれない。子供が使うはずであった衣服や玩具、本などを毎日のように持ってきてはセノに与えた。
    女達はというと、母親のことがあったものの、セノのことをたいそう気に入って可愛がった。ある女は故郷へ置いてきた末弟との思い出を、またある女は二度と望めぬ我が子への幻想をセノに重ねた。そんな理由がなくてもどこか作りものめいた風貌の赤子は神の御子だともてはやした。彼女達もまた何かに縋り付かなくては生きていけなかったのだ。
    そんなことは知る由もなく、セノはたくさんの女と主人に囲まれてすくすくと育っていった。

    セノは賢い子供だった。
    女達の忙しい夜に泣いて苦労をかけさせることもしなかったし、ぐずって我儘を言うこともなかった。不定期に変わる女達の名前をすぐに覚えたし、本から得た言葉もすらすら話せるようになった。けれどもセノが一言話すとその何倍もの言葉と声が返ってきたので、周囲はセノが物静かな子供だと思っていたのだが。

    セノが生まれて片手で数えきれない年月が経つと、その美貌はますます磨きがかかっていた。というのも、毎日のように女達が無造作に伸ばした髪を丁寧に櫛でとかしてやり、自分たちが商売前に使う椿油を塗ってやったり、艶やかな皮膚がぼろぼろにならぬよう香油まで塗りたくってやったりと、自分のこと以上にセノの世話を焼いていた。女達は自分たちの手で輝く幼子を見て日々の疲れを癒し、充足感を得た。そして代わる代わるセノを抱いて夢の世界へ旅立つのであった。

    この頃になると、セノは自分が置かれている環境について理解できるようになっていた。自分がいる場所は本の中で語られる「普通」の家ではないこと、毎日自分の世話を焼いてくれる女性たちが「普通」の家族ではないこと、そして鏡に映る己の姿が「普通」ではないこと。セノはこれらについて主人や女達に尋ねてみようと思ったこともあったが、彼女達にとってこれらが「普通」で「幸福」であるということがわかってしまっていたので、何も聞かなかった。時折、主人の横に座って客達を眺めていると数人が自分の顔を見て知らぬ女の名前を呟いていることも、言葉がわからないフリをして口を噤んだ。セノにはこの館は狭すぎる世界だったが、主人や女達のことは好きだったし、この館から出たとしても戸籍も身寄りもいない自分は生きていけまいと悟っていたので、ここで生活していくことに決めた。

    気づけばセノは、目尻に皺が目立つようになった主人の仕事を手伝うようになっていた。手伝うといっても隣に座って主人が愛読する新聞を読んで知識を増やすことくらいしかさせてもらえなかったが。
    女達の顔ぶれも随分変わり、セノのことを昔から知る女は彼女らのまとめ役だけになっていた。
    セノの容姿は女達の気まぐれと本人の性質のおかげでますます磨きがかかり、新しくきた女達もセノのことを「天使」だと言って変わらず可愛がった。(同年代の少年に比べて痩せぎすで小柄なセノは相変わらず女達に囲まれて寝ていた)

    客の男達もそれは同じようで、主人に掛け合ってセノと一晩過ごしたいと強請る者もいた。主人は頑なに首を縦に振らなかったが、セノは時折これに応じた。というのも客の瞳の奥に閉じ込めた悲しみの色を感じ取ったからだ。

    部屋に行くと男達はきまってセノをベッドの上に座らせ、自身は床に跪いたと思えば堰を切ったようように己についての話をした。身分も地位も高低差はあれど、彼らの話は共通してどこか懺悔のような告白めいた内容であった。セノは彼らの目を見つめてじっと聞いていた。肯定も否定もせず黙って耳を傾けていた。そして男達が満足したのを確認すると、そっと右手を彼らの頭上に乗せた。(この行為で泣いてしまう男もいた)その後は自分より一回り以上大きい男の体を抱きしめて眠った。男達は皆ゆりかごで眠る赤子のような寝顔をしていた。

    こうした生活を送って7回ほど季節が巡った頃、館に珍妙な客が現れた。
    銀灰色の頭の体躯の良い男は数名の美丈夫と共にやってきたのだが、他の青年女達を値踏みしている中、徐に鞄から取り出した本を読み始めた。そして連れがそれぞれの部屋に消えていくのを確認した後、そのまま館を後にしようとしたので、主人が慌てて引き止めた。男曰く、無理矢理連れてこられただけであって、そもそも来るつもりはなかったらしい。主人は肩を落としたが、なんとか説得してこの客を踏みとどまらせようとした。
    セノはこの様子をいつも通り黙って眺めていたが、この客が持っている本が気になって仕方がなかった。主人の愛読する新聞はゴシップが中心に書かれていたので、男の持つ学術書の類を目にするのは初めてだった。どうにか表紙に書かれているタイトルを読もうとしてじっと客を見ていると、セノの視線に気づいたらしい客がセノの方をちらりと見た。ほんの一瞬、客は目を瞬かせた後、どうにか説得を続けている主人を無視して、つかつかとセノの元へとやって来る。

    「これが気になるのか」

    客の問いかけにセノはこくりと頷いた。近くで見た男の瞳は赤と緑が綺麗に混じった色をしているのにセノは気づいた。普段の男達と違い、瞳の奥は見えなかった。

    そうか、と客は呟いた後、主人のところへ戻り、何かを話した後、セノの手を引いて、一つの部屋へと入った。
    セノをベッドに座らせて、自分もその隣に座る。そして持っていた本を開いて、本の内容をやや噛み砕いて話した。普通の娼婦であれば、このような専門的で浪漫の欠片もない話は飽きてしまっていただろうが、セノにとって外の世界を知る知識の一つであったので、客の解説にその都度疑問点をあげ、客もまたそれに答えた。

    一通り質疑応答が終わったところで、客はセノのことについて尋ねた。セノは自分が娼館で生まれ育ったことを話すと、客も自身について話し始めた。

    客の名はアルハイゼンという。
    アルハイゼンは辺境に領地を構える地主で、自身の土地で悠々自適に過ごす青年だった。どうやら定期的に行われる都市での集まりのためにこの街を訪れたらしい。人付き合いを特に必要だと考えていないアルハイゼンにとってこの集いは億劫でしかないのだが、社交界の情勢を知っておくのも自身の生活のためには致し方ないことなので渋々参加しているという。セノはどこか別の世界の出来事のように聞いていた。
    アルハイゼンはセノの瞳をじっと見つめて、君は学びは好きかと聞いた。セノは答えの代わりにここにしか居られないとだけ答えた。アルハイゼンはわかったと部屋を後にした。いくら聞かれたからといって、なんでここまで自分のことを話してしまったのかセノは自分のことなのにわからなかった。言い訳をするならばあの不思議な瞳に魅せられてしまったのかもしれない。最初は本にしか関心がなかったはずなのに可笑しな話である。

    それからというもの、アルハイゼンは定期的にセノの元を訪れた。どうやら最初の来訪で主人に色々と話をつけていたらしく、部屋に行くと毎回違う分野の本をセノに渡して概要を説明してセノに与えた。セノは次にアルハイゼンが訪問する日までにそれを読んでわからないことを聞いた。アルハイゼンは嫌な顔一つせずにそれらに答えた。おかげでセノは政治や法律など今まで触れる機会のなかった分野について見聞が広がった。
    アルハイゼンのことについても詳しくなった。彼は言語学の学者をしており、領地の管理を片手間に論文を書いたり発表された他人の論文の評論を勝手にしては新聞に投稿しているらしい。あいにくセノが毎日読む新聞に彼の名前は載っていなかったが。
    アルハイゼンとセノの関係は古代帝国時代の師弟関係のような不思議な関係になっていた。




    こうして月日は経ち、もうすぐ外は雪景色になる11月になっていた。

    「セノ」

    いつものように本の談義をし終え、アルハイゼンは帰るのだろうと考えていたセノは呼び止められ、活字に集中していた視線を彼に向けた。

    「大事な話がある」
    「大事な話?」

    そうだ、とアルハイゼンはセノの手元にある本をサイドテーブルに置いた。セノはもしかするとアルハイゼンがもうここに来られないのかもしれないと思った。
    アルハイゼンと出会ってからセノの世界は広がった。本から得られる知識はもちろんだが、アルハイゼンの豊富で幅広い知識の海に溺れることが楽しかったし、彼と意見交換をしている時に目を細めて褒めてくれることも嬉しかった。彼と過ごしていいると胸の奥がじんわりと温かくなった。それが無くなってしまうのだと思うと残念だと思ったが、元々別の世界を生きていた身だ。いつかはこんな日が来ると思っていた。
    ところが、次のアルハイゼンの一言でセノの人生は大きく変わる。

    「セノ、俺のものになってくれ」

    アルハイゼンの言葉にセノはなんと答えたのか覚えていない。けれども、主人の泣き顔と女達に頭を叩かれているアルハイゼンの姿だけはしっかりと記憶に残っていた。




    セノが娼館を去ってから更に時は経ち、娼館の顔ぶれも大きく変わった。最早セノという天使のような少年がここにいたことを知っているのは頭髪を気にし始めた主人と気弱な彼を支える後妻の二人だけになった。
    昼前に館へ一人の訪問者があった。それはセノだった。ここにいた頃より肉付きがよくなり、女達が頬擦りしていたまろい頬はややシャープで青年へ近づいていることがわかった。背丈はあまり伸びなかったのか、主人は以前とあまり変わらぬ目線の高さに少しだけ安堵した。
    セノは突然の訪問について謝罪をした後、近況について二人に伝えた。
    アルハイゼンの家へ養子として引き取られた彼は、家で教養の勉強をした後に学校へ通い始めたらしい。今は大学受験のために勉強をしているのだと瞳を輝かせて言った。二人は彼の成長に喜んだ。話が弾み、そろそろ館の中が騒がしくなる時間が近づいたので、セノは帰ることを告げた。主人と彼の妻は連れ立ってセノを送り出すと、セノが女を呼び止めた。そして彼女の耳元で何かを話している。自分には聞かせられない話なのかと主人は少しだけ妻に嫉妬した。その妻はセノの話に片眉をあげて、一度目を閉じた。そして次の瞬間大口を開けて笑ったかと思えばセノの耳元で何かごにょごにょと耳打ちをした。

    「幸せになるのよ!今以上にね!」

    女の言葉を背中に受けてセノは館を後にした。セノの耳が赤くなっていたことに気づいた主人は二人の内緒話を察した。


    実家(といっても過言ではないだろう)を後にしたセノは家に着いてアルハイゼンの待つダイニングへ足を運んだ。アルハイゼンはいつも通りお気に入りの椅子に腰掛けて読書をしていた。セノの姿を確認すると本を閉じて迎える。
    セノはアルハイゼンの膝の上に乗り上げたかと思うと彼にそっと耳打ちをした。

    —今宵、アルハイゼンはセノにとって唯一の男になる—















    恋愛において、一目惚れという言葉がある。相手を見た瞬間に己の全てを掴まれるような、自分の全てを捧げてもよいと思えるような心地だという。以前はこのような現象は美談であったり錯覚だったりと考え、反論していたが、全てを撤回する。
    恋というのに理由など必要はなく、動機も不要である。愛もまた同様である。
    結局理由が欲しいのは自分がこの欲深く味わい深い感情に溺れている状態に言い訳をしたいだけなのだ。
    (とある新聞の投稿欄より抜粋)
































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    noa_noah_noa

    CAN’T MAKE夏の初め、フォロワーさん達とマルチ中に「⚖️にキスしてほしくて溺れたフリをする🌱」の話で盛り上がり、私なりに書いてみた結果、惨敗しました。
    もし覚えていたらこっそり読んでください。もう夏が終わってしまいますが。

    ※フォロワーさんとのやり取りで出てきた台詞を引用・加筆して使用しております。

    ※水場でふざけるのは大変危険です。よいこは絶対にやらないでください。
    通り雨通り雨


     キスがほしい。
     恋人からのキスが欲しい。

     突如脳内を駆け巡った欲望は多忙の恋人と規則的な己の休暇を無断で申請させた。恋人に事後報告をすると、当然こっぴどく叱られた。けれども、その休暇を利用して稲妻旅行をしようと誘えば満更でもなさそうに首を縦に振ったので胸を撫で下ろした。まず、第一段階完了。

     稲妻までの道中、セノはいつものように気に入りのカードを見比べては新たなデッキを構築したかと思えば、『召喚王』を鞄から取り出してすっかり癖がついてしまっているページを開き、この場面の主人公の台詞がかっこいいと俺に教えてくれた。もう何百回も見ている光景だというのに瞳を爛々と輝かせる恋人はいつ見てもかわいい。手元の書物に視線を落としながら相槌を打っていると離島に着くのはあっという間だった。第二段階完了。
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    noa_noah_noa

    REHABILI理科室の恋人。(https://poipiku.com/7286563/8958806.html)と同じ世界線のお話です。モブがひたすらおしゃべりしているだけ。それでも平気な人だけどうぞ。
    とある司書の話とある司書の話


     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
    2603

    noa_noah_noa

    REHABILI赤い目の🌱が書きたくて、プロット作って放置してたら違うものになってしまった。
    リハビリ
    少しドメスティックでバイオレンス。
    文章は書き続けないと鈍る。
    green eyedだよねえ、本当は。
    あかい目のかいぶつサマあかい目のかいぶつサマ





    ※赤い目のアルハイゼンを一度でいいから書いてみたかったけれど、何だかいつも通り変なものになってしまった。何でもありな人向け。








    あ、

     振りかざされた拳に気付いたのと同時に左頬がカッと熱くなる。途端、視界も急変。
    薄暗い室内でぼんやりと浮かぶ白い天井と、ぎろりと光る赤い、瞳。

    またか、

     自身の下腹部に響く殴打音を聞きながら、己の仕事が荒事を解決することでよかったと思う。そうでなければ無意識に受け身をとることだってできなかっただろうし、急所を気付かれないように避けるなんて芸当できなかったと思うから。

    「考え事とはいいご身分だな、セノ」

     眼前の男にはバレていたらしい。赤い目がぎりりと細くなったかと思えば、両手が首元にかかる。感情に任せて絞めあげられてしまえば、ぱくぱくと口を開けることしかできなくなる。止めさせなければならないのはわかっている。自分の右手を上げかけて、止めた。
    1325

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    とある司書の話とある司書の話


     きれいな男の子がいたの。
    戦前からの歴史ある学校だから、当時の貴重な資料もたくさんあって。だから学校だけじゃ管理が不安だって、外から職員も雇っていたの。だから私もあそこで働いていたのよ。
     でも生徒さんたちはそういう古いものなんて興味がないでしょう?あのくらいの年頃の娘さんたちは図書館なんてほとんど寄り付かなくてね。授業の一環だったり、係の仕事だったり。それ以外なら自習室代わりに使う子は少しいたくらい。利用者のほとんどは一般開放日の地域住民よ。それもうんと年上のね。

     だから今でも覚えているのかもしれないわ。
    毎週火曜日と木曜日に来ていたの。一般利用ができるのがその2日だったから。毎回きっかり16時半に来てたの。チェックのネクタイに紺色のブレザーを着た男の子。あそこから自転車で20分くらいの学校の制服だったわ。え?今は駅が出来たの?あんな住宅街の中に?そこからだったら1駅の場所にある学校ね。ええ、その学校よ。中高一貫の名門校。
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    「あ、俺はリィン…って、自己紹介してる場合か!?」
    「だってランディの知り合いなんだろ?あれ、もしかして違ったか?」
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