夜明けの声 暑苦しくて鬱陶しい男だ。
勝てないくせに何度も喧嘩を売って来て、そのくせ負けたとも思わせない。
地面に伸びて空を見上げるその目が、決して折れない信念を携えていた。だから、その視線の先が何を見据えているのか、少しだけ気になってしまった。
気が付けば心を掴まれて、後戻りできない。隣に立ってみたくって、いつの間にか気を許している。だというのに、肌をひりつかせる殺意のようなものを、身にまとっている。
迂闊に触れてはならないと本能が警鐘を鳴らしていたのに――……。
その警鐘を無視して、手を伸ばしたのは結局オレだった。
「……アレ、どうすんの?」
「どうもこうもねぇだろ」
膠着する螺愚那六との抗争に、予期せぬ形で邪魔が入った。
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