ラストインタビューラストインタビュー
その日はいつもと変わらず平穏な日々が流れていくはずだった。
長いこと齧り付いていたデスクトップから顔を上げて眼鏡を外し、首を回す。長時間同じ体勢でいたため、体の至る所が軋み、悲鳴をあげる。だいぶぬるくなってしまったコーヒーに口をつけるとやっと体がゆるみ、しばらくすると眠気が襲ってきたのをまだ仕事の途中だと叱責しなんとか意識を保つ。
某世界的アーティストの長編インタビュー記事をまとめているのだが、これがなかなか大変なのだ。眉間を揉みながら、アイデアを起こそうとしていると廊下から凄まじい足音が聞こえてバンッと乱暴にドアが開いた。
オフィスにいる人はみな驚いて一斉にその音がした方に目を向ける。そこには、普段物静かな後輩が顔を真っ青にして立っていた。
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