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    mitulove_uno

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    mitulove_uno

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    30年後ロナドラWebオンリー30年後もおとなりで
    で展示していた小説です。

    ドラドラちゃんねるでいちゃいちゃしてる話です。
    ※ほぼモブ視点

    #30年後もおとなりで
    #30年後ロナドラ
    lonadoraAfter30Years

    末永くお幸せに『しょくーん!みんな大好きドラドラちゃんだ。今宵はみんなお待ちかねのあのクソゲーをプレイするぞ!』

     良い声で明るく話し始めたのは僕の推しヌーチューバーであるドラドラちゃんだ。幼い頃初めて動画を見た時はあまりの面白さに、夜中でも親に隠れてパソコンをつけて見たものだ。

    【きゃぴみが減った】
    【もう若くないんだから無理すんな】
    【クソゲー耐久動画】
    【待ってました!なにすんの?】

     畏怖民のコメントが飛び交う。僕が初めてドラドラちゃんを知った時からもう30年は経ってしまった。学生だった僕は社会人になり、そこそこいい役職についている。他に趣味がないため、ドラドラちゃんにスパチャをするために働いていると言っても過言ではない。推しに課金できる幸せは課金したものにしか味わえないのだ。

    『まだ若いわっ!こちとら238歳の若さあふれるぴちぴちっぷりだぞ』

    【人類の誰よりも年上だよ】
    【人間は誰も到達できないんよ】
    【吸血鬼から見たら俺たちバブでもないじゃん。精子?】

     ドラドラちゃんは吸血鬼なので何百年も生きている。僕の何倍も年上だ。最近ではドラドラちゃんに対して開始早々若くないと言うのが定番になっている。
     ドラドラちゃんも若くないと言われても本気で気にはしていない。昔から砂おじさんとか言われていたので、今更だ。
     でも今のドラドラちゃんに年齢を感じるのは事実だ。昔より後ろ髪が長く伸び、顔にはシワが増えている。吸血鬼は自分の外見を弄れるというので、これはきっとドラドラちゃんの隣にいる人間の影響だろうと誰もが思っている。

    『精子でいいのか君たち。まあ、そんなことは置いといて。それでは泉シリーズ15年振りの続編、泉の乙女エターナルラブ〜あなたの落とし物はなんですか?〜をやっていくぞ!』

    【待ってましたっ!】
    【えっ!?続編出たの!?】
    【きた!伝説のクソゲー!】
    【ドラドラちゃんならやってくれると信じてた!】

     前作の泉の乙女フォーエヴァーラブ〜愛と勇気の落とし物〜略していずラブは大変な盛り上がりを見せた伝説のクソゲーだ。まず、クソゲーお約束とんでもなく長いロード時間。視聴者はお菓子とお茶を大量に用意し、ドラドラちゃんとトークしながら優雅な時間を過ごしたものだ。
     ロードが終わると泉の女神が出てくるムービーが入るのだがこれが一ミリ動くごとに止まるという、カックカクの激重ムービー。じわじわ泉から出てくる女神にあれ?これ乙女ゲームじゃなくてホラーゲームだったっけと思ったものだ。
     そして攻略対象はなんと108人!主人公が三歩進むごとに攻略対象にぶち当たる。
     さらにバグにバグを重ね続け、なんとか最終エンディングにたどり着いた時には半年が経っていた。その時の感動といったらない。僕はお高いシャンパンを買ってきて畏怖民と画面越しで祝杯をあげた。
     それの新作である。もう期待しない訳がない!

    『前作ってなにと思った畏怖民は過去の配信を見てくれたまえ!見る前に必ずお菓子とお茶と強い心を用意するように!』
     
     ドラドラちゃんが表示されたいずラブを選んでボタンを押す。

    『流石だな。もうクソながロードに入ってしまった』

     スタート画面に行き着くまでのこの長さ!さすが伝説のクソゲー!畏怖民のテンションは最高潮である。

    『ではさっそくトークといこうか。スタート画面にいくまでに何十分かかるのだろうか』

    【今日が終わるのでは?】
    【前作は三十分だったっけ?】
    【よし、風呂入ってくるか】
    【今日旦那は?】

     畏怖民が言う旦那とはドラドラちゃんの結婚相手である退治人ロナルドだ。
     ドラドラちゃんとロナルドの結婚報告が上がった時は、推しが遠くに行ってしまうような悲しみと、幸せそうなドラドラちゃんの笑顔を見た喜びとで、泣きながら御祝儀のスパチャをぶち込んだのは良い思い出である。
     ドラドラちゃんがゲームをやっている時は後方旦那面見たいな姿でゲーム実況を見ているのだが。今回は姿が見えない。

    『今仕事に行っていてね。先程連絡が来たからもう帰ってくると思うぞ』
    『ただいま〜』
    『タイミングよすぎるな』
     
     赤い退治人服を身に着けたロナルドが映り込む。もういい年な筈なのにガッシリとした身体付きである。顔面は言うまでもない。イケメンは年をとってもイケメンだ。

    『ただいま。まだやってなかったのか?』
    『ん、お帰り。右下にちっちゃくロード中って出てるだろ。今10分経ったところだ』
    『まーたクソゲーやってるのか』

     ロナルドがドラドラちゃんにキスをする。何十年経ってもお帰りのキスをするのって凄いな。最初に見た時は新婚さんの家庭を覗いてる気分になって照れてしまったのだが、当たり前のように行われるのでこちらも慣れてしまった。

    【ロナルドだ、おかえり〜】
    【相変わらずのラブラブっぷり】
    【くっっそ苦いコーヒーくれ】
    【独り身に対する当てつけですか?もっとやれ】
    【ロナルド対戦ゲームやってくれ】
    【もちろんデメキンさんは出るんだろうな!】
    【いよっ!最弱王!】

    『じゃあお前らがうちのデメキンさんと戦え!』
    『ファ〜!今度第二回最弱王決定戦やろルド君!二冠したら最弱王って書いた写真額縁に入れて飾ろう!アッハハ!』
    『でりゃ!』

     ロナルドのチョップが綺麗にきまり、ドラドラちゃんは一瞬で砂になった。すぐに復活したドラドラちゃんはまだ笑いがとまらず、ロナルドとじゃれている。
     事務所メンバーで対戦ゲーム大会が開催さたれことがある。その時のロナルドVSデメキンさんの対戦がそれはもう凄かったのだ。防水加工を施した、特別なコントローラーが手に入った記念に行われた大会だったのだが、華麗な腹ビレさばきでコンボをキメるデメキンさんの姿は実に見事だった。腹ビレってあんなに素早く動かせたんだなと感動したものだ。
     かくして事務所メンバー最弱王にロナルドの名が刻まれたのだった。あれから畏怖民は尊敬の念を込めてデメキンをデメキンさんと呼んでいる。

    『で、いつ始まるんだこれは』
    『三十分経ったがまだまだ始まる気配がないな』

    【今夜は徹夜コースですね】
    【おkカフェイン摂取してくるわ】

    『まだ終わんないんだったら俺に構えよ』
    『なんだ寂しん坊か』
    『そうだよ。お前の愛しの旦那様は愛しの妻に構って貰えなくて寂しいんだよ』

    【声あっっまっ!】
    【言うようになったなロナルド】
    【子どもの成長を見た親のような気持になってるわ】
    【昔は素直に言えなかったのにね】

    『ふふん、いいだろう私が育てた男だぞ』

     ドラドラちゃんが甘い言葉を囁やこうものなら、奇声を発して跳び上がっていた人物が、今では逆にドラドラちゃんに甘い言葉を囁いている。ドラドラちゃんと過ごしている間に少しずつ変わっていったのだろう。見てきたように言ってはいるが、これはロナ戦番外編〜マリッジ〜に乗ってた内容だ。
     ドラドラちゃんに出会ってから結婚に至るまでに、どうロナルドが変わっていったのか。ドラドラちゃんにどう変えられたのか赤裸々に綴っている。
     家に帰ったらお帰りの声と温かいご飯にお風呂。掃除の行き届いた部屋に、綺麗に洗濯された服。騒いで笑い、寂しいと思う暇もない。
     ロナルドとドラドラちゃんは出会うべくして出会ったけど、運命とはまた違う気がする。お互いがお互いにいなくてもきっと生きていけるけど、いなければこんなにも笑えていなかったのではないか、なんて思うのだ。
     僕はありきたりだけど、心からの言葉を画面に打ち込んだ。

    【末永くお幸せに】


    ◇◇◇


     今日はもう甘えたルド君のせいで配信にならないからと、畏怖民に別れを告げ、機材の電源を落とした。
     結局ここまでにゲームのロードも終わらなかった。これは確実に前作以上のクソゲーになっていることだろう。

    「構ってくれるか?」
    「なんのために配信を終わらせたと思っている。構ってあげるよ」

     腰にぎゅうと抱きついてくる腕を撫で、笑いながら目尻に一つキスを落とす。50代になっても甘えん坊である。私から見ればまだまだ生まれたての若造なのだが、人間からすればもうお爺さんに近い。

    「末永くだってな」
    「ん?ああ、そうだね」

     最後に投げられたスパチャには末永くお幸せにとあった。吸血鬼に対して末永くなんてそれこそとんでもない長さになる。そうなればいいなと思うこともあるが、人間のロナルド君を愛しているし、最後までその輝きを見たい気持ちもある。

    「なあ、ドラルク」

     微妙な返事をしてしまった私に何か気づいたのか、真剣な顔をして手で優しく頬を包まれた。

    「やるよ」
    「え?」
    「人として半分しっかり生きたんだ。もう半分はお前らにやるよ。吸血鬼だって退治人できるしな」

     都合のよい夢ではないかと、戸惑ってしまった。ロナルド君の顔は変わらず真剣で、嘘や冗談を言っているように見えない。
     いいのか、君まだ50代なんだぞ。100年生きる人としては折返し地点じゃないか。こんなに早く決めてしまっていいのか。

    「50より遥かに長くなるぞ…」
    「いいよ。人間のロナルドはドラルクがしっかり覚えておいてくれよ。それだけで十分だ。次は吸血鬼として共に歩みたい」
    「ふっ、う」
    「かーわいい」
    「うるさ、い、私が、可愛いのは、当然、だ」

     ロナルド君の言葉にポロポロと溢れる涙がとまらない。ロナルド君が余裕そうにしているのが、悔しくてつい素直ではない言葉が飛び出てしまった。これでは立場が逆転してしまったかのようだ。
     
     無理矢理涙を拭った後、素直な言葉を紡げない変わりに強引に口付けた。
     
     次の配信の時は結婚発表の時のように報告をしよう。『末永く幸せになります』てね。
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