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    menhir_k

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    クロディ詐欺が過ぎる…

    #クロディ
    clodi

    レナ編だとエル大陸漂着時独りなんだよねクロード 頬に触れる濡れた感触が覚醒を促した。目を開けようとするが、酷く痛んでままならない。目だけではない。全身を痛みと倦怠感とが支配している。
     沈みそうになる意識を叱咤して目蓋を押し上げると、傾いた視界に彩度の低い暗い世界が飛び込んできた。
     砂地に手を突いて、軋む身体を起こす。髪に、目尻に、衣服に纏わりついた細かなつぶてが、ぱらぱらと零れ落ちて行った。
     辺りを見渡す。クロードが倒れていたのは浜辺だった。視覚が認識した途端、鼓膜が徐々に周囲の音を拾い始める。荒れ狂う黒い夜の海鳴りは、獣の咆哮にも似ていた。
     少しずつ、クロードは自分が置かれた状況を理解した。立ち上がり、改めて周囲の気配を探る。何処かに仲間がいる筈だ。
     エル大陸に巣食う魔物を掃討し、世界に異変をもたらすソーサリーグローブを調査する為、最先端の紋章兵器であるラクールホープを積んだ船で港を発ったクロードたちは、魔物の襲撃を受けた。
     仲間の安否だけではない。船は、ラクールホープはどうなったのだろう。焦燥と不安がクロードの胸に渦巻く。
     誰か。クロードは声を張り上げた。うねる荒波の轟音に掻き消されないよう、大きな声で呼び掛けた。けれど、クロードに答える声はない。近くには誰もいない。漂着物もない。波の音しか聞こえない。クロードだけだ。まるでクロードだけを残して、世界の全てが滅んでしまったかのような錯覚すらした。
     涙の膜が張って、視界が滲む。全身の力が抜けて、クロードは濡れた砂に膝を突いた。
     レナ。再びクロードは声を上げた。他の仲間の名前を呼んだ。縋るような、祈るような心地で発した声は、まるで悲鳴のような叫び声だった。自分で自分に驚く。
     最後に、ディアスの名前を呼んだ。クロードを最初に見付けてくれた少女が、誰よりも信頼する幼馴染みの名前だ。類を見ないほどに強い剣士の名前だ。
     きっと、どんな形であれディアスは今、レナといるのだろう。漠然と、そう感じた。
     ディアスは強い。剣の腕も、体格も、経験も、彼の持つその全てにおいてクロードは遠く及ばない。彼さえいれば、クロードが抜けた穴を補って余りある。レナだけでなく、全ての仲間を守り抜いてくれる。彼がいれば、もともとこの星の住人ですらないクロードは必要ない。このままいなくなっても、例えば全てを諦めてこの寂寞とした砂浜で朽ち果てたとしても、レナたちが旅を続ける上で大きな痛手にはならない。もしかしたら少しだけ悲しんでくれるかも知れないが、すぐに忘れ去られて、また何事もなかったかのように前に進んでいくのだろう。
     ディアスが行動を共にすることになったとき、もう何も怖くないと思った。心強かった。彼がいれば誰一人欠けることなく、仲間を守り切ってこの旅を終えられる。そう確信した。クロードがそう感じたのだから、レナも、他の誰しもが、同じ安心感を抱いたに違いない。ディアスがいるなら、ぼくは要らないんじゃないか。そう思えてならない。
     もう一度、立ち上がる気力は湧き起らなかった。ぼんやりと、タールを流し込んだかのようにどす黒くうねる海を眺める。船を呑みこみ、仲間たちを呑みこみ、希望を呑みこんだ黒い海だ。
     そこで、不意に気が付いた。
     違う。クロードの妄信していたディアスの強さは絶対ではなかった。魔物の襲撃を前に、もどかしく届かない彼の剣先をクロードは誰よりも近い場所で見ていた。クロード諸共、魔物の手で海に突き落とされた彼の姿を確かに目にした。
     のろのろとした緩慢な所作で、それでもクロードは立ち上がる。
     駄目だ。このままでは駄目だ。ディアスの強さに焦がれて、頼っているだけでは駄目だ。
     自身を叱咤して顔を上げ、黒い海を睨み付ける。
     要る、要らないという話ではなかった。クロードが、ただ彼らと居たい。彼らを守りたい。それだけの話だった。
     海に背を向け、決意を新たにする。それから、仲間を探す為の一歩をクロードは踏み出した。
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    menhir_k

    TRAINING前から3番目のクロディ(開き直り)
    多分ほんとに最後の追加分 光の勇者が現れた。久しぶりにクロス大陸の首都を訪れると、そんな噂を耳にした。
     噂の出所は首都クロスから程近い鉱山の町だった。すぐに、鉱山の町サルバに住む馴染みの顔が浮かぶ。町長の息子だ。幼馴染みと言っても差し支えないのかも知れない。勇者などと称される人物が現れたということは、それなりの荒事が起きたということだ。もう随分と会っていない彼の安否が少し気になったが、訪ねる気にはなれなかった。


     そう時を置かず、また勇者の話を耳にした。同郷の少女の口から、再会したその日の夜に聞かされた。彼女——レナの話によると、共に旅をしている青年が噂の勇者らしい。
     昼間、レナと共に訪ねて来た顔ぶれを思い出そうと記憶の底を攫う。紋章術師の女は覚えている。外見も言動も派手な女だった。だが、青年の方は印象に残っていない。髪はブロンドか栗毛色だった気がするが、瞳の色に至っては全く記憶にない。レナはレナでその青年に対して酷く腹を立てているようで、先ほどから彼の話で持ち切りだ。お陰で噂の勇者が本当にただの青年であるという知りたくもないことも知れた。
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