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    嗟弓@ A29393221

    @A29393221

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    嗟弓@ A29393221

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    BLオリジナルストーリー 異世界現代風 小説参考キャラビジュイラストあり
    他サイトに掲載済み

    #BL
    #BL小説
    blNovel
    #オリジナル
    original

    ね、見て綺麗かつては人間が支配していた青い星。その支配はある日を境に変わってしまった。人間以外の動物が人間と同等の知を持ち、四足歩行を突如として始めたのだ。動物上分類で、自らと種類が異なると相手を他種族と呼び、逆もそう呼んだ。人間の築いた文化は崩れ、元々飼われていた動物の文化と混ざり、新しいものとなった。そこで起きた社会問題についてこの本では解く。
    1〜
    『他種族と混ざってはいけない』これはこの世界に周知されたルール。
    他種族を決して愛しても、恋をしていても。体を重ね、一線を越えることはこの世で社会的に死ぬのに等しい。周囲にバレると死刑は確定する。
    もし、仮に他種族と体を重ね産まれてくる子がいるのなら。その子はまず死に至る。有名かつ常識的な話。自らの持つ種族遺伝子とパートナーの持つ種族遺伝子が別である…つまり他種族同士場合。その遺伝子同士は決して結び付くことはない。ゲイやレズ…同性同士では子が孕めないことに似ている。ところが、それらと違うのは腹を大きくできるところだ。しかし残念ながら、腹を痛めて産む子は生物ならざる姿、形で産まれる。そして半日もすれば死に絶える。肺も、エラもなく心臓どころか、脳も骨もない体で産まれ息もできず死ぬ。
    自らの腹で生き、成長していた子を失うと親なら誰でも悲しむ。心を病み、自暴自棄になってもおかしくない。
    結果、大量の若者が恋人、パートナーと一緒に心中し自らの命を絶った。これは後に社会事件と扱われ名がついた。心中から連想される、文豪の名を用した「太宰事件」と世間は呼んだ。
    「太宰事件」には多くの心中者、死者数は4桁を余に超える結末に落ち着いた。事件は特に死者数が多かった連年全体を言う。約10年。
    事件の中で死者数を増やした…起爆剤となったのが、公式に認められた子どもだった。一人っ子政策前の中国で報告された、キセキの子。
    前記どおり他種族同士が混ざれば産まれてくる子は決まって死に絶えた。しかしキセキの子はその常識を覆した。
    奇跡的に臓器があり、奇跡的に生物らしい体に生まれ、奇跡的に呼吸をする他種族同士の子。その子が記録に残るに2年半は普通の赤子と同じ様に成長したそう。
    それが公式に認められ、「自らの子と生きたい」とキセキを信じた動物は今まで以上に混ざり合い、産まれた子が半日で死に心を病み、自らも死んでいった。若者の大量自殺、心中に頭を抱える世界各国の政府。結果、その先駆けとなったキセキの子を殺し、歴史の闇に葬りざることに決めた。他種族同士の子は2年と半年で命をたった。それ以降、その様な子が産まれた報告、記録、事実共にない。
    この「太宰事件」をしらしめに、世界中で他種族を愛することはさらに固く禁じられた。他種族を愛することは悪とされ、蔑まれた。それが成立できたからこそ、今日まで各種族命を紡いでこれた。


    ————————パタン

    一つ息を吸うと本特有の匂いが鼻に届く。
    歴史本なんて読まなきゃよかった、と内心ため息をつく。常識をクドクドと解くその内容は無駄に頭と使うだけで、長時間読めたもんじゃない。
    顔を上げると、店内の客はそれぞれ立ち読みを繰り返し、本当に欲しい本を時間をかけて探している。カウンター正面にひとけを感じ本を閉じ、接客に移る。初老の犬の紳士が僕の前に一冊の辞書を差し出す。
    「一冊で1500マルコです」
    紳士はキッチリ払うと本をとり、僕に背を向け暗がりに足を進めてゆく。狭い通路に立つ、立ち読み客は体をずらして紳士を通す。暗がりを進む紳士を見送ると、カウンターに座り歴史本に手をつける。

    ゴーン…ゴーン…

    22時を知らせる鐘が鳴る。
    店内にいた客は顔を上げ店から出るか、こちらに本をよこし金をキッチリ払って店を出ていく。23時になる頃には店内に客は残らない。それを見計らい、店の灯を落とす。
    日付が変わるまでには、寝床を整え身じたくをする。余った時間で週末役所に出す売上•経営状況の書類を作り、目を通す。そして眠りにつく。

    職業古本屋、自営業。自営業は良い。気ままにできて、利益を独占できる。まったく、儲からなければ話は別だが。インターネットの普及する現代で、幸いにも紙の本を売る割にはそこら辺の食堂より儲かっている。
    そして自営業のいいところはもう一つある。効率が良いところ。一人で運営する分には人間関係を気にする、付き合いがない分気を使う無駄が省ける。チェーン店て必要な「上への報告」がなくて書類作成時間が必要最低限ですむ。じつに、効率のコスパもいい。事務仕事が得意な自分には、運営という仕事はあまり苦でなかった。少し蛇足した様だ。

    朝は少し遅く起きる。11時には店を開け、カウンターに座り本を開く。平々凡々な毎日。この生活を続けて五年。
    昼を過ぎ、夕日が見えてきた頃。こちら…カウンターに向かってくる足音に気づく。店内には他に客はおらず、おそらく今日最後の客だろう。
    読んでいた冒険小説を閉じ、顔を上げる。そこに立っていたのはヤギ男だった。
    不意に直近の客の顔を思い出す。
    今日の客はウサギの少女に、猫の兄妹。亀の老人に、腹を大きくした犬女。昨日は、子連れの文鳥にカエルの青年、それに学校帰りらしい、制服姿のネズミ少女達。昨日、今日共に売り上げはノルマどおりの、19000クルコ。
    ヤギ男の顔は今までの客に無く、今日、今。初めて出会った。にも関わらず、目の前にいるヤギ男は今まで来た客…いや今まで生きてきた26年間の中で、どんな人たちよりも
    魅力的だった。
    額から生える立派なツノは光を吸ってしまいそうなほどに黒い。十字になった瞳は大きく満月よりも美しい。後ろで小さく結われた黒髪は中性感を演出する。種族関係なく、生物とはまた違う魅力があった。
    「いらっしゃいませ」
    見とれている場合ではない。買い上げる本を受け取ろうと手を差し出す。しかし、ヤギ男は、本…商品ではなく茶封筒をこちらによこした。
    「えっと…」
    「アルバイト」
    とヤギ男…と言ってもまだ若く20に満たない男は言った。
    どの種族も同じ様な速さで歳をとる。しかしヤギ男だけはそれに反する様な印象を受けた。若い外見で何かを悟った様に落ち着いた声。
    自分でも驚く。ここまで初対面の生物をしっかり見たのは初めてであった。
    「アルバイト、ね」
    ヤギ男の言ったことを繰り返す。そういえば、数ヶ月前に店先に設置したアルバイト募集の張り紙を思い出す。自営業といえど、手の届かないところもある。アルバイト程度なら1人、2人雇える余裕はあった。しかし、まぁ所詮は自営業。チェーン店より給料は少ないし、安定もできる保証もない。ダメ元かつ、気まぐれの募集。すっかり忘れていた。
    「これは履歴書?面接をしよう、裏に来て」
    受け取った茶封筒を受け取り、中身を問うとヤギ男はコクリと頷く。
    募集の張り紙に連絡先を書いてないのを思い出した。だからヤギ男は非常識なことの直接来るしかなかったのか、と自己反省をする。
    ヤギ男をカウンターへ通し、呼び出し用ベルを置きバックヤードへ行く。
    パイプ椅子を向かいあわせる様に置き、お互い座る。
    向かい合うまでの1つ1つの動きを、ヤギ男を目で追ってしまう。僕も男。ゲイの趣味はなかったはずなのに、ヤギ男にひどく心を奪われ、酔わされる。そして突如として正解に辿り着く。
    ヤギ男を見る感じ、それは名画を見ている様だった。
    その作品を見て立てる考察が十人十色と違う様に、僕も作品に心を寄せ考察を立てる。じっくり、観察して。その観察対象がヤギ男という名画、名作なのだ。見ていると、ふつふつと胸が締め付けられる。恋や愛といった独占欲染みた気持ちとは少し違うが、共通して心を奪われ、気持ちで胸を締め付けられる。あぁ、自分自身の思考に疑問を持っては、消えてゆく言葉の泡。恋ではない何か。愛ではない何か。

    「面接を始める。名前は—」
    「ヴェックスです。苗字は捨てました」
    「分かりました。ヴェックス…さんはなんでこの店をアルバイト先に?」
    この世の中、上の名前を捨てるものは多い。それは家を捨て、自分の家を持ったり、結婚して他の家に入ったりすることのできる一種の生前の証でった。基本、長男長女が家に残りそれ以外の兄弟が出ていくのが一般であった。残った長男、長女は同種族で嫁、婿を取り子孫繁栄を祈る。しかし別意として、多種族と駆け落ちするために家を捨て去ったことも意味していた。
    さて、このヤギ男はどちらだろうか。
    「…家を追い出されました。食い口が欲しく、職を探していたらここを見つけました。」
    ヤギ男はスラスラと語る。履歴書に目を落とす。名前ヴェックス。18の成人、男。高校卒業まじかで中退したのは1ヶ月前。高校を卒業しなかったのはチェーン店じゃ不採用の先駆けだ。
    「その日暮らしさえできなくなって、貯金も無くなって、バイトの面接も落ち続けました」
    ヤギ男は食い口もなければ、貯金もない人とは思えないほど、堂々と真っ直ぐに淡々と語った。どこかその強さが生簀かなくなり、つい蔑んでもしまう。
    「帰る家も無く、金もない。だから雇ってくれ、と?」
    「はい」
    図々しいくらいの正直者。ここでは僕がどんなに蔑んでも、ヤギ男は顔色一つ変えず僕の質問に返事をする。ラチがあかないと早々に見切りをつけると、僕は賭けに出た。
    「分かった、雇おう。君のこと。なんなら住処もやろう。」
    ここで情と優しさ、恩を売って僕がヴェックスを長期雇用人にする。アルバイトといってもコロコロ人が変わっては、イチイチ仕事を教えるのは非常に効果が悪い。恩を売って、長く働かせる。住む場所だって与える。これは早々に辞めない鍵となる。少なくとも半年は貯金、家探しで仕事を続けざるえないだろう。更に優しさに漬け込み、仕事のパフォーマンス向上も期待できる。このヤギ男が相当なポンコツか恩知らずのバカでなければ、の話だが。
    「…!本当ですか?ありがとうございます、えっと—」
    「店長でいいよ。名前は長いし」
    「店長サン」
    ここにきてやっとヤギ男…いやヴェックスは笑った。その笑顔はどの名画より美しく、魅力的で何かを訴えかける様だった。

    ----------------------------------

    「住処…家って言っても、この店の下で僕の家なんだけどね」
    バックヤードでヴェックスに合格を伝えた後。店を閉め、地下の自室へ行く。
    ヴェックスは一応成人している。しかし僕の胸は未成年を自室に連れ込む様に、罪悪感と満足感で踊っていた。
    「接客用の部屋が空いてるから。接客するほどの客はほとんど来ないから、好きに使って。」
    木目の板にトッテと言うシンプルな扉を開け、電気をつける。ベッドに机が1つの簡単な内装だが、生活するにはまずまずだろう。給料を明日あたりに一部先払いして、必要なものを買いに行って貰えばいいだろうし。
    「住居代を給料から少し引くよ。それから水道代にガス代、電気代を引いて…ま、このくらいかな」
    近くにあった電卓で、一月分の給料から引いた分の金額を映し出し、ヴェックスに見せる。
    「え、こんなにいいんですか?」
    ヴェックスは小首を傾げ、自分より背の低い僕を見る。
    「幸いなことにウチは自営業なりに儲かってるからね。その代わり、このくらい働いてもらうよ」
    「もちろんです」
    決意の表れと言わんばかりに、目を開きこちらをみつめるヴェックス。
    「夕飯時になったら呼ぶ。廊下挟んで向が僕の部屋だから」
    それだけを言い残し、ヴェックスに背を向ける。ヴェックスは丁寧に扉が閉まるまで頭を下げていた。人一人通れるくらいの廊下を挟み、向の自室へ入る。パタンと扉を閉めるとそのまま扉に背中を預け、床にうずくまる。

    美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しい、美しいー
    僕の心はその感情で満たされていた。
    ヴェックスは本当に絵になる。神にここまで愛された生物がいただろうか?否、いない。美しい、まさに生きる芸術、動く美術、話す名画。モナ•リザよりも、真珠の耳飾りの少女よりも、なによりも名画の名にふさわしい。ヴェックスに向けるべきはやはり、愛では無く信仰心。ヴェックス…いっそのこと飼い殺してしまおうか?
    愛おしい、愛おしい、愛おしい、愛おしい、愛おー

    ハッとし、息を一つ吐く。頭に詰め込んだ自分のものと思いたくない、憎たらしい感情を殺す。自分の気持ちにリードをつけていなくて、何がヴェックスを飼い殺す、だ。笑わせる。
    ヴェックスはバイトでやってきた男。ただそれだけ。雇用人と雇用主という関係。この認識を、決して間違えてはならない。そう見切りをつけると、二度と憎たらしい感情は溢れ無くなった。


    ーそうだ、夕飯。
    どのくらい気持ちの整理をしていたかは、部屋の掛け時計を見ればすぐに分かった。非効率的なことに時間を割いている場合ではない。明日は少し早く起きて、ヴェックスに仕事を仕込まねば。
    もう一度、息を一つ吐く。僕のヴェックスへの信仰心は死んだ。醜く、生産性のない話に時間を割くな。そんな時間があったら株でも見とけ。自分に言い聞かせ、廊下向こうのヴェックスに声をかける。
    すぐにヴェックスの声は帰ってきた。
    トイレ、風呂、リビング、キッチン。一通り部屋を見せて回ると、何も置いてない机に腰掛ける様指示する。頭にあきらかなハテナを浮かべるヴェックスに、たった今冷蔵庫から取り出したゼリー状のエネルギーチャージ飲料を渡す。いつもの僕のご飯。作るなんてしない。準備、片付けコスパが悪すぎる。別に長生きしたい訳じゃないし、短時間で簡単にエネルギーが補給できるならこれでいいと思っている。
    ゼリーを飲みながら、スマホで電子書籍市場を確認する。横目でヴェックスを見るとゼリーに手をつけてないことに気づく。この歳で好き嫌いでは無いだろうと思うが、一応聞いてみる。
    「食べないの?」
    下を向いて、申し訳なさそうに言葉を潰しているヴェックス。体を机に乗せて、覗き込むと観念した様にヴェックスは言った。
    「…店長さんっていつもコレなんですか?」
    「うん。料理なんて効率悪いし。」
    ゼリーを吸い上げ、空になったことをが分かるとゴミ箱に投げ捨てる。「おやすみ」と言い席を立ちかけた時、ヴェックスにすっかり情けなく細くなってしまった僕の手首を掴まれた。
    「それじゃ、体壊します。」
    「え?」
    今日出会って雇っただけの関係。モロ初対面で体を気遣ってくれることは嬉しいが、同様のする。ヴェックスは勢いよく立ち上がると、「給料から引いててください」とだけいいおそらく食材の買い出しに行ってしまった。一人残された僕はヴェックスの思いもよらない行動を予想し、帰りを待つことしか出来なかった。
    10分ほどで早くも帰ってきたヴェックス。どこで見つけたのか、鍋やらフライパンやらを器用に使い、料理を始めた。すぐにいい匂いは部屋中に広がり、程なくして何もなかった机に色とりどりの料理が並んだ。
    食に大したこだわりのない僕でも、目を見張る完成度。気づくと、サジを手に取り料理を口に運んでいた。数年ぶりにゼリー以外の食品が口に入る感触は、懐かしく思えた。
    「…美味しい」
    「よかったです」
    そう、はにかむ様に笑うヴェックス。照れ隠しなのか、頬を軽く指で擦りながら「得意なので」と付け加える。

    腹が今の様に完全満ちたのは、いつぶりだろう。ゼリーの誤魔化しの満ちとは違う、確かな幸せと温かさを感じる。気分が良くなり、気が抜ける。生物とは恐ろしい。気が少し抜けただけで、禁句を言ってしまう。それも、言った後で後悔するのがテンプレート。その方程式に自分も例外なく、ハマってしまった。

    「ヴェックスはなんで、家を追い出されたの?」

    聞いてはならぬことを、余計なことを聞いた。「後悔先に立たず」君を信じたが故の過ちだと、言い訳をさせてくれないか?それよりもヴェックスの驚い顔を見て、罪悪感の波が込み上げてくる。今にも浸水してしまいそうな、心はヴェックスも同じだったのだろうか。
                                                  (続く)
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