日頃お世話になっているブルマから、パーティの招待が来た。
ただいつもと違うのは、窮屈かもしれないけど少しばかりフォーマルな装いをしてほしいとのことである。
詳しく話すのもメンドクサイというのはブルマ談だが、プライベートよりな催しではあるが、少しばかり会社関係も関わっている、とのことだった。故に今回はドレスコードがあるのだと。
参加は強制ではないので、窮屈だと思うのなら不参加でも構わないとのことだった。
ので、チチはてっきり悟空は不参加だと思っていたのだが―――――。
「ん。これで終いだべ。どうだべ悟空さ、窮屈なら脱いでもいいだぞ」
「んー…。まぁちぃっとキュークツだけど、これぐらいなら我慢できっぞ」
「そうけ。リングタイにしたのは正解だったかもな。いつもはコレやだってすーぐネクタイ取ろうとするからなぁ、悟空さ」
「へへ、ついな」
深い青のダブルスーツは悟空によく似合っている。それが率直なチチの感想だ。サイズはもちろん考慮しているし、過度な運動は論外としても動きやすいようにと考慮したのはうまくいったらしい。先の夫婦の会話でもあったが、ネクタイもゆるめのリングタイにしたのがよかった。
「これはそんなでもねぇけど、オラどうしてもあのネクタイっちゅーんはなんか息苦しくなるんだよなぁ」
「悟飯は平気なのにな」
「やっぱ小さいころからしてたからか? なんかリボンみたいなやつつけてたよな」
「蝶ネクタイだな。確かにおめかしのときにつけてただなぁ」
「へんちくりんだったけどな」
「そうけ? あれはあれで可愛かっただよ」
ふわりと笑うチチは幼いころの長男を思い出しているのだろう。母親としての彼女の表情も好きだが、彼女の第一は自分でありたいと思う感情が悟空には芽生えてしまう。どうしようもないなという自覚はあるが、我が子に対しても生まれるチチに対しての独占欲は抑えようがないのが事実だ。
攻撃にならないだけでもまだうまく付き合えているのだという感情もあるが、それは黙しておく。
窮屈かもしれない今回のパーティだって、自分が行かなくてもチチが参加するというからスーツも着ていくことにしたのだ。
「さて、悟空さの支度もできたし、いい加減おらも着替えるかな。悟空さ、どっかいったりしねぇでちゃんと待ってるだぞ?」
「おう。あ、そだ。チチ」
「ん? なんだべ?」
悟空の手招きに疑いなく近づいてきた妻を抱き寄せ、驚く彼女が次のアクションを起こす前に悟空は妻の鎖骨下に唇を寄せた。
「へへ、蝶ネクタイ」
うまくつけられた、と自慢げに笑ったら平手打ちをくらったが、まぁ、それは覚悟の上の行為だった。
妻のドレスコードは胸元の露出がないものになったので、悟空としては万々歳である。