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    悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第2回戦 お題『マフラー』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi

    年齢を重ねてきたことで、ようやく見えてきたことがある。
     自分の中に流れる戦闘本能については純血のサイヤ人のそれということでどうしようもないとしても、闘いがない日常でもそれなりに生きていけて、それを悪くないと思えるのは「地球人」としての自分の一面で、近しい者に危害が加わることは良しとはしないあたり、色濃いことだ。

     穏やかな昼下がり。
     最近自分から望んでやるようになった農作業も終えての、自由時間。悟空には瞬間移動があるので西の都にでも行ってベジータと組手などすることも多いのだが、この日はパオズ山の自宅に居る。

    「ん。大丈夫だべ、ビーデルさ。ちゃあんと出来てるだよ」
    「本当ですか…?」
    「んだ。やり始めたばかりのおらよりも、ずうっと上手だ」

     この時間は窓から入ってくる陽光で陽だまりになるソファに、ビーデルとチチが並んで座っている。
     ビーデルの手には鈎針が握られていて、彼女はいつもは勝気な眉を少しばかりハの字にしながら手を動かし、ソファ前のテーブルの上に乗せられた籠の中の紫の毛糸玉がゆっくりと回る。編み物をしているのだ。

     ビーデルは悟飯のハイスクールのクラスメイトだが、それだけではなくなるだろうと孫夫婦は思っている。
     そんなビーデルが悟飯不在時の孫家を訪ね、チチに編み物を教えてほしいと乞うてきたのだ。ここからはチチが嬉しそうに、こっそりと教えてくれたことだが、どうやらビーデルはもうすぐある、大切な人に贈り物をする日に悟飯にマフラーを編んで贈りたいと考えているらしい。

     チチの両省を得たビーデルは体得している舞空術で足しげく孫家を訪れ、今彼女が編んでいるマフラーは出来上がりとしている長さの半分ほどまで来ていた。

     チチが用意してくれたコーヒー…と呼ぶには牛乳がたっぷりと入ったものを飲みながら、悟空は編み物を習うビーデルと、丁寧に教えるチチを眺める。
     外で修行してきてもいいと言われているが、女性二人の編み物教室は変な意味を含まず見ているとなんだか胸のあたりがぽかぽかする。

     チチは編み物が得意だが、最初から上手だったわけではない。
     結婚したばかりのころ、修行に打ち込んでばかりで胴着で過ごすことが多かった悟空に冬の寒さの影響が心配だからと編み物を始めて、最初はちょっと所々形がよくないマフラーの出来上がって、その後悟飯を妊娠したチチは赤子用のものと一緒に更に悟空にもセータなど色々編むようになった。

     既製品を買うのもありだがが、自分で編んだものは糸を解いて他に作り変えられる利点があると笑っていた妻。
     ナッパと共に地球にやってきたベジータとの戦闘で大怪我を負っての入院生活でも彼女は手慰みに編み物をしていたのを悟空はよく覚えている。

     最初はぎこちなくとも、ひと針ひと針に込められた想いは始めたてから上達してからも何ひとつ変わらないことも、悟空は知っている。

    『多分、そう遠くない先にビーデルさは悟飯のお嫁さんになるだよ」

     嬉しそうに、ちょっとだけさみしそうに、でもとてもきれいな笑顔で自分に言った妻。
     そんな彼女を見て、実は悟空にもちょっとした想いが胸の内に生まれていたのだが、それはまだチチに告げられていない。

     悟飯とビーデルが結婚すれば、彼女は義理の自分達の娘になる。
     そう思うったら―――――、なんだかもうひとり、本当に子供が欲しくなったのだ。

     悟天を見ていたら長男である悟飯はそれはもういいお兄ちゃんを続けてくれるだろう。そして甘えたがりなところのある悟天は兄である悟飯に憧れているのも強いから、背伸びしつつも「お兄ちゃん」として成長してくれそうな気がする。
     
     我が子ふたりのそんな姿を見たいと思うし、これは完全に自分の我儘だが………子育てがしたい、と思ってしまった。

     叶うなら、次は娘がいい。
     きっとチチに似た子で、大きくなったら今自分が見ている光景のように、母と娘で編み物をしたりするのだろうと思う。

     こっそりと、ひっそりと。自分の胸の中に秘めた願望。もちろん、独りよがりでそれを成すことはないけれど。

     

     ソファではビーデルが目的の日までに間に合うかとても不安そうにしている。チチはそれを笑いながら大丈夫だと太鼓判を押していた。
     あの背中を押してくれる優しい力強さが好きだなと思いつつ、悟空はすっかりぬるくて甘いミルクコーヒーをぐびっと飲み干すのであった。
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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
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    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    年齢を重ねてきたことで、ようやく見えてきたことがある。
     自分の中に流れる戦闘本能については純血のサイヤ人のそれということでどうしようもないとしても、闘いがない日常でもそれなりに生きていけて、それを悪くないと思えるのは「地球人」としての自分の一面で、近しい者に危害が加わることは良しとはしないあたり、色濃いことだ。

     穏やかな昼下がり。
     最近自分から望んでやるようになった農作業も終えての、自由時間。悟空には瞬間移動があるので西の都にでも行ってベジータと組手などすることも多いのだが、この日はパオズ山の自宅に居る。

    「ん。大丈夫だべ、ビーデルさ。ちゃあんと出来てるだよ」
    「本当ですか…?」
    「んだ。やり始めたばかりのおらよりも、ずうっと上手だ」

     この時間は窓から入ってくる陽光で陽だまりになるソファに、ビーデルとチチが並んで座っている。
     ビーデルの手には鈎針が握られていて、彼女はいつもは勝気な眉を少しばかりハの字にしながら手を動かし、ソファ前のテーブルの上に乗せられた籠の中の紫の毛糸玉がゆっくりと回る。編み物をしているのだ。

     ビーデルは悟飯のハイスクールのクラスメイトだが、それ 1835

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第6試合 お題『アイス〜ICE〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    孫家の日常は多分どちらかといえば慌ただしいイメージかもしれない。

     それは確かに事実でもある。
     なにせ、パオズ山は緑豊かといえば聞こえはいいが、実際は大型肉食獣も住まう辺境という言葉が相応しく、人が住む場所といえば限られていて村と呼べる存在は山の麓の方にあり、そこから町、都会へとなるとずっと遠くなりそれなりの移動手段が必要だ。

     そんな場所で暮らしているものだから、ハイスクールへの登校にも時間がかかってしまう。孫家の長男、悟飯は時間にルーズではないがやはり朝はばたばたしがちだし、悟飯や悟天の父親である孫悟空が現世の人として戻ってきたため家事(主に食事面)が増えたため子供達の母であり、悟空の妻であるチチも所々は慌ただしい。
     しかしながら、子供達が成長すれば各々時間の使い方はうまくなっていくし、悟空に至っては修行に出てしまえば家を不在にする時間も長くなり心配はするものの家事の負担は減る。

     あと、これは知るものは孫家の面々くらいだが、農作業が終わり昼食も終わったあとの孫家は意外とのんびりとした時間が流れる。

     茶を淹れて、ゆっくりと飲む時間。
     それはチチがひとりで家を支えてい 2050

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第1試合 『空』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge
    #悟チチ #Gochichi
    チチは亀仙流の使い手であり、その武は亀仙人も認める達人の域であった。
     まぁ今は孫もいる身であり、全盛期と比べればゆるやかに力量は落ちてはいるがちょっとした暴漢をこらしめるくらいは未だに朝飯前のことだ。

     とはいえ、チチは気は読めないし、気弾も打てない。夫や子供達が得意とするかめはめ波も打てないし、舞空術も使えない。

     舞空術については、悟飯からそれを学ぶ際に一緒にできるようになろうとねだらた。それよりもっと前には、悟天が生まれて少し落ち着いたころによければと、悟飯からも舞空術が使えるようになることを勧められたこともある。
     だがチチは穏やかに辞退した。
     舞空術は確かに身に着けることができれば便利だろうが、気を感じる、気を読むなどのセンスはどうも自分にはないと思ったし、夫が遺した筋斗雲があればチチだって空を移動できる。

     子供達はチチのそれに少し残念そうであったけど納得もしてくれたことがありがたかった。

     筋斗雲に乗って、空を行く。
     朝はまだ少しひんやりした空気の中。昼は、眩しい陽射しの中。夜は満点の空を見られる。
     それが自分の身ひとつでできれば、解放感はひとしおかもしれ 1609