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    悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第6試合 お題『アイス〜ICE〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi

    孫家の日常は多分どちらかといえば慌ただしいイメージかもしれない。

     それは確かに事実でもある。
     なにせ、パオズ山は緑豊かといえば聞こえはいいが、実際は大型肉食獣も住まう辺境という言葉が相応しく、人が住む場所といえば限られていて村と呼べる存在は山の麓の方にあり、そこから町、都会へとなるとずっと遠くなりそれなりの移動手段が必要だ。

     そんな場所で暮らしているものだから、ハイスクールへの登校にも時間がかかってしまう。孫家の長男、悟飯は時間にルーズではないがやはり朝はばたばたしがちだし、悟飯や悟天の父親である孫悟空が現世の人として戻ってきたため家事(主に食事面)が増えたため子供達の母であり、悟空の妻であるチチも所々は慌ただしい。
     しかしながら、子供達が成長すれば各々時間の使い方はうまくなっていくし、悟空に至っては修行に出てしまえば家を不在にする時間も長くなり心配はするものの家事の負担は減る。

     あと、これは知るものは孫家の面々くらいだが、農作業が終わり昼食も終わったあとの孫家は意外とのんびりとした時間が流れる。

     茶を淹れて、ゆっくりと飲む時間。
     それはチチがひとりで家を支えていたころから心がけている時間の持ち方であり、今もなるべく継続されている。

     一日ずっと走り続けてたらいつかばたんと動けなくなるかもしれない。
     そんなことを言いながら子供達に茶を淹れていた母親であるチチを見てきた子供達だが、今は平日におだやかながらも輝く笑顔で彼女自身と悟空の分の茶を淹れていることを知っている、今日も、そんな一日。


      空腹に負けて昼食を優先したため、食後に農具の汚れを洗い落とし自身も手を洗って室内に戻ってきた悟空は、テーブルですでに茶を淹れている妻の向いの定位置へと腰を下ろす。
     からん、と涼しげな音が氷が奏でるものだと気づいて、悟空は珍しいと思う。夏場ならまだしも、春が近づいてきたのを感じるというこの季節、ジュースなどならまだしも、氷を使用する茶を彼女がいれることはとても珍しい。

    「昨日な、悟天がお山のちょっと深いところで凍った滝を見つけたらしくてな、その氷をお土産だって持って帰ってきたんだべ。すっごい透明でキレイな氷だったし、何かに使いてぇなぁって思って、今日のお茶に使うことにしただよ」
    「へぇ。冷たい八宝茶か」
    「んだ。氷砂糖と氷がからからしていいかなって」

     厚めのガラスでできた茶碗の中でゆらめく、ゆるゆると色が揺れて現れていく紅色の茶。
     八宝という名が示す通り八種の素材が使われており、今日はクコの実、松の実、菊の花、干し棗、金柑、龍眼、バラのつぼみ、氷砂糖を使用しているとチチが楽しそうに説明してくれた。

     八宝茶は使用する素材の効能もさることながら、氷砂糖を使用するのでお茶というよりは素材によってはスープのようにもなるし、子供にも飲みやすくなるという利点がよいとチチはいう。

    「今日は冷たいお茶だから、デザート感覚に近くなるだかなぁ。フルーツポンチみたいにできればいいんだけんど、そこは使う材料の研究次第だべな」
    「夏に飲む梅ジュースみたいな感じになるんか?」
    「んだな。夏に飲む熱いお茶もいいけんど、やっぱ冷たい方が飲みやすいってのあるからな。今から勉強だべ。だから、悟空さちょっと付き合ってけれ」

     にっこりと笑顔でいいながら、悟空の分の茶をチチが差し出してくる。
     からんからん、と涼しげな音が耳に心地よく、あたたかい室内でこういうのを飲むのも悪くはない。

    「夏かぁ。暑かったもんなぁ。界王様んところじゃあ暑いも寒いもなかったから最初はすげぇ懐かしとか思ったけんど、やっぱしんどかったもんな」
    「んだ。これからは悟空さもまだこっちの人で生きていくんだから、こういう食べたり飲んだりするもので身体を大切に整えることはすごく大切だべ」
    「…………」
    「悟空さ?」
    「ん。なんでもねぇ。ありがとな、チチ」

     小首をかしげるチチには胸の内を言の葉にはせず、短く感謝の言葉を送り悟空はひんやりした茶器の中の冷たい甘い液体を口に含み、飲み込んだ。
     甘いが、ただ甘いだけではなく使用した材料のそれぞれの味も含まれた複雑な甘みに、パオズ山の自然の中で作られた氷が唇にやわらかく当たる。

     八宝茶の材料は日によって変わる。それはチチが家族の状態を見、気候なども考慮して選ぶ。
     今日はふたりだけのこの時間だから、先に彼女が言った通り夏に向けての研究でもあるのだろうけど、使用した材料からは疲労回復やこれからを健やかに過ごせるようにという材料が多く使われていて悟空の体調管理を重視した内容になっていることがくすぐったい。

     冷たい氷を使用したことでいつもならすぐに溶けてなくなってしまう氷砂糖と、パオズ山の氷を一緒に口の中にいれてがりがりとかみ砕いていると、お行儀悪いだよといいつつも楽しいそうなチチの笑顔に悟空もまた笑顔が浮かんでいた。
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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第3試合 『春 〜Spring〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge
    #悟チチ #Gochichi
    茄子に胡瓜にトマト。アスパラ、カブ、ピーマン、春菊―――。

     春に種まき、ないしは苗植えを行う作物のことを考えながら、チチは起こされて湿り気を含んだ独特の匂いのする土の香りを胸いっぱいに吸い込んだ。 

     トラクターで掘り起こされた土は黒々としていて、春の陽射しをぐんぐんと吸いこんでいるのが分かる。この、畑の「目覚める」様子がチチはとても好きだ。
     もちろん冬にも幾つか作物は育てていたが、やはり秋までに比べれば幾分縮小させていたし、この春に備えて手入れをし、休ませていた畑もある。

     雑草などで作った堆肥を含んだ土に器具を入れてひっくり返すときにわくわくすると言うと夫である悟空に笑われてしまったが、それはマイナスな意味ではなく「チチらしい」という明るくてどこか嬉しそうなそれであった。
     
     もう二度と会うことは叶わないと思っていた夫が現世の人となり、チチが生業として選んだ「農業」に加わったことで、孫家の農業はぐんと幅を広げた。
     トラクターなどを使って畑を耕していたとはいえ、パオズ山の土地はその内に大小様々な土をはらんでいることも多いし、また土も農作物を育てるにはまず土を育てて整えて 1425

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    TRAINING悟チチ版ワンドロワンライ『天下一悟チチ武道会』
    第9試合 お題『夢』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    思えばずっと、自分は彼女に待たせているばかりだった。

     幼い約束を信じて、少女から乙女となるまで待ち続けた彼女。
     天下一武道会の武舞台で夫婦となりパオズ山で生活はし始めたけど、修行のために家を出れば一人きりの朝と夜を迎えさせたのは片手どころか両手、両足の指を使っても数えきれないほど。それで泣かせてしまったのも数として口にすると後ろめたさでいたたまれなくなるのだが、そこに死別が割り込んでくるとなると、もうなんともさすがの悟空とて申し訳ないどころでは済まされないと反省したくなる。
     二度の死別から現世の人となり、そこから先で、また彼女の元から離れた。

     背中にかけられた声にまともに返せなかったのはともすれば彼女を道連れにしてしまいかねなかったからだ。
     今の孫悟空という存在はこの世、あの世、どちらの存在とも言い難く、地球という星と共に在るが、個として明確であることは短い時間でしか今は保てない。

     そうなることは悟空自身の意思であるし、悔やんではいない。
     自慢の息子達が家庭を持ち、仲間達のそれぞれの人生、可愛い孫娘が孫の世話をする時の流れを穏やかに、なつかしさと羨望のまなざしで見守 1238

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    TRAINING第13試合『告白〜Confession〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
    パオズ山、孫家。
     長男、悟飯が家庭を持ち家を出たことにより、息子達の部屋は次男悟天の自室となった。
     最初は広くなった部屋に落ち着かない様子だったが、成長と共にそこは彼のテリトリーとなり自室で過ごす時間も多くなった。

     家族仲が悪くなったわけではないが、悟空からしてみればやはり以前のように家族三人でリビングで過ごす時間が少なくなったと感じるし、それとなくチチにそれを話してみたところ、それが子供の成長だと微笑まれた。

    「悟空さは意外と子離れが寂しい性質なのかもしれねぇな」
    「そうなんかなぁ」

     風呂上り、チチがリンゴを用意してくれるというので悟天にも声をかけたのだが、彼は机に向かって今はいいと返してきたことを妻に話して、彼女が置いてくれた皿からリンゴをつまんで食べる。
     子離れというと悟飯の結婚式の前夜に涙をこぼしていたチチを思いだすのだが、そこまでではないと思う。でも確かにチチの言う通り、なんとも言えない感覚は「親」としての何かしらの感情だろうともあり、……なんとも表現し難い。

    「まぁ、おらと悟空さは子育ての差に七年ほどあるだ。そのうち追いついてくるだよ」
    「なんかチチ、セン 1899

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    TRAINING第18試合『手紙〜Letter〜』

    #悟チチ版ワンドロワンライ
    #天下一悟チチ武道会
    #Gochichi60minOneDrawWriteChallenge #悟チチ #Gochichi
     掃除、洗濯、夕食の下ごしらえ、他のこまごました家事が終わると、チチのちょっとした自由時間となる。
     自由時間といっても大概は針仕事や近隣(と、言っても孫家からかなりの距離はあるのだが)への用事事や畑の様子などを見にいくことも多いが、まれに本当にぽっかりとそれらもない自由時間がある。

     そうなるとチチはお茶を淹れて雑誌を読んだりテレビを見たり、時々午睡をしたりとして過ごすが、気が向くとリビングのとある収納の引き出しを引く。

    「ああ、そろそろこの便箋もなくなってきてるだなぁ」

     言いながら取り出したのは、淡い緑色で揃えられているレターセットだ。共に万年筆も出して、ダイニングテーブルに座る。
     
    「さて、と」

     便箋をめくり、チチは慣れた様子で万年筆にインクを補充すると、その切っ先を紙面へと滑らせ始めた。
     出だしはいつも決まっていて、「悟空さへ」 である。

     
     書くことは基本とりとめもなく。
     自分がその日思っていること、伝えたいことをつらつらを書いていく。満足するまで書いたあとは便箋を折り封筒に入れて封をして、便箋をしまっている同じ引き出しに手紙をしまう。
     この手紙は決し 1450