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    kusare_meganeki

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    kusare_meganeki

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    ナタンポ + ゼレのSS
    ⚠️序盤にナタがンポに座薬入れる描写が軽くあります

    ナタンポ+ゼレSSショートスリーパー。短い睡眠時間でも、生体活動を維持出来る人種を指す言葉だ。それは先天的な体質であり、努力で身につくものではない。
    「普通の人で、平均7時間。サンポ、君のようなショートスリーパーでも5時間は寝ないと健常的な生活に支障をきたすとされているわ。それは、知っているわよね?」
    厳しい声色のナターシャは、ベッドで横たわり顔を背けたままのサンポの顎を掴んだ。無理やりに自分の方へ、その顔を向かせる。
    「聞いているかしら?」
    「……聞いてますよ。お医者様」
    少しふざけた返答。それを聞いたナターシャは、サンポの頬を軽くつねる。
    ぎゃっと悲鳴をあげた彼の目には、クマが出来ていた。
    「最近、眠れていないのは見て分かる。ここ1週間の平均睡眠時間は?」
    「記憶していませんよ、そんなの」
    「それじゃあ不眠ということで記録するけど」
    「……2時間ぐらい、ですかね」
    医者と患者。その立場になってしまうと、サンポに許されるのはナターシャの言葉に頷き、正直に答えることだけだった。カルテを片手に、何かを書き込んでいる彼女の目は厳しく細められている。
    (気をつけていたのに……ナターシャの前で立ち眩んだのが、運の尽きですねこれは……)
    「言っておくけれど、君が私の前で立ち眩みを起こさなくても、気がついていたからね」
    サンポの思考を読んだのか、ナターシャはカルテから視線を離さずに言った。
    どうやら、最初から逃げ場はなかったらしい。ため息を飲み込んで、サンポは曖昧に笑うしかなかった。
    診療所奥の個室。どれだけの大怪我でも入院しないサンポに、ナターシャが与えた場所だ。元は半分倉庫として使っていた場所で、照明は無い。
    薄暗いそこで、サンポはナターシャに詰められていた。腕を組み、ベッドの横に立つ彼女はあまりにも医者として正しい姿でいる。
    「いつもの不眠周期ですよ。もう暫くしたら、また元に戻りますから」
    「生命維持の為の行動に異常をきたしている時点で、それは病気なのよサンポ」
    睡眠障害‪──‬そう呟いて、ナターシャはポケットからゴム手袋を取り出した。
    この流れで、何故それが出てくるのか。疑問を覚え、サンポはナターシャを見た。
    それはなんですかと、問いかけようとした時‪──‬サンポの思考に、電流がほとばしる。
    「ま、待ってくださいナターシャ」
    「待つ必要はない。ズボンを脱ぎなさい、サンポ」
    両手にゴム手袋をはめ、冷ややかな視線と共に彼女は言い放った。
    「今ここで、眠剤座薬を入れます」
    「いや……!じ、自分で入れますから……!」
    首を何度も横に振るサンポに対して、ナターシャは薬棚から座薬を取り出しながら言葉を返す。
    「それじゃあ本当に入れたか証明ができないわ。目の前で、自分で入れると言うのなら話は別だけど」
    「そ……れはぁ〜……」
    「先に言うけど、注射は無しよ」
    「なんでですか!」
    「依存性が強いから」
    完全に逃げ道を絶たれ、サンポの表情から余裕が消える。
    対してナターシャは、躊躇いなくその手をズボンにかけた。
    「ちょ……!」
    「諦めなさい、サンポ。これは君の自業自得よ」
    ナターシャの意志は固い。それを察してしまったサンポの負けだった。
    「大人しく受け入れれば、すぐ終わるから」



    「……いつまで拗ねているの」
    「拗ねてないです。諸々を失った感情の受け入れ場所がないだけで」
    「大袈裟ね」
    ナターシャがベットの縁に腰掛ける。背中を向けて寝転がるサンポは、身体を丸めていた。
    「治療を施しただけよ」
    「もうお婿に行けませんよ……ナターシャは貰ってくれないって言うし……」
    「ええ、お断りね」
    即答だった。サンポの唸る声が聞こえて、ナターシャは笑う。
    今は元気だが、暫くすれば座薬が効いてくるはずだ。それまでは、話し相手になろうと思っていた。
    「そもそも、眠れないときはちゃんと座薬を使うよう言ったはずよ。どうして使わないの」
    「使うと眠りすぎるんですよ。下手したら、8時間寝てる時とかあって……」
    「人間の最適な睡眠時間よ、それ」
    それを寝過ぎと言うサンポの睡眠リズムが心配になる。密かに、彼のショートスリーパー体質は実は別のものなのではとナターシャは訝しんだ。
    そもそもとして、彼の中の睡眠の機能が正常に働いていないのはないか。
    疑問に持つも、それを調べる術も無い。サンポにそこまで骨を砕く義理もないナターシャは、それ以上踏み込むことはしようと思わなかった。
    「……まぁいいわ。ちゃんと寝て、身体を休めることね」
    「言われなくてもそうしますよ」
    やはり拗ねているような口振りだった。
    サンポの声色ははっきりしている。まだ薬が効いていないのだと理解して、次の話題を切り出そうとした時、扉が開いた。
    「ナタ、ここにいた」
    「ゼーレ」
    診療所から差し込む光を背中に浴びて、個室に入るゼーレをナターシャが呼ぶ。びくりと、サンポの背中が僅かに揺れた。
    (見られなくてよかった、なんて思ってそうね)
    内心、そう考えながらナターシャはベッドから降りる。歩よるゼーレが、ナターシャの背後にいるサンポを見て顔を顰めた。
    「……そこに寝てるのサンポ?」
    「ええ、睡眠不足で倒れた商人さんよ」
    「は?睡眠不足?」
    「もう薬は入れたから、あとは効くのを待つだけ。良ければ話相手になってあげて」
    「私が?」
    ゼーレが嫌そうな顔をするのと、寝返りを打ったサンポがナターシャの腕を掴むのは同時だった。
    「あらサンポ。寝てなきゃだめよ」
    「いや……何故ゼーレさんまで巻き込むんですか」
    「そうよ、なんで私まで」
    「……なんとなく、かしら」
    ナターシャの言葉に、サンポはため息を吐く。早々に諦めたようで、それ以上は何も言わなかった。
    対してゼーレは悩むように、難しい顔をしている。彼女の視線はナターシャとサンポを交互に見、そして伏せられた。
    「……分かったわよ。そいつが寝るまでここにいてあげる」
    「ありがとう、ゼーレ」
    椅子を持ってくるわとナターシャが言うと、ゼーレは首を横に振った。ベッドの縁に座って、じろりとサンポを見る。
    「こいつが寝るまで、見張ればいいんでしょ?」
    「話相手になるって意味分かってます……?」
    サンポの問いに、ゼーレはそっぽを向く。困惑の声を漏らすサンポは、助けを求めるようにナターシャを見た。
    こうなることは予想出来た。まぁ、微笑ましくていい光景だとナターシャは思う。
    「そうだわ、何か用があったのよね?」
    ゼーレの横に座りながら、問いかける。彼女も思い出したように目を丸くした。どうやら、サンポの一件でド忘れしたようだった。
    「そうだ、ボスが明日の会議の件で後で来てくれって」
    「分かったわ。ありがとうゼーレ」
    「どういたしまして」
    彼女たちが話す背中、長髪が揺れる。それを眺めながら、サンポは徐々に重くなる意識に抗おうと目を開けていた。
    中にある異物感は、とうに消えている。
    「そうだ、サンポ」
    「なんですかゼーレさん」
    少し後ろに向いて、サンポの顔を見ながらゼーレが問いかけた。
    「あんた、フックに何か変なこと言った?あの子、リベットタウンに行くって聞かないんだけど」
    「いえ特には。それで言うなら、僕もそれを止める立場ですし。……あれですかね、モグラ党冒険記」
    「何それ」
    「そういう本があるんですよ。もしかしたら、それに触発されているのかもしれません」
    「……誰よ、それ持ち込んだやつ」
    「さぁ?そこまでは知りません。最近、あの子たちの間で流行っているってことぐらいしか……」
    サンポはそう言った。目を細めて睨むゼーレに、首を横に振る。
    実際その本を上層部から持ち込んだのはサンポだが、素直に言えば殴られるのは目に見えていた。見える地雷は避けるに限る。
    「オレグや他のメンバーが止めているのよね?」
    「ええ。みんなで見張ってるわ」
    「ならいいけど……後で、私からもキツく言っておかなくちゃね」
    ナターシャの吐息が聞こえる。サンポはあくびを噛み締めた。
    フックは子供扱いされるのが嫌いな子だ。自分一人でなんでも出来ると思っている。
    確かに、彼女の持つホールマスターは武器の性能としては素晴らしい部類に入るし、それを扱う彼女のセンスも高い。だが子供という危機管理能力が未熟なままで、危険な場所に行かせるわけにはいかなかった。
    (少し、構う時間を増やさないとダメですかね……)
    フックたちとドライブに行く約束をしていた。ルートは考えてあるが、もう少し刺激的な方向に変更するべきかもしれない。そうすれば、フックの中にある冒険心の火を少しは落ち着かせることが出来るかも。
    サンポを置いて話す彼女たちの声が遠くなる。
    (あまり危険な場所は避けて……そうだ、あそことか……)

    「……あれ、寝た?」
    「寝たわね」
    会話の切れ目。一瞬の静寂の中で聞こえてきた寝息に、ナターシャとゼーレは後ろを振り返る。
    穏やかな寝顔を晒して、夢の中に落ちているサンポの姿。それを見たゼーレは、へぇと息を吐いた。
    「寝てるところ初めて見たかも」
    「そう?私は何度も見ているわ。こうやって世話を焼いてるとね」
    「気になってたんだけど。なんでそんなにこいつを構うわけ?」
    ゼーレはベッドから降りた。言いながら、毛布をサンポにかけてやる。
    その気遣いに、ナターシャは微笑みながら答えた。
    「なんでかしらね。野良犬が擦り寄ってくるから、頭を撫でてやる感覚かしら」
    「どういう例えよ。そこまで気に入ってるのなら、首輪の一つでもかければいいじゃない」
    その言葉に、ナターシャは首を横に振った。
    「それは、出来ないわね」
    「どうして。現にこいつはナタに懐いてるし、そこまで世話を焼くのなら……」
    「多分、首輪をかけたら逃げるわよ。彼は」
    ナターシャの言っている事に、ゼーレは首を傾げた。彼女の言っていることが理解出来ない。サンポは、飼われる事が嫌という事だろうか。
    ただ、なんとなく分かるのはナターシャが自分の及ばない深くまで、サンポを理解しているという事だった。
    そう思うと、どこか苛立つ自分がいる。ゼーレはそれを自覚して、サンポを見た。
    「あら、嫉妬?」
    「ち、ちが……!」
    「うふふ。冗談よ。……でも、そうね。野良犬だからいいの、飼い犬はサンポには似合わないわ。手癖が悪くて躾けるのに苦労しそうだし……」
    「あっそ。よく分からないけど、とにかくあんた達が変な繋がり方なのはよく分かったわ」
    変な繋がりと言われ、ナターシャは僅かに目を見開く。
    (確かに……そうかもね)
    先に戻るとゼーレは個室を出て行った。残されたナターシャは、眠るサンポの頭を撫でる。
    繋ぎ止める事はしない。ただ、雨宿り程度にここに寄るぐらいの気持ちであれば。
    借りを作りたくないという彼の言い分に乗って、仕事を割り振っている関係だ。その借りが全て無くなったら、果たしてサンポはここに戻ってくるのだろうか。
    「まぁ……そうなったら、その時が切れ目かもね」
    息と共に、ポツリと言葉を吐いた。
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