あなた専属ヘアスタイリスト?/グルアオ「わぁ、すごいことになりましたね」
「…誰のせいだと思ってるの」
恨めしそうな顔を向けるのは、びっくりするくらい髪の毛がボサボサになったグルーシャさん。
そうなった理由はさっきまでしていたポケモンバトルが原因だった。
いい勝負展開に楽しすぎて、いろいろと力加減を間違えて全力のわざを放つように指示してしまい、その爆風にポケモンだけでなくグルーシャさんまで巻き込んでしまった。
思いっきり舞い上がった雪が収まると、咳き込みながら彼が現れる。
それでさっきの感想を思わず伝えれば、皮肉に加えてもう少し加減を覚えるように注意されてしまった。
…まあ、グルーシャさんのいう通りなんだけれど。
これがラウドボーンの炎だとかじゃなくって本当によかったと安心した。
だってそれだったら髪の毛が乱れるくらいじゃ済まないし、熱中しすぎるのもダメだな。
「ごめんなさい…」
素直に謝罪をすれば、戦闘不能の手持ちをボール内に戻しながら もう終わったことだからいいと許してくれた。
頭についた雪を払いながら髪ゴムを解くと、はらりと水色と黄色が混じった長い髪が肩に落ちていく。
元の髪型に戻そうとする姿を見て、あることを提案した。
「あの、私がしましょうか?」
「…別に、いいけど」
断られるかと思ったけれど了承してもらえて安心した。
それならばバトルコートの近くにあるベンチに座ってもらい、鞄からいつも持ち歩いているくしと鏡を取り出す。
鏡はグルーシャさんに持ってもらいながら、お詫びヘアセットを開始した。
まずはくしを髪に通して、綺麗にしていく。
ほのかにいい香りがするし、思っていた以上に手触りも良くてサラサラだった。
「すごくサラサラですけど、結構お手入れされてるんですか?」
「いや、そんなに。ただ、リップさんからいろいろ押し付けられて、それを適当につけてるくらいかな。
別に誰かに見せるわけじゃないけど、どんどん増えてくと洗面所がものでいっぱいになるし」
へー。もしかしてリップさんのテスターとか任されてるのかな?
この前メイクアップ品だけじゃなくて、ヘアケア用品も出そうと思ってるって話してたし。
でもこんなにもいい感じに髪の毛が長くて綺麗だと、いろいろなヘアースタイルにしてみたくなっちゃうな。
口元と喉元をマフラーで隠していると、グルーシャさんは女性みたいだし。
そんな悪戯心を刺激された私は、鞄から追加で予備の髪ゴムを出す。
まずは、ツインテール。
その次はお団子ヘアー。
おさげのみつあみは…ちょっと長さが足りなかったから、ねじねじでみつあみ風にしてみる。
どれもグルーシャさんに似合っていて、どんどん楽しくなってきた!
次はどんな髪型にしようかな〜。
「…これ以上続けるならもう出禁にするけど」
「はい、ごめんなさい。真面目にします」
氷のように冷たい一言で、私はすぐさま真剣に取り組んだ。
ハーフアップにして、まとめた上の部分はお団子にして軽くまとめる。
念入りに見直したけれど、いつものグルーシャさんの髪型に戻っていると思う。
「お待たせしました!これでいいですか?」
「ん。ありがとう」
本人からもオッケーが出たから、とりあえずナッペ山ジム出禁は免れて一安心した。
ああ…でもグルーシャさんの髪の毛いじるの楽しかったなぁ。
またしたいな…。
「…誰も見ていない時なら、またしてもいいよ。あんただけ、特別だ」
思いっきり考えていたことが顔に出ていたようで、グルーシャさんのその言葉にびっくりした。
「な、なら今度グルーシャさんに似合いそうなヘアスタイルをピックアップしてきますね!ありがとうございます!」
そう笑顔で伝えたら、ほどほどにしてよと牽制される。
んー、でも一度許可はもらったので、次はいっぱい楽しませてもらいますね!
その時になって後悔しても遅いですからー。
終わり