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    公(ハム)

    @4su_iburigakko

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    公(ハム)

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    拙作「僕ときみのトートロジィ」の後日談。
    書きかけなので途中で終わってます。
    絶賛迷走中。でも妄想は止まらない。

    夏草涼し 薄墨色の重苦しい雲ばかりが空に居座っていた日々がようやく終わりを告げ、代わって今は刺すような日差しが降り注ぐようになった。皆が単衣から薄物の着物へと衣替えをし始めた頃、エランは気になっていたことをスレッタに訊ねた。
    「あの帯、使わないの?」
     あの帯、とはゴドイがスレッタの母からという名目で誕生日の祝いの品として寄越したものだった。当初それは、エランがスレッタを避けるきっかけとなってしまったが、スレッタの猛追——正しく猛追だった——でエランの誤解も解けた。その後二人で確認した品は、百合や杜若、鉄線を乗せた花筏に流水紋が涼やかな夏草尽くしの帯だった。夏の初めから盛夏までの時期に使い勝手の良さそうな品だったのだが、エランはスレッタが締めているところを一度も目にしていなかった。現に今も、普段から締めている無地の帯だった。
    「えっ、あー……」
     食堂の卓子に広げた教科書の端を指で弄りながら、スレッタは口をもごもごと動かし、何やら言いにくそうな風情で少し俯いた。
    「気に入らなかった?」
    「いえ!そんなこと、ないです!素敵な帯でした」
    「じゃあ、どうして?」
     エランが重ねて問うと、スレッタはまたもや口を閉じ、けれど何かを言いたそうに唇だけを動かす。
     その様子をエランは急かすことなく見守っていると、スレッタは背を縮こませ、窺うような素振りでエランを見上げた。
    「あの、私の部屋に来てもらえませんか……?」
    「………………えっ」

     何度も言うが、エランとスレッタは年頃の男女だ。男女七歳にして席を云々……と世間が謳っているように、基本的に男女が並んで座ることすら眉を顰められる世の中だ。それを重々承知しているエランは、同じ屋根の下に暮らす乙女に配慮して暮らしているというのに、その乙女自身から彼女の部屋に招かれようとは……
    「どうぞ」
    「…………お邪魔するよ」
     何度も逡巡し、彼女を諌めようかとも考えたが、スレッタのこちらを窺う表情にあまりにも困った様子がありありと見て取れ、結局エランはスレッタに請われるがままに彼女の私室へ足を踏み入れていた。
     初めて訪れたスレッタの部屋はエランが私室として使っている客間と広さは同じ程度だった。ベッドと書き机、椅子に箪笥。家具もほとんどエランの私室と変わらない。唯一違うのはベッドの横に姫鏡台が置かれていることか。鏡は風呂敷のようなものが掛けられていて見えないが、スレッタは毎朝この鏡の前で身支度しているのかと思うとついまじまじと見てしまう。
     そんなエランを他所に、スレッタは箪笥の抽出しを次々と開け、着物を取り出してはベッドの上に広げていた。
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