いつか言祝ぐ、その時は温かい西日に包まれながら、まだ雨で湿った道を歩く。二人とも市電に乗れるような格好ではないので、仕方なく本郷の住宅地から歩いて子爵邸へ向かっているのだが、エランはむしろいつもより長くこうしてスレッタと歩けることを嬉しく思う。
「ふん、ふ〜ん、ふふっ」
きっとスレッタも自分と同じ気持ちだろう。少し調子の外れた鼻歌を歌いながらエランの隣を歩くその足取りはふわふわと軽やかだ。
「そういえば、あの包みの中身は何だったの?」
あの包みとは、エランがスレッタを勘違いするきっかけとなった、ゴドイが持ってきた包みだ。誕生日の祝いの品として寄越したそれは、そこそこの大きさがあった。
当時は裏切られた気持ちで荒れ狂っていた胸中の所為で分からなかったが、今思うと着物か帯か、それらに類するものではないかと推察する。
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