Sepia Cryセピアの叫び
その晩の海が大荒れでなかったのが幸いだった。
海上を家とする荒くれ共の集まりである、統率性が優れていたのも幸いした。あってはならないことだが、海に落下する事案は確率としてはそれなりにあるのだ。その際、どういう行動をすれば良いのか。どうすれば、二次被害、三次被害を起こさずに救出出来るのか。海に飛び込んだ男達には、経験として叩き込まれていた。
─── いたぞ、あそこだ…!引き揚げろ!!
─── 毛布持ってこい!!早く水を吐かせるんだ!
─── コンラッドを呼んでくる、運び込んでくれ…!
「行くぞ」
「……おれ、」
「いいから、着いて来い」
葉巻を咥えた男、フォッサが顎で促す先にマルコは遅れながらも着いて行く。躊躇って、迷う足ではあったが逃げ出す様な卑怯者ではなかった。
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