SEKIROパロ尾鯉 以前であれば、流石お綺麗な御体で、と皮肉を言っていた。今は、鯉登の体にある傷のひとつひとつが憎らしい。あんなに綺麗な体を嘲った己への意趣返しかと恨めしかった。
左頬。右胸。土方が残した傷は最も大きく、当て付けのように、視界に入る。右前腕。キロランケに刺された痕は幾らか薄いが、消えていない。左胸。杉元が貫いた痕。綺麗に縫われ、今のように湯上りでもなければ気が付かない。
「私一度死んだの」
尾形の指が、開けた胸元のその左胸の傷をなぞった時、鯉登は不意にそう零した。
聞き間違いかと思ったが、鯉登は苦しむでも微笑むでもない表情で、触れる尾形の手をぼんやり見下ろしていた。そして徐に左手をもたげ、尾形の手の甲へ掌を添えて、ぐ、と胸へ押し付けた。なぞる指が傷跡に圧をかける。柔く、温かかった。
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