蛇足 少年は研究室の扉を開ける。
「先生、今日のデータ持ってきました」
「ありがとう」
入って直ぐにミーティングができるように並べられた長テーブルと椅子。ちょっとしたおやつ菓子と、ブリザードフラワーのミニポッドが質素な部屋を少しばかり柔らかくしてくれていた。
「ついでに珈琲を頼んでもいい?」
「はーい」
「返事は?」
「はい」
パテーションで区切られた奥からの声に小さく肩を竦めて返事をし直せば、小さく笑った声が聞こえる。少年はその声に少しばかり不貞腐れた顔を作りつつ、壁際の棚に置かれた珈琲メーカーの準備を始めた。棚の横にある小さな冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、珈琲メーカーに注ぐ。ついで、引き出しからフィルターを取り、底と脇を畳んで濾し器にセットした後、珈琲の缶を開けて擦り切り一杯。
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